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大規模修繕工事とは?改修や修繕との違いと工事内容

更新日 : 2024/08/01
大規模修繕工事とは?改修や修繕との違いと工事内容

マンションなどの大規模な建物を維持、管理するにあたって重要なプロセスとなるのが「大規模修繕工事」。大規模修繕工事は多くの予算や工数を要しますが、住民の安全性から資産価値の維持まで行う上で欠かせないプロセスです。

適切な大規模修繕工事の計画、実施はマンションの所有において不可欠といっても過言ではありません。

本記事では大規模修繕工事について、法的な定義や、通常の改修・修繕工事との違いを含め基本的な情報を解説します。

大規模修繕工事を近く予定している物件のオーナー様、マンションの購入検討にあたり、大規模修繕工事について事前に把握されたい方はぜひご覧ください。

大規模修繕工事とは?

大規模修繕工事とは、建物の老朽化や劣化を防ぎ、安全性や機能性を維持するために行われる大規模な修繕作業のことです。

法的に定められている定義や、同様に建物に対して行う工事である「改修」「修繕」との違いを見ながら大規模修繕工事について詳しく解説します。

建築基準法上の定義

建築基準法の第二条第十四号及び十五号に大規模修繕に関する定義がされています。

❝第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。❞

引用:建築基準法

「建築物の主要構造部」とは、壁、柱、床、梁、屋根、階段といった部分。建物の構造の根幹をなし、利用者、居住者の安全性に関わる部分です。

つまり、これらの部分のうち一つ以上の箇所について、50%以上を修繕・模様替えする工事のことを「大規模修繕工事」と呼びます。

主には建物の骨組みや基礎、柱、梁などの主要な構造部分の構造耐力に関する部分の修繕、火災時の安全性を高めるための防火設備や耐火構造の改修、屋根や外壁、共用部分の全面的な修繕や取り換などが大規模修繕工事の内容として挙げられます。

大規模修繕工事は、通常10年から15年ごとに計画され、事前の調査や計画策定、予算の確

保などが重要です。

改修や修繕との違い

大規模修繕工事と類似する用語として「改修」や「修繕」がありますが、それぞれに異なる意味と範囲があります。

改修とは、建物の性能や機能を向上させるための工事です。例えば、エネルギー効率の向上、バリアフリー化、耐震補強などの工事を指します。範囲としては部分的な改修から建物全体の改修まで幅広い範囲で行われます。

修繕は建物の現状維持や小規模な不具合の修理のことです。例えば、壁のひび割れ補修、漏水箇所の修理、設備機器の取り替えなど。比較的小規模で、部分的な修理が中心となります。

大規模修繕工事は、これらの「改修」や「修繕」と比較して、建物全体の長期的な維持管理を目的とし、計画的かつ大規模に行われる点が特徴です。管理組合としては、定期的な点検と計画的な修繕工事を実施することで、建物の資産価値を維持し、快適な居住環境を提供することが求められます。

大規模修繕工事が必要な理由

大規模修繕工事は多くのコストや手間を要するプロセスですが、適正な物件の管理・維持には欠かせません。

大規模修繕工事が必要な理由について解説します。

マンション住民の安全の保証

マンションの大規模修繕工事は、何よりも住民の安全を確保するために不可欠です。建物が経年劣化するにつれて、構造の劣化、防火設備の老朽化、共用部分に危険が生じるなどのリスクが生じます。

廊下や階段、エレベーターなどの共用部分が劣化は日常生活の中での転倒などの事故のリスクが高まり、構造の劣化、防火設備の老朽化は災害時の被害の拡大をもたらしかねません。

住民の人命や安全性の確保は何よりも優先すべき事項ですが、この点が疎かになると空室率が高まるなど資産価値の下落を招きます。また、適切な管理を怠っての建物の劣化を起因とする事故は莫大な損害賠償リスクも抱えるのです。

コンクリート劣化の防止

コンクリートは建物の主要な構造材ですが、経年劣化により以下のような問題が発生します。

中性化:コンクリートの表面が空気中の二酸化炭素と反応してアルカリ性から中性に変化し、内部の鉄筋が錆びやすくなります。これにより、鉄筋が膨張し、コンクリートがひび割れる可能性が高くなります。

