コラム

column

工場

GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説

更新日 : 2023/10/04
GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説

医薬品の製造において必ず知っておかなければならないものの1つに、国際的な基準でもあるGMPがあります。GMPはどのような内容について定めたものなのでしょうか。また、日本国内においてはどのように適用されているのでしょうか。GMPの意味やGMP省令の内容、2021年8月1日に施行された改正GMP省令における改正点、GMPに対応した工場の設計条件などを紹介します。

GMPとは

GMP(Good Manufacturing Practice)は、医薬品の製造と品質管理について定めた国際基準です。

医薬品は病気の治療や予防、保健衛生において重要な役割を持ち、安全と品質が確実に保証されていなければいけません。従って、医薬品の製造過程には適切な管理が求められ、品質管理に関する規格の制定と遵守も必要です。

これらの医薬品製造に関する要件をまとめたものがGMPであり、原材料の入庫から出荷に至る全工程についての国際的な指針となっています。

GMPの3原則

GMPは次の3原則を中心に組み立てられています。

  • 人為的ミスを最小限に抑える
  • 医薬品の汚染・品質低下を防止する
  • 品質保証のシステムを構築する

この3原則を達成するための方法や条件、基準などについて、項目ごとに細分化して明確化したものがGMPであると言い換えることができます。

日本ではGMP省令として制定

GMPはアメリカでの薬害問題が発端となり提唱されました。

1962年にはアメリカで医薬品の審査を厳しく行うことが求められ、GMPが誕生します。その後、1969年にWHOが医薬品貿易においてGMPの証明制度を採用するよう勧告したことでGMPは世界に広まることになりました。

日本では、1974年に「医薬品GMP指導基準」が公示されました。1980年にはGMP省令が厚生省令として公布され、2021年8月に抜本的な改正が行われています。

改正が行われた背景には、GMP基準の標準化を図る国際的な動きと日本のGMP省令との整合性を図る必要があること、製薬企業の不正製造がたびたび問題になっていたことなど挙げられます。また、この改正には、国際標準との整合性を高めることで、医薬品製造における管理と責任の厳格化を強めたいという狙いもありました。

GMP省令改正のポイント

2021年8月に施行されたGMP省令の改正では、多くの内容が変更されました。

例えば次のような点についての変更があります。

  • 承認書を遵守した製造
  • 医薬品品質システムの概念を追加
  • 品質部門に専門業務組織を設置
  • 国際標準に基づいた査察体制との整合性強化
  • 基準書を廃止して手順書を追加
  • 交叉汚染の防止
  • 外部委託業者の管理
  • 製造業者と製造販売業者の連携強化
  • 変更管理や逸脱管理におけるプロセスの見直しや影響調査
  • 是正措置と予防措置(CAPA)を追加
  • 規格外(OOS)の考え方を追加
  • 教育訓練の結果に関する評価方法
  • 記録の完全性確保(データインテグリティ)
  • バリデーションについての指針

この中でも、特にGMPの3原則に深く関わる重要なポイントをいくつかご紹介していきます。

医薬品品質システムの構築

医薬品の製造業者は、実効性のある品質システムを構築しなければならないという内容が新たに盛り込まれました。

この内容には、品質管理の仕組みをシステム化し、品質確保のための基本方針と品質目標を文書化して周知を図ることも含まれています。また、経営陣は品質目標達成のためのリソースを準備し、活動に積極的に関与することが求められています。

品質リスクマネジメント体制の整備

品質リスクマネジメントを構築することも新たに定められています。

これは、医薬品の品質に対し好ましくない影響を及ぼす事象についてリスク管理をすることを求めるものです。また、品質リスクマネジメントに際して必要な文書の記録や保管も求められます。

品質に関わる専門業務組織を設置

従来の改正前GMP省令では、製造部門と品質部門を独立して設置することが定められていました。

2021年8月の改正により、品質部門の下に品質保証と試験検査それぞれの担当組織を設置することが新たに義務付けられました。それぞれの組織には適切に業務を遂行するための必要人員を配置しなければならないとされています。ただし、業務に支障のない場合であれば、品質保証と試験検査の担当兼務は認められています。

