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工場の生産性を高めるレイアウトの種類とは?4つのレイアウトのポイントを解説
更新日 : 2023/10/04工場のレイアウトとは、製品の製造を進めていくための設備や施設の配置のことを指します。レイアウト設計がうまくいっていないと、製造がスムーズに進まず、効率が悪くなり生産性も下がってしまいます。そのため、工場の新築や改築の際には、どのようなレイアウトにするかを重視して進める必要があります。そこで、本記事では、工場レイアウトの基本、代表的なレイアウトの種類をご紹介したうえで、設計のポイントをお伝えします。工場の新築、改築を検討されている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
工場の効率的な運用に欠かせないレイアウトとは?
工場のレイアウトとは、作業員がスムーズに働けるようにするための機器や設備の配置のことを指します。レイアウトの設計では、無駄な移動や作業を増やさないように機器や設備を配置して生産性を高めることが重要です。また工場のレイアウトを重視することによって得られる主なメリットとして、次の三点が挙げられます。
作業中に事故が起きるリスクの軽減
適切なレイアウトになっていない工場では無駄な移動が増えるだけではなく、作業員同士が行き交うケースも増えるため、接触リスクが高まります。
特に工場では、互いに製品を製造するための材料や道具を持っていることも多いことから、接触した際にそれらが落下したり相手にぶつかったりしてしまい、さらに被害が大きくなることもあり得ます。
適切なレイアウトがなされれば作業員がスムーズに動けるようになるため、無駄な移動をしなくてもすむようになります。その結果、事故が起きるリスクを軽減できるでしょう。
作業ミスが起きるリスクの軽減
製品の出荷、保管管理が適切に行えるようになれば、別の製品を出荷してしまうなどの出荷ミスが軽減されます。また、適切なレイアウトがなされることで、作業工程の流れが明確になるため、製品に不具合が発生する作業ミスの軽減にも期待できます。
生産性の向上
工場内での移動がスムーズになる、作業工程の流れが明確になるなどのメリットにより、無駄な移動や作業がなくなり、業務効率化が実現します。その結果、生産性が向上し、利益向上も期待できるでしょう。
なお工場の改築、リフォームについて詳しくは、「工場のリフォームに最適なタイミングとは?費用や業者選びのポイントも併せて解説」をご覧ください。
工場で代表的な四つのレイアウト
工場レイアウトは製造する製品や規模によっていくつかの種類に分けられます。ここでは、代表的な四つのレイアウトについて解説します。
ジョブショップ型(機能別)レイアウト
ジョブショップ型とは、多品種少量生産向きのレイアウトで、似たような機能を持つ機器や設備を一か所にまとめて配置するものです。たとえば、木材をカットする機器、組み合わせる機器、着色する機器などはそれぞれ別々の場所に配置して作業を行えるようにします。
このように配置することで、木材をカットする作業でも、異なる製品ごとに適したサイズにカットしていくことで、作業員育成につながる点が主なメリットです。ただし、作業工程に合わせた配置にできなくなるケースが多く、工程管理をしっかりと行わないとミスが起きるリスクが生じます。
ライン型(フローショップ型/製品別)レイアウト
ライン型とは、少品種大量生産向きのレイアウトで、製品別に製造工程に沿って機器、設備を配置するものです。自動車や加工食品など同じ製品を流れ作業で大量に製造する際によく使われ、フローショップ型、製品別レイアウトとも呼ばれます。
またミスが起きにくいのこともメリットですが、製品の改良による手順の変更や生産量の調節に迅速に対応するのは難しいレイアウトです。
セル型(グループ別)レイアウト
セル型とは、少量かつ細かい製品の製造に向いたレイアウトです。少量生産向きという点では、ジョブショップ型と似ていますが、セル型は機器ではなく、作業員を中心に機器、設備を配置する点が大きな違いだといえるでしょう。
一人もしくは複数人で作業を完了させられるため、需要の変動への柔軟な対応が可能です。ただし、主に人力になってしまうため大量生産には向いていません。
据え置き型(固定式)レイアウト
据え置き型とは、主に移動が困難な大型の製品を製造するのに向いたレイアウトで、大型製品の周囲に機器、設備を配置するものです。具体的には飛行機、船舶などの製造に使われます。
生産性を高めるためのレイアウトのポイント