塩害:沿岸地域などでは、塩分を含んだ空気や水がコンクリート内部に浸透し、鉄筋を腐食させます。これにより、建物の耐久性が大きく損なわれます。

ひび割れ:小さなひび割れが放置されると、雨水が内部に侵入し、さらなる劣化を引き起こします。

コンクリートの劣化を適切に対処せず放置すると、建物自体の寿命が早まってしまいます。大規模修繕工事では、これらの劣化を早期に発見し、適切な補修を行うことで、建物の寿命を大幅に延ばす上でも必要不可欠なのです。

建物の資産価値の維持

大規模修繕工事は、建物の資産価値を維持・向上させるためにも重要です。

例えば、外壁や共用部分の美観を保つことで、建物全体の印象が良くなり、将来的な売却や賃貸時の評価が高まります。また、エレベーターや給排水設備などの機能を最新の状態に保つことで、住民の満足度が向上し、空室率が低くなります。

加えて、建築基準法や防火基準などの法的要件を満たすことで、将来的なトラブルを回避することは、所有を続ける上でも、将来的に売却を見越す意味でも重要と言えるでしょう。

大規模修繕工事にかかる費用

大規模修繕工事にかかる費用は、平均して1.3~1.9万円 / ㎡です。物件そのものの状態や規模、大規模修繕工事の内容によっても大きく異なりますので、あくまで目安として参考にしてみてください。

参考:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査|国土交通省

部屋数一戸あたりで割った場合、一戸あたり75万円以上の費用を要するケースが過半数以上です。なお、大規模修繕工事においては修繕積立金によって月々、大規模修繕のための費用を積み立てる運用が一般的です。

一定の戸数があるマンション等の場合、物件が区分所有されているケースも珍しくありません。所有者が複数いると、所有者によっては上記の金額を一時金として支払うことが難しいケースも想定されます。しかし、予算がなければ修繕積立工事が実施できないため、毎月着実に積み立てることで、工事が必要な時期に予算が不足するような事態を回避するのです。

大規模修繕工事の周期・期間

大規模修繕工事は建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持するために定期的に行われる必要があります。具体的には、初回の大規模修繕は築10年から15年目、2回目以降は約12年から15年ごとに実施されるのが平均的です。

法的に周期に決まった定義があるわけではなく、物件の状態、修繕積立金のプール状況などを鑑み、適宜実施の判断を行う必要があります。

大規模修繕工事の期間は、工事の内容や規模によって異なりますが、一般的には準備に3~6ヶ月程度、工事に3~9ヶ月程度かかります。

比較的小規模な場合、スムーズに進んだ場合でも半年かかり、1年程度かかる場合もあるため、事前に調整や説明を実施することが重要です。

大規模修繕工事の流れ

大規模修繕工事は物件の維持管理の中でも大がかりな工数がかかります。流れの一例としては以下のようなプロセスを要します。

  1. 管理組合内での修繕委員会発足:管理組合内で、プロジェクトチームの作成
  2. コンサルタントの選定:プロジェクト進行にあたっての外部の専門家の選定
  3. 工事の発注方式の決定:工事の発注方式の検討および決定
  4. 調査・診断:修繕を行うにあたっての事前調査、診断
  5. 工事計画の策定:調査内容をもとにした工事計画の最終決定
  6. 発注業者の選定:決定した発注方式に基づく業者の選定
  7. 着工:着工の開始
  8. 完了:完了確認後、引渡し

それぞれの具体的な内容や注意点については「【大規模修繕工事の進め方】手順と注意点をまとめて解説」の記事をご参照ください。

まとめ

大規模修繕工事について解説しました。大規模修繕工事は物件の資産価値を維持し、なによりもマンション住民の安全性や人命を守る上で必要不可欠です。

物件の管理・維持において最もコストや工数がかかるプロセスであり、準備段階から慎重に実施することが強く奨励されます。

お手持ちの物件の大規模修繕計画や、物件購入の判断材料として本記事の内容をぜひご活用ください。

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