GMP対応で重要な「バリデーション」とは

このように、GMP省令改正によって細部にわたるまで医薬品製造における安全と品質保証が明文化されました。特に品質保証についての細やかな内容のアップデートが行われたことが目立ちます。

品質保証システムを恒常的に機能させるためには、適切なシステム運用がされているか定期的に検証を続けていく必要があります。

このような、システム検証についての業務を「バリデーション」といいます。バリデーションはGMP省令において次のように定義されています。

“製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすること”

(引用:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令|厚生労働省

目的とする医薬品を製造するのに重要なバリデーションは次の5つです。

  • 製造設備が最適な設備か検証
  • 製造方法が最適な条件か検証
  • 製造に使用されるユーティリティーは最適な品質か検証
  • 製造環境が最適な条件か検証
  • 製造設備が適切に洗浄できるか検証

バリデーションを定期的に実施し品質保証システムを維持するためには、製造工程や製造を支援するシステム、洗浄など後工程の確実性などが求められます。

GMPに対応した設計・建設の4項目

GMPの3原則に適合し、バリデーションによって適切な環境や条件を維持していくためには、工場の建物や内部の配置にも工夫が求められます。

すでに建設されている工場をGMPに対応させるためには時間やコスト、製造ラインの調整など困難な部分も少なくありません。工場の建設時からGMPを意識した設計をすることで、品質の安定性や確実性を高めた生産拠点にすることが可能になります。

GMPに配慮した設計としては、次の4項目が重要です。

地理条件を含めた配置計画

工場自体をどういった場所に建設するかといった、地理条件を含めた配置の計画もGPM対応を考慮した場合に重要なポイントとなります。

例えば、虫の発生が少ない周辺環境の場所を選ぶことは製造環境をよくするうえでも重要です。また、道路や鉄道からの振動、自然災害の被害を受けにくいと考えられる立地を選定することで製造継続や品質の安定性につながります。

建物の周辺環境や外部についての計画

虫の発生を抑える排水設計や、虫の侵入を徹底的に防止する外壁や窓の施工が必要です。

設計時には、土埃や花粉などの異物が建物内に入らない仕組みも考慮する必要があります。

建物の内部についての計画

空気中のチリやホコリや微粒子、微生物を徹底的に制御するためのクリーンルームの設置が必要となります。そこで例えば、壁や床、天井は平滑でホコリのたまらないような設計が求められるでしょう。

分電盤や制御盤などは、壁に埋め込むことを想定した設計にすることでホコリが溜まるのを防ぐことができます。

設備と稼働維持の計画

照明や空調が製造や保管といった目的に対して適切かを考慮します。また、原料や廃棄物の輸送ラインのほか作業員の動線が適切かも合わせて考えます。

温度や湿度、差圧管理などを常にモニタリングし、適切な環境を維持できる仕組みの整備を進めていくことで恒常的な対策が可能になります。

医薬品の製造工場にはGMP遵守を基準とした建築設計を

医薬品製造に関しての重要な基準であるGMPについて、改正後の内容や遵守のためのポイントなどをご紹介しました。

GMPは世界に浸透し、標準化を図るための国際的な動きが見られます。国内ではGMP省令の改正により、医薬品の安全を確実なものとするための具体的遵守事項が設定され、製薬会社の責任も大きなものとなっています。GMPを遵守しながら、より安全性の高い製造を行うためには、工場そのものの設計段階からGMPを考慮することが必要だといえるでしょう。

三陽建設は豊富な施工実績を持ち、GMPに対応した製薬工場の建設についても施工が可能です。製薬工場を含め、さまざまな分野の工場建設に自信を持って対応させていただきます。お気軽にお問い合わせください。

工場の新規建設をご検討の方は「三陽建設の新規建築」をご覧ください。

創業100年を越える実績と信頼

高度な技術と幅広い対応力で様々なご要望にお応えします。

三陽建設の強みはこちら