実際に工場のレイアウト設計を行う際には、どのような点に注意すれば生産性を向上できるのでしょうか。ここではリチャード・ミューサー氏が提唱した工場のレイアウト計画手法、SLP(システマチック・レイアウト・プランニング)のなかでも特に重要な三つのポイントを解説します。
生産品目、数量の明確化(P-Q分析)
工場のレイアウトでまず行うのは、どのような製品をどのぐらい生産するか明確にしましょう。横軸を製品の種類、縦軸を生産量にした表を作成し、生産量の多い順に並べます。これをP-Q分析といい、分析した結果を基に前項で挙げた四つのレイアウトから最適なものを選択します。
工場スペースの確認
次に工場の大きさに対して機器、設備の大きさや作業人員の数に必要なスペースが確保できるか、できなければ何を削ればよいかを確認します。作業を行うために必要なスペースと実際に工場内で利用可能なスペースの調整を行い、それぞれの作業スペースを決定しましょう。
調整が難しい場合は、有効に活用できない場所であるデッドスペースが工場にないかを改めて確認します。また、デッドスペースもない場合は、製造した製品を保管するスペースや出荷スペースを削れないかどうかを確認してください。出荷状況に応じて製造量を調整すれば、保管スペースを必要以上に多く取る必要はありません。出荷スペースも同様です。
工場レイアウトでは、作業スペースの確保がもっとも重要であり、いかに作業スペースを確保し、そのなかで効率的に動ける動線を作れるかがポイントとなります。
動線の確認
最後に工場の限られたスペースのなかで、最も移動が少なく効率的な作業を行うための経路や順序といった動線を検討します。
特に多品種少量生産の製品が多い場合、ジョブショップ型のレイアウトとなるケースが多く、経路の策定が困難です。動線の確認は必ず工程経路図を作成し、現場作業員の意見も聞きつつ検討するようにしましょう。
工場レイアウトを決める際に注意すべきポイント
工場のレイアウトを決める際に、注意すべきポイントが2点ありますで、そちらも解説していきます。
機械設備の配置
工場に配置するものといえば、機械設備がほとんどではないでしょうか。この機械設備は、スペースが必要なものが多く、工場レイアウトを考える際に以下の点に注意しながら配置を決める必要があります。
・機械の台数
同じ機械であっても台数が増えればその分、スペースが必要です。
・機械の可動域
機械を配置することができても、実際に稼働させた場合にスペースが不十分にならないよう注意が必要です。
・振動や騒音
振動や騒音により、作業に支障がでないようにスペースを確保しておく必要があります。
・機械の重量
工場の床がどの程度までの重量に耐えられるのかを考慮したうえで、機械の配置を考えます。
・安全性
従業員の移動や作業スペースだけでなく、危険性についても配慮したスペースの確保が必要になります。
保存場所の配置
機械配置に続いて、同じく重要なのが保管場所の配置です。部品、原材料、仕掛品、完成品などの位置がわかりにくいと、工場の生産効率に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
機械設備とは異なり、保管する物品は定期的に搬入や搬出が必要な点に留意する必要があります。そして、物品の安全かつ効率的な運搬を確保することが必要です。
例えば、通路が保管場所の近くで交差するような配置は危険です。物品を運搬中の作業員同士が衝突する危険性があり、見通しが悪い状況や逆光などもリスクを高めます。また、通路が狭く、進行方向を変える必要がある箇所があると、運搬の効率が低下します。さらに、各工程で使用される資材とその保管場所が離れている場合も、スムーズな作業が難しくなる可能性が高くなります。
これらの要素を考慮して、物品の運搬が円滑に行えるレイアウトを検討しましょう。
工場レイアウトは経験豊富な専門業者への依頼がおすすめ
工場レイアウトを行うことはミスや事故を未然に防ぎ、生産性を高めるための重要なポイントだといえます。
工場レイアウトの基本は、何をどのぐらい製造するのかを明確にし、効率的に動けるようにするにはどのように機器、設備を配置すればよいかを決めることです。そのためには現場の声を聞き、経験豊富な専門業者へ依頼することをおすすめします。
ただし、実際に作業を行う現場作業員の声は部分最適化には活用できますが、工場全体のレイアウトを行うには全体を俯瞰(ふかん)して設計できるスキルや経験が欠かせません。そのためこれまでに多くの工場レイアウトを手掛けた専門業者であれば、それぞれの企業の工場レイアウトに配慮した設計が可能です。
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