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工場・製造業でのBCP対策の進め方と押さえておきたいポイント

更新日 : 2023/12/05
工場・製造業でのBCP対策の進め方と押さえておきたいポイント

機械や設備の多い工場では、災害時適切な対策を講じないと大きな損害を受ける恐れがあります。有事の際、まずは被害を最小限に抑えた上で、事業を継続させるためのBCP対策の策定は非常に重要と言えるでしょう。

本記事では工場・製造業でのBCP対策について、基本的な考え方から具体的に進める手順、実施例について解説します。

BCP対策に関して改めて情報収集している方、具体的なBCP対策の施策でお悩みの方はぜひご一読ください。

BCP(事業継続計画)とは?

BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画は災害時に迅速に復旧し、事業を継続することを目的として実施されます。東日本大震災以降、特に重要視され始めました。

参考:BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁

BCPの概要や、重要なポイントについて見ていきましょう。

防災対策との違い

BCP対策とよく混合されるのが防災対策です。防災対策も災害などの有事に備え、人的被害・物的被害を可能な限り抑えることを目指す点において共通している部分は多いと言えるでしょう。

BCP対策と防災対策の大きな違いはその目的にあります。災害対策は災害に際して被害を抑えることを目的とするのに対し、BCP対策の目的は事業の継続です。その手段の一つとして災害の被害を抑えることを目指します。

つまり両者は相反するものではなく、BCP対策の一つとして防災対策があるような位置づけとなります。ただし、BCP対策において定めた具体的な行動指針が防災のみを目的とした時の行動指針と同じとは限りません。

有事の際、復旧後も見据えた明確な行動指針を策定する上ではBCPの観点から対策を講じることが奨励されます。

大企業と中小企業ではBCP対策の取り方が異なる

製造業の中にはいくつもの拠点を持つ大企業もありますが、99.5%が中小企業に分類されます。中小企業は生産拠点を一つしか持たない、あるいは複数あっても拠点が集中しているケースが少なくありません。

参考:中小企業の企業数|商工業実態基本調査|経済産業省

中小企業の方が一つの拠点の被災に伴う経営への打撃が大きいため、より拠点の災害対策を徹底することや、生産拠点が大きな打撃を受けた場合でもデータだけでも確保できるよう分散することなどが挙げられます。

一方、大企業のBCP対策としてよく挙げられるのが生産拠点の分散などといったリスクヘッジです。加えて、広い視点で見ると仕入先が被災した際、原材料の供給が困難になるリスクを想定し、取引先を分散するといった幅広い対応が求められます。

BCP対策を行わないリスク

BCP対策を実施しないことは様々な観点から経営に短期的、もしくは中長期的に悪影響を及ぼしかねません。例えば以下のようなリスクが存在します。

  • 機械・設備が故障し、修理に多額の費用がかかる
  • 機械・設備が故障し、製造ラインがストップし売上が立たなくなる
  • 稼働再開の目途が立たないことにより取引先との契約が打ち切られる
  • 仕入先の被災により、原材料・部品の供給が止まり、生産活動ができなくなる
  • 重要なデータの損失により事業の再開が困難になる
  • 設備の倒壊等で引き起こした二次災害による損害賠償が発生する

実際に自社においてどのようなリスクがあるかは、業種や業態により異なります。上記のようなリスクがあることを念頭に、リスクの洗い出しを行ってみて下さい。

工場・製造業のBCP対策の進め方

大きな機械・設備や多くの人員を抱える工場におけるBCP対策は他の業種と比較してもより重要と言えるでしょう。製造業におけるBCP対策の進め方を解説します。

①BCP対策の目的を設定する

BPC対策は広義に「事業の継続計画」のための対策を指しますが、具体的にどのような事業を継続させるのか、どのような計画を立てるかといった最適解は各社により異なります。

具体的な行動指針に落とし込むためにも、まずは自社にとっての事業継続とは何かを定義し、最適な目的を設定することが最重要です。

②重要な業務を選定する

自社の業務の中でも特に優先順位が高いものを洗い出しましょう。被災の規模によっては、被災後に十分な体勢で事業を再開することが困難となり、取捨選択を迫られることも珍しくありません。

いち早く万全な状態まで復旧させるためにも、まずは限られたリソースの中で稼働を再開させる、最優先で取り組むべき業務を決めておくことが重要です。

③リスクを洗い出す

優先すべき業務を中心に、災害時にどのようなリスクがあるのかを洗い出しましょう。

工場・製造業で震災時に考えられる短期的、中長期的なリスク例については先述していますが、具体的に考えられるリスクは企業により異なります。自社においてどのような災害においてどのようなリスクがあるのかを、必要に応じてプロの知見も交えながら洗い出すことが重要です。

