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塗料の保管は消防法に注意!塗料・溶剤の正しい保管方法

更新日 : 2024/02/20
塗料の保管は消防法に注意!塗料・溶剤の正しい保管方法

「塗料」と「危険物」のイメージはあまり結びつかない場合もあるかもしれません。しかし、様々なシーンで使われる塗料の中には危険物に分類され、非常に慎重な保管を求められるものもあります。

正しい形で保管しなければ消防法違反として罰則の対象になるだけでなく、最悪のケースでは重大事故の引き金になりかねません。

本記事では危険物に分類される塗料について、基本的な危険物に関する知識から具体的な保管方法まで解説します

塗料の保管に関しての知識を深めたい方、危険物の取り扱いについて今一度詳しく知りたい方はぜひご一読ください。

消防法に定められている危険物の分類

まず、前提として消防法に定められている「危険物」の全体像について簡単に説明した後、具体的にどのような塗料が危険物に分類されるのか解説します。

危険物の種類 

危険物は性質や形状により、第1~第6類まで分類されます。

類別性質形状
第1類酸化性固体固体過塩素酸カリウム塩素酸ナトリウム
第2類可燃性固体固体硫黄三硫化リン
第3類自然発火性物質及び禁水性物質液体、固体カリウムナトリウム
第4類引火性液体液体ガソリン灯油二硫化炭素
第5類自己反応性物質液体、固体硝酸メチル硝酸エチルニトログリセリン
第6類酸化性液体液体過酸化水素硝酸

危険物に分類される塗料

危険物に分類される塗料は主に第4類に属し、さらにその性質により細かく分類されます。

  • ラッカー・シンナー類:第1石油類(1気圧において引火点が21℃未満のもの)
  • 合成樹脂クリア塗料・溶剤系塗料:第2石油類(1気圧において引火点が21℃以上70℃未満のもの)
  • 合成樹脂エナメル塗料:第3石油類(1気圧において引火点が70℃以上200℃未満のもの)

危険物の指定数量

危険物の指定量数は、危険物を適切に取り扱ううえで確実に理解しておくべき概念です。危険物の指定量数や定義、考え方について見ていきましょう。

危険物の指定数量とは?

危険物の指定量数とは、それぞれの危険物を安全に取り扱い、保管、運搬するため消防法により定められている基準値です。

様々な物質が広く「危険物」として指定されていますが、その危険度はそれぞれの物質により異なります。例えば引火危険性が高いものや発火点、引火点が低いものは少量でも危険性が高いことは想像に難くないでしょう。また、液体の場合、水に溶けない「非水溶性」のものは注水による消化が難しいことから、水溶性の液体と比較して危険度が高いと考えられます。

このように、それぞれの物質の危険度に応じて指定量数が定められ、その数値に応じた適切な扱いが求められます。

第4類引火性液体の指定数量

危険物に該当する塗料の多くが分類される、「第4類引火性液体」の指定数量は以下の通りです。

  • 特殊引火物:50L
  • 第1石油類:非水溶性液体 200L /水溶性液体 400L
  • アルコール類:400L
  • 第2油類:非水溶性液体 1,000L /水溶性液体 2,000L
  • 第3石油類:非水溶性液体 2,000L /水溶性液体 4,000L
  • 第4石油類:6,000L
  • 動植物油類:10,000L

塗料の中でも、第1石油類に該当するラッカー・シンナー類の危険性は相対的に高く、定められている指定量数の値も小さい(少量の保管でも指定量数の上限となる)点にご注意ください。

指定数量による危険物の保管量の規制

指定量数はそれぞれの物質の危険度によって定められています。指定量数に基づいた保管量の規制の考え方について見ていきましょう。

指定数量の倍数

指定数量の倍数は以下のように計算することができます。

指定数量の倍数=実際の危険物の保管・取扱量÷危険物の指定数量
例:第1石油類(非水溶性液体)を100L保管している場合指定数量の倍数=100L÷200L=1/2
第4石油類を2,000L保管している場合指定数量の倍数=2,000L÷6,000L=1/3

