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耐火建築物とは?基準と準耐火建築物との違い

更新日 : 2025/03/10
耐火建築物とは?基準と準耐火建築物との違い

建物での火災に際しては、建物の構造や設計による防火・耐火の性能や避難のしやすさが利用者の人命に直結します。自然災害の二次災害による火災などにも強く警戒しなければならない日本においてはその重要性はさらに増すと言えるでしょう。

本記事では、建物の中でも特に高水準の耐火性能が求められる「耐火建築物」について、定義や特徴から基準、建築プロセスといった基礎事項について解説します。耐火建築物の建築や管理に関わっている、もしくはこれから関わるご担当者様はぜひご一読ください。

特殊建築物については「特殊建築物とは?定義や定期調査制度について解説」もあわせてご参考ください。

耐火建築物の定義と特徴

まずは耐火建築物について、定義や特徴、求められる背景といった基礎的な概要について解説します。

耐火建築物とは何か

耐火建築物とは、建築基準法において特に厳格な耐火性能が求められる建物のことを指します。具体的には、火災が発生した際に一定の時間、火の進行を防ぎ、人命や財産を守ることを目的としています。耐火建築物では、耐火性能を有する材料や構造が使用されており、火災時の建物の崩壊や延焼を防ぐことが可能です。公共施設や高層ビルなど、多数の人が利用する建築物は耐火建築物であるのが一般的です。


耐火建築物が求められる背景(防火の重要性)

耐火建築物が求められる背景には、防火の重要性があります。都市化が進む中で、建物の密集度が高まると火災が発生した際の被害が拡大するリスクが高まります。このような状況下で、耐火建築物は火災の拡大を抑制し、周辺の建物への延焼を防ぐ役割を果たします。

近年では地震や台風などの自然災害が増加しており、これらの災害に伴う火災リスクにも対応する必要性が高まっています。耐火建築物の採用は、人々の安全を確保し、都市全体の防災力を向上させるために欠かせない施策です。

日本国内における代表的な耐火建築物

日本国内には多くの代表的な耐火建築物があります。例えば、高層オフィスビルや商業施設、大規模な公共施設がその例です。東京のランドマーク的なビルである六本木ヒルズや新宿の高層ビル群は、いずれも耐火性能を重視した設計が施されています。また、病院や学校といった公共性の高い建物でも耐火建築物として設計されており、火災時の避難や安全確保が優先されています。こういった建物は、防火性能だけでなく、耐震性能や環境性能も兼ね備えている点が特徴です。


耐火建築物のメリットとデメリット

耐火建築物にはさまざまなメリットがあります。まず、火災時の安全性が大幅に向上するため、人命を守ることができます。また、火災による財産の損失を最小限に抑えられるため、経済的なメリットも大きいです。さらに、保険料の割引や、長期的な耐久性が評価されることで建物の資産価値が高まる点も利点といえます。

一方で、デメリットとしては耐火性能を満たすための材料や施工に高いコストがかかることが挙げられます。また、設計や施工において特別な技術が求められるため、建築プロセスが複雑化する場合があります。これらの点を考慮しながら、耐火建築物の導入を検討することが重要です。

耐火建築物は、安全性と経済性の両面で優れた選択肢となり得ますが、その導入には十分な計画と準備が求められます。

耐火建築物に適用される基準

耐火建築物には耐火性能だけでなく、使用材料や建物の構造などの様々な条件が

建築基準法における耐火性能の規定

耐火建築物は、建築基準法に基づいて設計・施工されます。建築基準法では、火災発生時に一定時間火の進行を防ぎ、建物の崩壊を防止するための詳細な耐火性能要件が定められています。

具体的には、火災が発生した場合に構造部材が1時間以上耐火性能を保つことが求められる場合が多く、高層建築や多数の人が利用する建物においてはさらに厳しい基準が適用されます。


使用材料の基準(耐火性コンクリート、耐火ガラスなど)

耐火建築物に使用される材料には、厳格な基準が設けられています。例えば、耐火性コンクリートは、火災時の高温にも耐えられる特性を持ち、建物の主要構造に用いられます。また、耐火ガラスは、ガラスが割れたり崩れたりしないよう設計されており、火災時における避難経路の安全性を確保するために使用されます。

その他、耐火塗料や防火区画材など、火の進行を抑えるための補助的な材料も広く採用されています。


耐火建築物に必要な構造的条件

耐火建築物は、材料だけでなく構造面においても特定の条件を満たす必要があります。建物の柱や梁、壁といった主要構造部材は、火災時に構造が損傷しないように設計されなければなりません。さらに、防火区画の設置も重要であり、火災が発生した際に火の広がりを効果的に抑制する役割を果たします。

