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クリーンルームのクラス(洗浄度)とは?業種や規格ごとに求められるクラスについて解説

更新日 : 2025/07/04
クリーンルームのクラス(洗浄度)とは?業種や規格ごとに求められるクラスについて解説

「自社の製品品質を上げるため、クリーンルームを導入したい」
「クリーンルームの『クラス』という言葉は聞くが、どう選べばいいかわからない」

クリーンルームの導入を検討する際、誰もが直面するのが「クラス(清浄度)」の選定です。
クラスの選択を誤ると、「オーバースペックで無駄なコストをかけた」「要求仕様を満たせず、使い物にならなかった」といった失敗に繋がりかねません。

この記事では、クリーンルームのクラスの基本的な定義から、クラスによって建設仕様やコストがどう変わるのか、そして自社に最適なクラスを選定する方法まで、長年クリーンルーム建設に携わってきた専門家の視点で分かりやすく解説します。

クリーンルームとは?

クリーンルームとは、目に見えないレベルの細菌やほこりなどを入り込ませない部屋です。精密機器や食品、医薬品などを製造する際、製品に細菌やほこりが付着しないようにすることを目的として設置します。

クリーンルームでは、一般家庭に置いてあるような空気清浄機で取り除けない細菌やほこりをも取り除かなくてはなりません。外部からほこりが入り込んだり、作業員の汗が製品に付着したりしないよう、室内の気圧制御や温湿度管理も徹底しています。

菌やホコリの付着が許されない製品を扱う工場や病院などでは、クリーンルームの必要性は非常に高いでしょう。

クリーンルームの概要・定義についてより詳しくは、「クリーンルームの必要性とは?クリーンルームが必要な業種とその理由、設置時のポイントなど」をご覧ください。

クリーンルームの「クラス」とは?規格と定義

クリーンルームの「クラス」とは、その空間にどれだけ塵埃が少ないかを示す「清浄度の等級」のことです。規格にはいくつか種類がありますが、現在では国際統一規格である「ISO規格(ISO 14644-1)」が主流となっています。

かつては「米国連邦規格(FED-STD-209D)」が広く使われていたため、今でも現場では「クラス100」「クラス1000」といった旧規格の呼び方が使われることがあります。

以下にISO規格と旧米国連邦規格のクラス対応表を示します。ISOクラスの数字が小さいほど、清浄度が高い(塵埃が少ない)ことを意味します。

<クリーンルームの清浄度クラス>

清浄度クラス 上限濃度(個/㎥)
ISO 14644-1 JIS対象粒径範囲(μm) 米国連邦規格Fed-Std.209D 測定粒径
0.1μm 0.2μm 0.3μm 0.5μm 1.0μm 5.0μm
クラス1 0.1~0.3 10 2
クラス2 0.1~0.3 100 24 10 4
クラス3 0.1~0.5 クラス1 1,000 237 102 35 8
クラス4 0.1~0.5 クラス10 10,000 2,370 1,020 352 83
クラス5 0.1~5 クラス100 100,000 23,700 10,200 3,520 832 29
クラス6 0.3~5 クラス1,000 1,000,000 237,000 102,000 35,200 8,320 293
クラス7 0.3~5 クラス10,000 352,000 83,200 2,930
クラス8 0.3~5 クラス100,000 3,520,000 832,000 29,300
クラス9 35,200,000 8,320,000 293,000

クラスが違うと何が変わる? 要求仕様と建設コストの関係

クラスの違いは、主に以下の3つの建設仕様に直結し、それがそのまま建設コストの差となります。
クラスが1つ上がるだけで、建設コストは指数関数的に増加する傾向があります。

1. フィルターの性能

クリーンルームの心臓部が、空気をろ過する「HEPAフィルター」や「ULPAフィルター」です。

HEPAフィルター:0.3μmの粒子を99.97%以上捕集。クラス6〜8程度で主に使用。
ULPAフィルター:0.1〜0.2μmの粒子を99.999%以上捕集。
HEPAより高性能・高価で、クラス5以上の高い清浄度が求められる環境で使用。

2. 換気回数

換気回数とは「1時間あたりに部屋の空気が何回入れ替わるか」を示す数値です。この回数が多いほど、発生した塵埃は速やかに室外へ排出されます。

クラス7(例): 換気回数 50〜70回/時
クラス5(例): 換気回数 200〜400回/時

換気回数を増やすには、より大型の空調設備(ファン)が必要となり、設備コストとランニングコスト(電気代)が大幅に増加します。

3. 気流方式

清浄な空気をどう流すかという方式も、クラスに大きく影響します。

  • 乱流方式
    一般的な空調のように空気が混合・拡散する方式。
    設備が比較的単純で、クラス6〜8で採用。
  • 層流(ラミナー)方式
    空気が天井から床へ、一方向に押し出されるように流れる方式。
    塵埃が堆積しにくく、極めて高い清浄度を維持できます。
    大規模な天井フィルターユニットや、気流を妨げない床(グレーチングフロア)など、高度な設計と構造が必要となり、コストも格段に上がります。
    クラス5以上で必須となります。

【業種別】自社に必要なクリーンルームクラスの目安

上記の仕様の違いを踏まえ、業種ごとに求められるクラスの目安を見ていきましょう。

工業用クリーンルーム(ICR)のクラス目安

ICRとは、インダストリアルクリーンルーム(工業用のクリーンルーム)のことです。

半導体や電子部品、精密機械などの製造現場で、製品への微粒子の付着を防ぐために利用されます。

主な業種
工程
クラス目安(ISO)要求される理由
半導体
(基板工程)
3~5半導体のなかでも、集積回路やエッチング・蒸着・研磨などの基盤工程の作業では、ハイレベルな塵埃対策が求められるため。
半導体
(組立工程)
6~9チップの組み立てやパッケージング工程。
基板工程ほどではないが、異物混入による不良を防ぐため。
精密機械
(組立工程)
6~8精密ベアリングやHDDヘッドなど、部品の小型化・高密度化に伴い、高い清浄度が求められる。
液晶パネル製造4~6パネルへの微小な塵埃の付着が、画面の表示欠陥(ドット抜けなど)を引き起こすため。
  • 半導体 基板工程 クラス3~5