④リスク対策に優先順位をつける

洗い出したリスクに対し、取り組むべき優先順位をつけます。優先順位付けにおいては②のステップで選定した業務の優先順位も大きく影響するでしょう。

  • 人命へのリスクに関わる対策
  • 金銭的損害の大きいリスク
  • 重要な業務へのリスクに関わる対策

といった軸を中心に、取り組むべき対策に優先順位をつけることが重要だと言えます。

⑤具体的な対策に取り組む

上記プロセスを経た上で、実際に現場で取り組むべきBCP対策に落とし込みます。

いわゆる「防災対策」であれば必ずしもここまでの手順を踏む必要はありませんが、事業継続の観点からはより広い視点で対策を講じることが求められるのです。

工場・製造業で取るべきBCP対策とポイント

工場・製造業で具体的に取り組むべきBCP対策例や、その際のポイントについて解説します。

①従業員の安全確保・安否確認体制の整備

災害時、何よりも最優先すべきは従業員の身の安全の確保です。BCP対策においても優先的に取り組む必須の対応内容と言えるでしょう。

常日頃から、従業員の安全を考えた業務体制を構築することに加え、定期的な避難訓練を実施し、災害時の行動をシミュレーションすると同時に安全への意識の啓蒙も重要です。

また、安否確認の方法についてもシステムやアプリなど方法を定め、周知しておきましょう。

②災害対策の実施

工場内で災害時に被害が広がらないよう対策を実施することや、災害に備えた備蓄品を揃えることも重要です。具体的には下記のような対策が挙げられます。

  • 避難時の動線の確保
  • 設備の固定
  • 防災グッズの備蓄

③業務データの分散化

業務上重要なデータは分散することが重要と言えます。機械や設備の大半はコストや時間をかければ大半は復旧が可能ですが、失われた業務データの復旧は困難です。拠点のPCやサーバールームのみで保存していると被災時に損失してしまう可能性があります。

複数の拠点で分散して保管するか、もしくは拠点を複数持つのが難しい場合はクラウドで管理するのも有効な対策と言えるでしょう。

④代替工場・代替設備の確保

工場が被災により長期稼働できないケースに備え、生産拠点を分散することはBCP対策の代表的な施策です。

一定の規模のある業者であれば自社で生産拠点を複数もつこともできますが、中小企業にとっては複数の拠点を持つことは現実的ではないかもしれません。

そのような場合は離れた地域の同業種の企業と災害時の相互サポートの協定などを検討するのが有効です。

⑤取引先の分散

取引先、特に仕入先を分散することもBCP対策の一つです。自社の設備や人員への被害を抑え早期に稼働再開のめどが立ったとしても、原材料や部品の供給が止まってしまえば事業の再開はできません。

取引先のBCP対策については関与することが難しいため、自社でできる現実的な策としては取引策を1社に頼らないことが挙げられます。

工場・倉庫の地震対策は「工場・倉庫での地震対策で実施したい7つのポイント」で、工場・倉庫の耐震基準や耐震対策については「工場・倉庫の耐震基準とは?耐震診断や耐震性を向上させる方法」をご覧ください。

※投稿後にリンク設置

工場・製造業でのBCP対策でよくある質問

BCP対策は義務化されていますか?

企業は法律で義務付けられていませんが、介護事業所では2024年4月からBCPの策定が義務化されています。

BCP対策が無いとどうなりますか?

BCP対策を実施していないと、被害が拡大するだけではなく、有事の際に経営の継続が困難になる可能性があります。

まとめ

工場のBCP対策についてまとめました。震災など災害に対して日常から対策を行うことは当然重要ですが、加えて被災後も速やかに一部でも復旧し、事業を再開できることも企業活動として極めて重要です。

それぞれの企業にとって有効なBCP対策を講じるには、まずは目的を明確にしたうえで事業の優先順位付けやリスクの洗い出しを行い、具体的な対策に落とし込むことが重要といえるでしょう。

ぜひ、今回の記事を参考に自社にとっての適切なBCP計画の策定を行ってみてください。

三陽建設では、倉庫・工場建設の際にBCP対策を踏まえた設計や設備のご提案を行っています。BCP対策、災害対策を踏まえた改修工事の実績も多数ございますので、お気軽にご相談ください。

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