倉庫
冷凍冷蔵倉庫の建設・設計で確認すべき5つのポイント
更新日 : 2023/12/26食品工場など、低温の環境で原材料や商品を保存しなければならない工場・倉庫にとって冷凍倉庫・冷蔵倉庫は必要不可欠な設備です。冷凍倉庫・冷蔵倉庫は一般的な倉庫に比べ、建設コスト・ランニングコストが高い上、法律や基準への適合も多く求められるため適切な設計を行う必要があります。
本記事では冷凍倉庫・冷蔵倉庫の種類や耐用年数といった基礎知識を解説するとともに、建設・設計で確認すべきポイントについても言及しています。
冷凍倉庫・冷蔵倉庫の新設を計画している方、建設・設計にあたっての注意点を確認したい方はぜひご一読ください。
Contents
冷凍冷蔵倉庫の種類
倉庫業法の分類の中では冷凍倉庫も冷蔵倉庫も同様に「冷蔵倉庫」と分類されますが、温度によって利用用途・保存する食品が異なります。冷凍冷蔵倉庫の種類について見ていきましょう。
倉庫の種類については「倉庫の種類とは?自社の目的に合わせた倉庫を選ぼう」もご参考ください。
等級による分類
等級 | 温度帯 |
C3級 | 10~-2℃ |
C2級 | -2~-10℃ |
C1級 | -10~-20℃ |
F1級 | -20~-30℃ |
F2級 | -30~-40℃ |
F3級 | -40~-50℃ |
F4級 | -50℃以下 |
冷凍冷蔵倉庫は温度によって表のような等級に分類されます。このうちC(チルド)に属する等級を「冷蔵倉庫」F(フローズン)に属する等級を「冷凍倉庫」と分類することが多いです。
冷蔵倉庫以上の温度帯としては10~20℃に保たれている倉庫を「定温倉庫(もしくは低温倉庫)」、温度の管理を必要としない倉庫を「常温倉庫」と呼びます。
また、温度ではなく湿度を管理する倉庫は除湿倉庫と呼びます。除湿倉庫は常温保存が可能ながらも湿気には弱い食品などを保管するのに適した倉庫です。
参考:保管温度帯について | 見る・学ぶ | 一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会
3温度帯・4温度帯・5温度帯
等級による温度帯の管理は表の通りですが、食品物流業界では表ほどの厳密な分類は必要なく、用途別で3~5つの食品の管理が行われます。
それぞれの温度帯の分類は以下の通りです。
3温度帯
温度帯 | 温度 |
常温 | 10~20℃ |
冷蔵 | -5~5℃ |
冷凍 | -15℃以下 |
4温度帯
温度帯 | 温度 |
常温 | 厳格な管理を必要としない |
定温 | 10~20℃ |
冷蔵 | -5~5℃ |
冷凍 | -15℃以下 |
5温度帯
温度帯 | 温度 |
定温 | 5~18℃ |
冷蔵 | -18~10℃ |
チルド | -5~5℃※冷蔵の中でより厳格な温度管理を要する |
冷凍 | -18℃以下 |
超低温 | -40℃以下 |
どの分類を用いているかによって、同じ文言でも対象の温度が異なるケースがあるため注意が必要です。
冷凍倉庫・冷蔵倉庫の耐用年数
構造 | 法定耐用年数 |
鉄骨造・金属造(骨格材の肉厚が3mm以下) | 13年 |
鉄骨造・金属造(骨格材の肉厚が3mm~4mm以下) | 16年 |
鉄骨造・金属造(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの) | 22年 |
煉瓦造、コンクリートブロック及び石造 | 24年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 | 26年 |
冷凍倉庫・冷蔵倉庫の法定耐用年数は2012年の法改正後、13~26年とされ、倉庫の構造により分かれています。
冷凍・冷蔵でない一般的な倉庫の場合、構造によりますが30年以上の耐用年数が定められているものも多いです。庫内を低温に保つため、建物に加わる負荷が大きいと判断されることが冷凍倉庫・冷蔵倉庫の耐用年数が短く定められている理由と言えるでしょう。
法定耐用年数は税務上定められた基準であり、基準を超えて使用し続けてはいけないわけではありません。適切なメンテナンスを行っていれば耐用年数を超えて使い続けることも可能です。しかし、設備の経年劣化の基準として合理的な計算の元に定められた基準ではあるため、耐用年数は補強や買い替えの参考としても活用できます。