また、避難経路の設計も不可欠で、火災時に安全かつ迅速に避難できるよう、階段や非常口の配置が法的に規定されています。

耐火建築物の基準は、火災時の安全性を最大限に高めるために設けられており、これに基づく設計と施工が人命と財産を守る鍵と言えるでしょう。

準耐火建築物との違い

耐火建築物と比較する類似の建築物として「凖耐火建築物」が挙げられます。凖耐火建築物は耐火建築物ほどではないものの、一定の性能の耐火水準が求められる建造物です。定義や使用用途、耐火時間などの差異について解説します。

耐火建築物と準耐火建築物の定義の比較

耐火建築物と準耐火建築物の最大の違いは、火災時に要求される耐火性能の水準です。耐火建築物は、主要な構造部分(柱、梁、壁など)が建築基準法で定められた厳格な耐火基準を満たす必要があります。

一方、準耐火建築物は、比較的軽い火災に対して一定の耐火性を持つことを求められる建物であり、基準は耐火建築物よりも緩やかです。具体的には、準耐火建築物では30分から1時間程度の耐火時間が求められる場合が多いのに対し、耐火建築物では1時間以上の耐火性能が必要とされます。


主な使用用途と適用事例の違い

耐火建築物は、高層ビルや商業施設、病院、学校といった、多数の人々が利用する建物に採用されることが一般的です。これらの建物では、火災時の避難の難しさや財産保全の重要性が高いため、厳格な耐火基準が適用されます。

一方、準耐火建築物は、一般的な住宅や中小規模の店舗など、火災の際、被害拡大のリスクが相対的に低い建物に適用されることが多いです。


耐火時間の違い

耐火建築物と準耐火建築物の最も明確な違いは、耐火時間の長さです。耐火建築物では、主要な構造部が1時間から3時間以上の耐火性能を持つ必要があります。一方、準耐火建築物では、30分から1時間程度の耐火性能が求められるに留まります。この違いは、建物の用途や規模、利用者数に応じた安全性の確保の難しさの差と言えるでしょう。

耐火建築物と準耐火建築物は、それぞれの基準や用途に応じて使い分けられており、火災時の安全性を確保するために欠かせない存在です。

耐火建築物の建築プロセス

耐火建築物は建築物の中でも特に厳格な基準を求められるため、建築プロセスにおいても慎重かつ正確な対応が求められます。

耐火建築物の建築プロセスについて、設計段階から完成、使用開始後の定期メンテナンスまで、重要事項を解説します。

設計段階

耐火建築物の建築プロセスにおいて、設計段階は最も重要なステップの一つです。この段階では、建物の用途や規模に応じて必要な耐火性能を満たすための詳細な計画が立てられます。

具体的には、耐火性の高い材料を選定し、火災時に火の進行を防ぐための防火区画や避難経路の配置を設計します。また、建築基準法に準拠した構造設計が求められ、柱や梁、壁などの主要構造部材が規定された耐火性能を満たすように計画されます。


法的手続き

耐火建築物を建設するには、建築基準法に基づいた法的手続きが必要です。設計図面や仕様書を所管行政庁に提出し、耐火性能を含む建築基準法の適合性を確認してもらうことが求められます。

さらに、特殊建築物や大規模建築物の場合には、追加の確認申請や審査が必要となる場合があります。これらの手続きを適切に進めることで、法的な問題を未然に防ぎ、安全な建築物を実現する準備が整います。


施工段階

施工段階では、設計段階で計画された内容が正確に実施されることが求められます。特に、耐火性の高い材料の取り扱いや施工方法には細心の注意が必要です。例えば、耐火性コンクリートや耐火ガラスの適切な施工、火災時の煙の流出を防ぐための防火区画の確立などが挙げられます。

また、施工現場では、施工品質を維持するために適切な監督や検査が行われることが重要です。


完成検査

建物の施工が完了した後、所管行政庁による完成検査が実施されます。検査では、設計段階で申請された耐火性能が実際に建物に反映されているかが確認されます。具体的には、防火区画の設置状況、使用材料の耐火性能、避難経路の確保状況などがチェックされます。

検査を通過した建物は、正式に使用許可が与えられ、耐火建築物としての機能を果たす準備が整います。


定期メンテナンス

耐火建築物の耐火性能を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。具体的には、防火扉や避難経路の点検、耐火材料の劣化状況の確認、スプリンクラーや消火器の動作確認などが含まれます。

メンテナンスを定期的に行うことで、建物の安全性を長期間にわたって確保することが可能です。また、法的な点検義務を遵守することにより、万が一の火災時にも適切に対応できる体制を整えることができます。

まとめ

耐火建築物について解説しました。建物で火災が発生してしまった際、建築物の構造や性能や利用者の人命を左右します。そのため、厳格な水準で建築され、適切に運用されている耐火建築物は極めて重要です。

建築コストやメンテナンスコストなど一定の手間はかかるものの、有事の際に大切な人命を守り、管理者としての義務を果たすためにも、本記事の内容は欠かせません。

今回解説した内容も参考に、耐火建築物の適切な設計から運用までのプロセスを実施してみてください。

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