倉庫
倉庫建築に欠かせない建築基準法の内装制限とは?建築制限・用途制限も解説
更新日 : 2024/02/06建物内で火災が起きた際の被害を最小限に抑えるために設けられている「内装制限」。新たに倉庫の建築を検討している場合、内装制限を理解していないと倉庫として使えなくなってしまう可能性もあります。実際に倉庫を建築するのは建設会社だとしても、発注側でも法律を理解していれば万が一のトラブルを防げ、無駄なコストを抑えることにもつながるでしょう。そこで今回は倉庫建築に欠かせない内装制限について、建築制限や用途制限とあわせて概要やポイントをお伝えします。
倉庫の建築について、より詳しくは「倉庫建築にかかる期間は?建築時の注意点や業者の選び方も解説」をご覧ください。
Contents
建築基準法とは
建築基準法とは安全性の確保を目的に、建物の敷地・構造・設備・用途に関する基準を定めた基準です。建築基準法では新築・増築・改築を建築に含めています。
よって、倉庫の建築・内装も建築基準法の基準を満たす必要があります。
建築基準法に違反すると、従業員を危険に晒しやすくなるだけでなく、行政処分や刑事罰を受ける恐れがあります。そのため、倉庫を建築する際には建築基準法を知っておくことが大切です。
建築基準法に準ずる倉庫の内装制限とは
「内装制限」とは、建物内で火災が起こった際の被害を最小限に抑えるために設けられたルールのことで、建築基準法施行令(以下「令」という)第112条・第128条の3・第128条の3の2・第128条の4・第129条などで定められています。
壁・天井が1.2m以下なら多くの場合が内装制限の対象外
具体的には、火災が発生した際に内装材の延焼で避難経路を妨げたり、内装材から有害物質が出たりするのを防ぐため、内装材や建物内での使用箇所を制限する規定です。ただし、対象になるのは1.2m以上の高さがある壁と天井がある場合で、耐火建築物か準耐火建築物かによっても制限は異なります。
たとえば、スプリンクラーや水噴霧消火設備、泡消火設備などで自動式のもの、排煙設備(令第126条の3の規定に適合するもの)が備わった建築物であれば、内装制限の対象外です。
内装制限の対象となる倉庫の場合
内装制限の対象となる倉庫では、壁や天井を仕上げる際、「不燃材料」もしくは「準不燃材料」を使用しなくてはなりません。それぞれの具体的な内容は次のとおりです。
- 不燃材料
・コンクリート
・れんが
・瓦
・陶磁器質タイル
・繊維強化セメント板
・厚さが3mm以上のガラス繊維混入セメント板
・厚さが5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
・鉄鋼
・アルミニウム
・金属板
・ガラス
・モルタル
・しっくい
・石
・厚さが12mm以上の石膏ボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る)
・ロックウール
・グラスウール板
- 準不燃材料
・不燃材料のうち通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間令第108条の2各号に掲げる要件を満たしているもの
・厚さが9mm以上の石膏ボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る)
・厚さが15mm以上の木毛セメント板
・厚さが9mm以上の硬質木片セメント板(かさ比重が0.9以上のものに限る)
・厚さが30mm以上の木片セメント板(かさ比重が0.5以上のものに限る)
・厚さが6mm以上のパルプセメント板
建築基準法に準ずる倉庫の建築制限
建築基準法の建築制限とは、敷地や構造設備に関する取り決めです。次の項目からは、倉庫建築に関わる建築基準法の建築制限について紹介します。
防火上の構造制限・防火区間の設置
- 防火上の構造制限:耐火建築物とすべき場合、3階以上の階が200㎡以上。準耐火建築物とすべき場合、床面積が1,500㎡以上。
- 防火区間の設置
火災が発生した場合に、建築物内の他の部分に延焼することを防止するために、一定の面積ごとに防火区画を設けることで、火災を局部的なものに止めることとされています。
主要構造部※1の構造 | 区画すべき面積 | 防火区画の方法 | ||
スプリンクラーなし | スプリンクラーあり | 床・壁 | 開口部 | |
耐火構造 | 1,500㎡ごと | 3,000㎡ごと | 準耐火構造 (60分) |
特定防火設備 (60分) |