この倍数の比率に基づき、消防法で規制を受ける度合いが異なります。

①指定数量以上

指定数量以上の危険物を取り扱う場合、消防法の規制対象となります。規定を満たした貯蔵所(危険物倉庫など)での保管が義務付けられ、位置、構造、設備面、および貯蔵・取扱いについて細かい技術的な規定が定められています。

②指定数量の1/5以上~指定数量未満

指定量数の1/5~指定数量未満までの危険物を「少量危険物」と呼びます。少量危険物については、消防法ではなく各自治体の条例による規制を受けます。具体的な内容は自治体により異なりますが、技術上の基準が設けられているのに加え、消防署長への届け出や、事故防止に関する定めなどが要求されます。

消防法の厳しい規制を受けるわけではありませんが、一定以上の量の危険物を取り扱うため、一定レベルの基準での対応が要求されます。

③指定数量の1/5未満

保管する危険物が指定数量の1/5未満である場合、消防法も自治体の条例も適用対象とはされず、何らかの法的な制約や義務を負うことはありません。

ただし、少量とはいえ事故の原因ともなる危険物を保管していることには変わりがないため、自社の裁量において事故発生のための対策は十分に行う必要があります。

複数の危険物を保管する際の倍数の考え方

保管している危険物が一種類ではなく複数種ある場合、種類ごとの倍数を計算した上で、総和から上記いずれの取り扱いとなるかが決まります。

例)第1石油類(非水溶性液体)を20Lおよび第4石油類600Lを保管している場合
第1石油類の倍率=20L÷200L=1/10第4石油類の倍率=600L÷6000L=1/10
合計1/10+1/10=1/5 

したがって、上記の状況の場合、合計で1/5を有するため自治体の条例の規制対象となります。

塗料・溶剤の正しい保管・運搬方法

塗料や溶剤の取り扱いについては指定量数以外にも複数のポイントがあります。重要なものを見ていきましょう、

必要に応じた表示を行う

危険物を取り扱う設備には総務省令などで定める標識の掲示義務が定められています(移動タンク貯蔵庫、給油取扱所など)。

表示義務の遵守は罰則を回避するだけでなく、実際の事故防止にも繋がるため、必要な掲示を漏れなく記載するようにしましょう。

法令の基準を満たした設備で保管する

指定量数を超える危険物の保管は危険物倉庫といった法令の基準を満たした設備によって実施する必要があります。

「位置」「規模」「構造」についてそれぞれ制約があるだけでなく、都市計画法や建築基準法など、その他の法令にも適合する形で設備を建築し、運用していく必要があるのです。

危険物倉庫については「危険物倉庫とは―3つの基準と建築の注意点を解説」もご参考ください。

運搬時の規制

危険物は保管だけでなく運搬する際にも規制を受けます。この規制は指定数量未満の危険物の運搬についても適用されるため、ご注意ください。

運搬時には危険物を収納した容器の取り扱いに注意するとともに、不測の事態が発生する恐れがある場合は最寄りの消防機関などへの連絡が求められます。

危険物を取り扱う資格者を適切に配置する

危険物の取り扱いにおいては、国家資格である「危険物取扱者」を適切に接地する必要があります。危険物取扱者には、レベルに応じて甲種・乙種・丙種の3種類が設けられています。

  • 甲種:全ての危険物の取り扱いおよび無資格者への立ち合い
  • 乙種:免状を取得した危険物の取扱および無資格者への立ち合い
  • 丙種:第4類のうち、指定された危険物の取扱

必要に応じた資格者の設置を行いましょう。

まとめ

危険物に該当する塗料の保管をはじめとする取り扱いについて、消防法などの規制を中心に解説しました。塗料の種類によっては非常に危険性が高く、少量の保管・取り扱いであっても厳しい規制が課されるようなケースもあります。

自治体の条例や消防法に準拠した対応を行うことは、罰則を回避するだけでなく、重大な事故の予防としても非常に重要です。今回紹介した内容を参考に、自社で必要な危険物対策を実施してみてください。

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