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倉庫業法とは?物流業で押さえておきたいポイント

更新日 : 2024/04/16
倉庫業法とは?物流業で押さえておきたいポイント

物流業は業務の性質上、複数の法令により様々な制約を受けます。物流業において、運送業と両翼を担うといっても過言ではない倉庫業と切っても切り離せないのが倉庫業法。

倉庫業の事業の遂行にあたり倉庫業法を遵守することはコンプライアンス上重要なだけでなく、顧客に価値提供をしながら、安全に適切に業務を実施する上でも不可欠です。

この記事では、倉庫業法について、重要なポイントに絞って解説します。同法の趣旨や対象となる事業者、物流業において抑えるべき重要な論点を解説。

倉庫業をこれから開業しようと思っている方のみならず、物流業で他社の倉庫を使用する計画のある方にも有益な内容ですので、ぜひご一読ください。

倉庫業法とは?

まず、そもそも倉庫業法とは何か、適用対象となる倉庫業や「営業倉庫」の定義を解説すると同時に、法の趣旨や適用される対象者について解説します。

倉庫業とは?

倉庫業とは、原材料、商品などの貨物を保管し、これらの管理を行う事業のことを指します。具体的には、顧客から預かった貨物を一定期間保管し、必要に応じてこれらを取り扱うサービスを提供します。

倉庫業は運送表とならび、製造業や小売業、輸出入業など多岐にわたる産業の物流プロセスを支える重要な役割を担っています。

自家用倉庫と営業倉庫

倉庫は大きく分けて「自家用倉庫」と「営業倉庫」に分類されます。

自家用倉庫とは倉庫の所有者、もしくは借主が自身の事業のために原材料や商品などの物品を保管する倉庫のことを指します。例えば、工場が自社製品を製造するための原材料を保管しておく倉庫や、卸売業者が販売元から仕入れた商品を保管しておく倉庫は自家用倉庫にあたります。

自社が自社の事業を遂行するための手段として活用してる倉庫が自家用倉庫です。

一方で、営業倉庫とは先述の倉庫業、つまり顧客の貨物を預かり、保管することそのものを事業として運営する倉庫のことです。

自家用倉庫は原則として自社で使用する倉庫のため、営業倉庫と比べて法令の制約を受けません。

例えば、倉庫の建築の可否を決める「用途地域」の適用範囲は営業倉庫より広く、また、建築基準法においても営業倉庫ほどの厳しい制約は設けられていません。

倉庫業法の趣旨

倉庫業法の趣旨は営業倉庫の利用者、すなわち「荷主」が預けている貨物が不利益を受けないよう保護することです。

様々な事業において、事業に必要な貨物を保管する営業倉庫の存在は不可欠です。営業倉庫が不適切に運営されていることにより、貨物の劣化や消失などが起きてしまった場合その損失は時に計り知れないものとなり、事業の存続そのものに影響しかねません。

そのため、営業倉庫を運営する事業者には、高い基準値を満たした倉庫を建築し、適切に管理・運営することが求められます。

そのため、倉庫業法を定め、必要な要件を満たした事業者のみが倉庫業を運営できるようにすることで、荷主の利益を保護することを目的とし、倉庫業法が制定されているのです。

倉庫業法が適用対象となる事業者

倉庫業法の適用対象となる事業者は、倉庫業としての活動を行う企業や個人事業主です。

具体的には、貨物の保管を主な事業内容とする者、つまり、貨物を預かり、これを保管・管理するサービスを提供する事業者が対象とされます。既に事業を行っている業者だけでなく、これから登録を行う事業者も対象です。また、トランクルームなど倉庫業に近い業態に関しても適用の対象とされます。

逆に、下記のような場合は倉庫業には該当しないため、倉庫業法の対象とはなりません。

  • 寄託でないもの(預金、運送業務の一時保管、修理などのための保管など)
  • 営業でないもの(協同組合の組合員に対する保管事業)
  • 政令で除外されているもの(銀行の貸金庫、ロッカー、駐車場・駐輪場など)

物流業で抑えるべき倉庫業のポイント

倉庫を利用する物流業は倉庫業法について知っておくべきポイントがあります。

倉庫業を運営する事業者、倉庫を利用する事業者、それぞれにおいて押さえておきたいポイントを説明していきます。

倉庫業者:倉庫業は登録制である

倉庫業を営むには、国土交通省大臣が実施する登録を受ける必要があります(倉庫業法6条)。この登録制度は、倉庫業の品質と信頼性を保証するためのもので、登録を行うことで正式に業務を開始することが認められるのです。

登録にあたっては、倉庫の設備や管理体制などが一定の基準を満たしていることが必要とされ、これにより安全かつ効率的な貨物の保管と取扱いが促進されます。具体的には、以下のような要件です。

  • 倉庫管理主任者の選任(倉庫業法11条)
  • 建築・設備基準の遵守(同法12条)
  • 火災保険への加入(同法14条)

なお、申請者の登録がいずれかの登録拒否要件に該当する場合、その登録は受け付けられません。

①申請者(法人の場合は代表および役員)が欠格事由に該当する場合

②施設設備基準に適合しない場合

③倉庫管理主任者を確実に選任すると認められない場合

倉庫業を開始するにあたり、設備を準備した後で登録を受けられないとなると、初期投資が無駄となってしまうリスクがあります。そのため、準備段階から運輸局や地方自治体、不動産業者や建築業者と連携し、慎重に登録の準備を進めることをおすすめします。

倉庫業者:罰則の規定がある

倉庫業法には罰則の規定があります。例として以下のような行為が罰則の対象です。

  • 無登録で倉庫業を営む行為(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
  • 他人に名義を貸与する行為(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
  • 登録した内容に違反する行為(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)
  • 無登録業者が登録業者と誤認させるような表記を行う行為(50万円以下の罰金)

罰則の範囲は登録業者だけでなく、無許可で事業を行っている業者、登録業者と誤認させる表記を行っている業者などにも及びます。

違反した場合、登録が取り消され、営業ができなくなるだけでなく刑事罰を負うことになる可能性もあるため、遵守することが求められます。

利用者:自家用倉庫の事業利用にはリスクがある

倉庫を利用する側の利用者が他社の倉庫を事業に利用する場合、営業倉庫の登録業者を利用することを強くおすすめします。

営業倉庫として許可のない他社が管理する倉庫に物品を保管すること自体が法的に問題があるわけではありませんが、許可を受けた営業倉庫とそうでない自家用倉庫などの倉庫は安全性が大きく異なります。

営業倉庫は建築基準法上の高い防災基準を満たしており、また適切な講習を修了した倉庫管理主任者が置かれています。そのため、防災、防犯の面で優れていると言えるでしょう。

加えて、事業者側での保険への加入義務もあるため、有事の際も適切な保障が受けられます。

許可を受けていない自家用倉庫を利用した場合、上記のメリットを受けられないため、複数の観点からリスクが高いのです。

まとめ

物流業界に欠かせない、倉庫業において重要な倉庫業法について解説しました。事業としての倉庫業を営む場合、営業倉庫の登録が必須です。建築予定地の用途地域や倉庫の防災基準など様々な点を事前に確認しながら、登録を進めることをおすすめします。

また、利用者として倉庫を使う場合においては、利用予定の倉庫が営業倉庫であるか否かの確認が奨励されます。防災・防犯面での安全性や有事の際の保障など全くことなるため、自家用倉庫を業務利用はリスクが高いと言えるでしょう。

今回解説した内容を参考に、適切な対応をすすめてみてください。

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