冷凍冷蔵倉庫の建設・設計の5つのポイント
冷凍冷蔵倉庫は一般的な倉庫に比べてランニングコストがかかります。また、庫内での作業者の負担が常温の倉庫に比べても大きいことからも効率や安全に配慮した設計も必要です。
冷凍冷蔵倉庫の建設や設計にあたって特に重要なポイントを5つ解説します。
1.建築コストおよびランニングコストの最適化
建築コストおよびランニングコストを適切なバランスで見積り、最適化することが重要です。
冷凍冷蔵倉庫は建築コストが通常の倉庫と比較して高額な傾向にあります。庫内を一定の温度に保ち続けるため、庫内の設計や設備の導入に高額なコストがかかるためです。
一方で、一定の冷気を保ち続けるためには通常の倉庫よりもランニングコストもかかります。ランニングコストは庫内の設計を抑えることによって削減できる可能性がありますが、設計に手を加えることにより初期費用がかかる可能性もあります。
初期費用、ランニングコストのバランスを考えながら、最適な選択を行う必要があります。
2.商品を保管するための適切な環境の維持
冷凍冷蔵倉庫は単に低温で商品や原材料を保存すればよいのではなく、それぞれに適した温度を保ち続ける必要があります。物によっては温度が高すぎても低すぎても適切な状態を維持できなくなり、品質が劣化してしまうおそれがあります。
気温などの外的要因に左右されず、常に一定の範囲内で庫内の温度を保ち続けられる設計にすることが重要です。また、電源供給が止まった際にもバックアップ電源などから電源供給し、庫内の温度を保ち続けるなどの停電対策も行えると望ましいでしょう。
3.倉庫内での作業効率を配慮した設計
倉庫の設計においては倉庫の中での作業効率も配慮する必要があります。低温の倉庫の中では、作業員は長時間の作業を行うのが難しい場合もあるためです。長時間、庫内で作業をしていると低体温症を起こすなど安全面での問題が出てくる可能性もあります。
倉庫内の動線を綿密に考えることは作業効率、人件費を抑える上で重要ですが、冷凍冷蔵倉庫においてはそれに加えて従業員の安全への配慮からもより効率を重視した設計にする必要があるのです。
4.法律や基準への適合
冷凍冷蔵倉庫は様々な法律や基準に適合している必要があります。法律・基準に適合しなければ建設の許可がおりないほか、後から不適合であることが判明すると罰則が生じる可能性があります。
具体的には以下のような法律・基準への適合が求められます。
- 建築基準法における建築制限
- 消防法における消防設備・消防用水等の設置
- 都市計画法における開発許可
- 高圧ガス保安法における冷凍能力に応じた許可または届け出の実施
- 食品衛生法
また、防水性能、防火性能などの設備基準についても国土交通省が発行する「倉庫一般の施設設備基準」を満たしている必要があります。
5.防犯・防災対策
庫内の原材料・商品を守るため、そして作業員の安全の確保のためにも防犯・防災の対策も求められます。
法律・基準に適合していれば一定レベルでの防災対策の確保はできていますが、より安全な倉庫を建設するには、個別の設計に応じた対策を講じられるのが理想です。
また、防犯対策でカメラを設置する場合、低温の環境下でも稼働できるカメラを選択する必要があるほか、カメラの配線のための穴も適切に処理するといった、一般の倉庫よりも慎重な対応が求められます。
倉庫の新築するときの注意点については「倉庫の新築を検討するときの注意点と知っておきたい申請手続き」もご参考ください。
まとめ
冷凍冷蔵倉庫について、種類や耐用年数、建設・設計にあたっての重要なポイントについてまとめました。冷凍冷蔵倉庫は食品などの商品を扱うのに必要不可欠な設備ですが、設計コスト、ランニングコストが通常の倉庫よりも高く、法律や基準面でも厳しい規制があります。また、安全面への配慮からも動線も含めた設計を慎重に行う必要があることも重要なポイントと言えるでしょう。
今回解説した内容も参考に、自社に適した冷凍冷蔵倉庫の建設・設計を実施してみてください。
三陽建設では、冷凍・冷蔵倉庫の建築・改修に関して豊富な施工実績があります。細部までこだわる高品質の技術と数多くの経験で、お客様のご要望にお応えしております。冷蔵・冷凍倉庫の新築をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。