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危険物倉庫とは―3つの基準と建築の注意点を解説
更新日 : 2023/10/04火災を引き起こす可能性のある危険物を保管するための倉庫は、法律で定められた特別な基準を順守する必要があります。基準に沿った倉庫でないと、周囲に火災が燃え広がるなど危険性が高まるためです。では、危険物倉庫を建築する際に必ず守らなければならない基準とはどういったものでしょうか。危険物倉庫について、定義や建築の基準、建築の際の注意点などをご紹介します。
Contents
危険物倉庫とは
危険物倉庫は、特定の危険物を保管するための倉庫です。危険物に関しての基準から見ていきましょう。
危険物の保管について
火災の発生や拡大の危険性が大きいもの、火災発生後に消火が困難なものなどは、消防法において「危険物」として指定されています。
こうした危険物を一定量以上保管する場合の基準について、消防法では以下のように定められています。
“指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。”
(引用:消防法|e-GOV法令検索)
このように、指定数量以上の危険物は原則として条件を満たす貯蔵所で保管することが義務付けられています。
危険物の貯蔵所として倉庫を利用する場合
消防法で定められている「危険物」の貯蔵所として倉庫を利用する場合、法律的にその倉庫を「危険物倉庫」と呼びます。
危険物倉庫については、法によって施設の場所や設備・構造などの基準が設けられています。
基準を満たさない場合は、危険物倉庫として利用することはできません。
消防法における危険物
消防法において、危険物は次のように定義されています。
“危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。”
(引用:消防法|e-GOV法令検索)
なお、別表第一の内容はこちらにまとめられていますので参考にしてください。
危険物倉庫の3つの基準
消防法において、危険物倉庫には位置・規模・構造の3つについて基準が設けられています。それぞれどのような内容があるのか見ていきましょう。
位置についての基準
危険物倉庫で火災や爆発事故が発生した場合、近隣の施設に影響を及ぼさないようにしなければなりません。そのため、近隣に指定の施設がある場合、その施設の種類ごとに決められた距離を以下のように保つことが法令で定められています。この距離は「保安距離」と呼ばれています。
- 住居の用に供する建築物および工作物(製造所の敷地内を除く):10m以上
- 学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設で、総務省令で定めるもの:30m以上
- 重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡もしくは重要な文化財として指定された建造物や、重要美術品として認定された建造物など:50m以上
- 高圧ガスその他災害を引き起こす可能性のある物を貯蔵または取り扱う施設で、総務省令で定めるもの:総務省令による距離
- 特別高圧架空電線(使用電圧が7,000V超、35,000V以下):水平距離3m以上
- 特別高圧架空電線(使用電圧が35,000Vを超):水平距離5m以上
また、危険物倉庫の周囲には空地も保有していなければなりません。この空地は「保有空地」と呼ばれています。
保有空地については空地の幅が法令で以下のように定められています。(※以下で基準とされている「指定数量」とは、消防法で「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と定義されているものです。)
- 指定数量の倍数が5以下の屋内貯蔵所:0.5m以上
- 指定数量の倍数が5を超え10以下の屋内貯蔵所:
壁、柱及び床が耐火構造の場合1m以上、それ以外の場合1.5m以上 - 指定数量の倍数が10を超え20以下の屋内貯蔵所:
壁、柱及び床が耐火構造の場合2m以上、それ以外の場合3m以上 - 指定数量の倍数が20を超え50以下の屋内貯蔵所:
壁、柱及び床が耐火構造の場合3m以上、それ以外の場合5m以上 - 指定数量の倍数が50を超え200以下の屋内貯蔵所:
壁、柱及び床が耐火構造の場合5m以上、それ以外の場合10m以上 - 指定数量の倍数が200を超える屋内貯蔵所:
壁、柱及び床が耐火構造の場合10m以上、それ以外の場合15m以上
規模についての基準
危険物倉庫の規模については、軒高6m未満の平屋で、床面積が1,000平方m以下であることが定められています。
構造についての基準
危険物倉庫の構造については、次のような基準が定められています。(一部を抜粋)
- 壁・柱・床を耐火構造とする。はりは不燃材料で造り、延焼のおそれのある外壁には出入り口以外の開口部を設けないこと(例外あり)
- 屋根は不燃材料で造り、天井は設けないこと(例外あり)
- 窓や出入り口には防火設備を設け、延焼のおそれのある外壁に設ける出入り口には随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設けること
- 窓や出入り口にガラスを用いる場合は網入りガラスにすること
- 禁水性物品を取り扱う場合は床面に水が侵入・浸透しない構造にすること
- 液状の危険物を取り扱う場合は、床面に危険物が浸透しない構造にし、傾斜をつけ、貯留設備も設けること
- 危険物の取り扱いに必要な採光・照明・換気の設備を設けること
これらの基準が法令で定められているほか、各自治体の条例でより細かい基準が指定されている場合もあるので確認が必要です。
危険物倉庫以外での危険物保管は可能?