半導体のなかでも、集積回路やエッチング・蒸着・研磨などの基盤工程の作業では、ハイレベルな塵埃対策が求められます。そのため、クラス3~5の清浄度は必須です。

  • 半導体 組立工程 クラス6~9

同じ半導体でも、基盤工程でないだけで求められる清浄度も少し下がります。組立工程ならクラス6~9であれば問題ないでしょう。

  • 精密機械 組立工程 クラス6~8

時計やベアリングといった精密機械の組立に求められるクラスです。加工・製造工程ではクラス5~6が求められる場合もあります。

  • 光学機器 クラス5~7

カメラや望遠鏡などのレンズ、レーザーなどの高精度製品生産、品質管理にもクラス5~7が必須です。

  • 電子部品 クラス5~7

プリント基板やディスク・コンデンサなどの生産や品質管理にはクラス5~7が求められま
す。

  • 自動車部品 クラス6~8

自動車部品の製造工程における鉄粉、鉄の焦げ、くずなどの対策としてクラス6~8が求められます。

  • 印刷 クラス6~8

印刷工場では、印刷物の仕上がりの向上や品質管理を目的として、クラス6~8の清浄度が求められます。

バイオロジカルクリーンルーム(BCR)のクラス目安

BCR(バイオロジカルクリーンルーム)とは、空気中にある浮遊微生物や菌などを制御・管理するためのクリーンルームです。

医薬品、化粧品、食品の製造現場や、病院の手術室などで、製品の汚染や腐敗を防ぐために、微生物や菌を制御する目的で利用されます。

主な業種
工程
クラス目安(ISO)要求される理由
医薬品
(無菌製剤)
5注射剤の充填など、GMP(医薬品製造管理基準)で最も厳しく管理される無菌操作エリア(グレードA)に該当。
再生医療
(細胞培養)
5特定細胞加工物の製造において、細菌やウイルスによる汚染(クロスコンタミネーション)を厳密に防ぐため。
食品工場6~8カット野菜、惣菜、無菌充填の飲料など。
HACCPの考え方に基づき、一般細菌やカビの増殖を抑制し、製品の鮮度や安全性を保つため。
病院
(手術室)
5~7特に心臓外科や脳外科などの手術では、術中感染(SSI)のリスクを最小限に抑えるため。
  • 食品 クラス6~8

ハムやソーセージ、かまぼこなどの食肉・魚肉加工の冷却や梱包はクラス6~7。加工はクラス7~8です。

豆腐や納豆、弁当などの調理食材・惣菜、食パンやカステラ、インスタントラーメンなどの製パン・製麺なども、冷却や梱包はクラス6~7、加工はクラス7~8が求められます。

  • 医薬品 クラス5~8

医薬品の製造において求められるのは、無菌室でクラス5、製薬工程でクラス5~8です。

また、GMPにおいては、清浄度のエリア分類がグレードA~Dまで定められています。
GMPとは、医薬品や医薬部外品における、製造管理と品質管理の基準のことです。

GMPについてより詳しくは、「GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説」をご覧ください。

  • 化粧品 クラス6~8

化粧品製造に求められる清浄度はクラス6~8です。化粧品の製造にクリーンルームが必要な理由は、髪の毛やホコリなどが混入することを防ぐためです。

高品質な化粧品を製造するには、クリーンルーム内での作業は必須でしょう。

  • 病院の手術室・検査室など クラス6~8

病院のなかでも、手術室やICU、検査室などでは空気感染対策、患者や医者の保護を目的にクラス6~8の清浄度が求められます。

  • きのこ栽培 クラス5~8

きのこについては、種菌にはクラス5~6、栽培にはクラス7~8が求められます。キノコ栽培においてクリーンルームが必要な理由は、雑菌を混入させないためです。

最適なクリーンルーム建設のための業者選びのポイント

クリーンルームはクラス選定から設計・施工まで、極めて高度な専門知識と技術が求められます。

「自社に最適なクラスがわからない」
「コストを抑えたいが、品質は妥協できない」

このような課題を解決し、投資を成功させるには、信頼できるパートナー(建設会社)選びが最も重要です。
業者を選ぶ際は、以下の3つのポイントを確認しましょう。

  • 深い業界知識とヒアリング力
    単に「クラス7で」と伝えるだけでなく、「なぜそのクラスが必要なのか」「どのような製品を、どういう工程で製造するのか」まで深く理解し、最適な仕様を提案してくれるか。
  • コストと品質のバランス提案力
    予算の制約の中で、要求仕様を満たすための代替案(例:部屋全体のクラスは7にしつつ、特に重要な工程エリアだけをクラス6のブースで囲うなど)を提案できるか。
  • 豊富な実績とワンストップ対応力
    設計から施工、そして完成後のバリデーション(性能検証)や定期メンテナンスまで、一貫して任せられるか。自社の業種に近い施工実績が豊富にあるか。

私たち三陽建設は、半導体工場向けの高度なクリーンルームから、食品工場のHACCP対応クリーンルームまで、多種多様な業種での豊富な施工実績がございます。お客様の事業内容とご予算を丁寧にヒアリングし、最適なクラスと仕様、そしてコストプランをご提案します。

クリーンルームの導入・改修に関するご相談、お見積もりは無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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