準耐火構造(60分)など※2 | 1,000㎡ごと | 2,000㎡ごと | ||
準耐火構造(45分)など※3 | 500㎡ごと | 1,000㎡ごと |
※1:柱、はり、壁、床、屋根及び階段
※2:柱及びはりを不燃材料とするなどの一定の基準を満たす建築物
※3:外壁を耐火構造とするなどの一定の基準を満たす建築物
非常用の進入口の設置
火災発生時に消防隊が建築物内で円滑に人命救助や消火活動が行えるよう、3階以上ある倉庫では、屋外から進入できる開口部を外壁面に設置しなければなりません(進入口同士の間隔は40m以下)。
原則としては、幅75cm以上、高さ1.2m以上で赤色灯がついたバルコニー付きの進入口を設置します。ただし、幅75cm以上、高さ1.2m以上もしくは直径1m以上の円が内接できる窓(外壁面10m以内ごとに1箇所)を代替進入口とすることも可能です。
また、非常用のエレベーターが設置されていれば、進入口の設置は不要になります。
建築基準法に準ずる倉庫の用途制限
営業用倉庫は、都市計画法で定められている13の用途地域のなかで、6つの用途地域にしか建築が許されていません。その6地域は次のとおりです。
・準住居地域(道路の沿道において自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域)
・近隣商業地域(周辺住民が日用品の買物などをするための地域)
・商業地域(銀行・映画館・飲食店・百貨店などが集まる地域)
・準工業地域(主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域)
・工業地域(工場が建てられる地域。環境を悪化させるおそれがある工場でも建てられる。ただし住宅や店舗の建築も可能)
・工業専用地域(工場を建てるための専用地域。工業地域との違いは、住宅の建築は不可である点)
なお、倉庫の用途制限とは別に、営業用倉庫にはさまざまな種類があり、新たに倉庫を建てる場合はそれぞれの用途や特徴の把握も欠かせません。
営業用倉庫の種類について詳しくは、「倉庫の種類とは?自社の目的に合わせた倉庫を選ぼう」をご覧ください。
倉庫の内装で建築基準法に違反しないポイント
倉庫の内装を行う際にはいくつかの注意点がありますが、なかでも次のポイントについてはしっかりと押さえておく必要があります。
木材の取り付け方
倉庫の内装材として、木材を使用するケースは少なくありません。しかし、木材は燃えやすいため、倉庫に使用するものによっては、火災が発生するリスクも高まってしまうでしょう。そこで次の3点を押さえないと、木材は使用できないルールになっています。
- 木材の厚さに合わせ下地に適切に取り付けられているか
- 天井の内装仕上げを不燃材料もしくは準不燃材料で仕上げているか
- 木材の表面に延焼を大きくさせてしまう溝がないか
内装制限については、地方自治体で独自の条例で制限を設けている場合もあります。そのため、建築予定地の条例は必ず確認してください。
建築前に必ず専門業者や消防署に確認する
内装制限、建築制限、用途制限のほか、上述した木材の取り付け方などは、素人では判断が困難です。自分たちだけで判断して間違えていた場合、法律違反となる可能性があるだけではなく、火災が起きた際には人の命が危険にさらされます。自社の従業員ひいては近隣住民の命を守るうえでも、必ず施工業者や消防署に確認をしてから建築準備を始めることが重要です。
倉庫を建築する際は専門性の高い業者に依頼するのがおすすめ
倉庫から火災が発生すると、近隣の建物や住民に被害が及ぶだけではありません。企業としての信頼や自社製品、もしくは取引先から預かっている資産を失ってしまうかもしれません。そのため、火災を防ぐための対策には、万全を期しておかなくてはならないでしょう。
倉庫で発生する火災被害を最小限に抑えるには、日頃から倉庫内の安全管理を厳重に行うのはもちろんのこと、それ以前に建築時の内装制限、建築制限、用途制限の遵守が必須です。建築時にしっかりとした対策をしなければ、安全管理を徹底しても火災発生時には大きな被害が生まれてしまうでしょう。
そこで、倉庫の建築を依頼する際には、倉庫建築の実績が豊富でしっかりとしたノウハウを持った業者の選定をおすすめします。三陽建設はこれまで多くの倉庫建築の実績があり、多くのノウハウを有しているため、倉庫建築を検討されている際は、安心してご相談ください。
倉庫の新規建設をご検討の方は「三陽建設の新規建築」をご覧ください。