危険物を保管するための倉庫は、鉄骨構造の倉庫でなければならないと思う担当者も多いでしょう。
しかし、基準を満たしていればテント倉庫での保管も可能です。その場合、テント倉庫においても位置・規模・構造の基準を満たす必要があります。
テント倉庫は建設にかかる時間もコストも少なく、比較的手軽に建設できます。移動が可能であるため、必要に応じて建てる場所を変更することができ、柔軟性のある運用が可能です。また、テント倉庫は、木材やコンクリートなどの従来の建材を使用していないため、建設時に発生するゴミも少なく、廃棄物処理の面でのメリットもあります。
テント倉庫は丈夫さに欠けると思われることもありますが、一般的に高品質の素材が使用され、耐久性に優れています。風雨や雪などの自然災害にも強く、長期間の使用も可能です。
テント倉庫が持つこれらのメリットが有効になるような条件であれば、危険物倉庫としてテント倉庫を使用することも選択肢となり得るでしょう。
危険物倉庫を建設するには
危険物倉庫を新たに建設する場合には、次のような流れを経るのが一般的です。
- 所轄の消防との事前協議
- 倉庫建設場所となる自治体へ設置許可を申請
- 設置許可証を受領し着工
- 危険物倉庫の完成後には完成検査の申請
- 検査
- 完成検査証を受領
ただし、自治体ごとに申請や検査の手順が異なる場合もあります。詳細な手順については建設予定の自治体に確認が必要です。
危険物倉庫を建築する際の注意点
危険物倉庫を建築する際には、次のような点に注意して進めましょう。
関係法令の確認
倉庫の建築や、危険物の取り扱いに関しては、以下のような法令が関係する場合もあります。
- 都市計画法
- 建築基準法
- 港湾法
これらの法令に関しても、それぞれ確認が必要です。
倉庫の建築実績豊富な業者選び
倉庫の建築は、どの業者に依頼しても同じというわけではありません。
特に、構造についての定めがある危険物倉庫では、ノウハウを持つ業者に任せることで不備なく確実な施工が可能になります。
このような理由から、倉庫の建築実績豊富な業者に相談するのがおすすめです。
業者の選び方のポイントについては、「倉庫建築にかかる期間は?建築時の注意点や業者の選び方も解説」で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
危険物倉庫の建築は基準の順守が重要
危険物倉庫について、危険物の定義や保管に関する法律で定められた基準、危険物倉庫建設における注意点などをご紹介しました。
危険物を保管するための倉庫は、保管する危険物の種類や周辺環境などに応じて、位置や規模、構造の基準が法令で定められています。これらの基準を順守していなければ、危険物倉庫としての許可を受けることができません。そのため建築に際しては、危険物倉庫についての知識と施工実績のある業者を選ぶことが重要です。
三陽建設は、倉庫の建築に関して豊富な施工実績があります。高品質な技術とこれまでに蓄積した経験で、危険物倉庫に関しても確実な施工が可能です。危険物の保管を想定した倉庫を建築するご予定がある際には、ぜひ三陽建設にご相談ください。
倉庫の新規建設をご検討の方は「三陽建設の新規建築」をご覧ください。