倉庫
倉庫の建築は用途地域に注意!建築制限について分かりやすく解説
更新日 : 2023/12/26倉庫の建築にあたっては様々な事情への配慮が必要ですが、特に重要なものの一つが用途地域です。建築予定地の分類により、そもそもの倉庫の建築可否や用途、制限などの条件がかわってきます。
本記事では用途地域について概観した上で、倉庫の建築にあたって注意すべきポイントについて詳しく解説。また、倉庫建築に関わるその他の重要な論点についても補足しています。
記事を読むことで倉庫の建築にあたって注意するポイントがわかりますので、ぜひご一読ください。
Contents
用途地域とは?建物の種類は地域により制限がかかる
用途地域とは、地域ごとの区分を大まかな用途によって分類する区分のこと。用途地域に応じて建築できる建物の用途や面積が制限されます。用途地域ごとに制限を求めることで地域の利便性と景観を両立しながら計画的な都市づくりをおこなうことが目的です。
用途地域は全13地域で、大まかには「住居系地域」「商業系地域」「工業系地域」の3つに分類できます。
住居系地域
住居系地域とは、主に居住地として住民が自宅を構えることを目的として設定された地域です。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
地域により、住宅以外の施設に関する規制の強さが異なります。また、住宅であっても、高層マンションなど、周辺の生活環境に影響を与えうる建築物についても用途地域ごとに制約が異なります。
田園住居地域のみ、田畑など農地の保護も兼ねた地域として設定されています。
商業系地域
商業系地域には以下の2つの用途地域があります。
- 近接商業地域
- 商業地域
近接商業地域は「近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域」として定められています。日常の生活における消費活動の支えとなる商業活動が広く認められた地域です。
商業地域はターミナル駅、繁華街、歓楽街など広く商業に関する施設の建築が認められています。
工業系地域
工業系地域に分類されるのは以下の3つです。
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
準工業地域では工業に間接的に関わる用途での建築物が比較的広く認められています。工業専用地域では工業に直接的に関わる施設以外の建築が大きく制限。逆に危険物を取り扱う工場などの建築も広く認められます。
倉庫の種類により建築できる用途地域が異なる
大分類 | 用途地域 | 自家用倉庫 | 営業倉庫 |
住居系地域 | 第一種低層住居専用地域 | ||
第二種低層住居専用地域 | |||
第一種中高層住居専用地域 | |||
第二種中高層住居専用地域 | △ ※2階以下かつ1,500㎡以下 | ||
第一種住居地域 | △ ※3,000㎡以下 | ||
第二種住居地域 | 〇 | ||
準住居地域 | 〇 | 〇 | |
田園住居地域 | △ ※農産物や農業の生産資材の貯蔵目的 | ||
商業系地域 | 近接商業地域 | 〇 | 〇 |
商業地域 | 〇 | 〇 | |
工業系地域 | 準工業地域 | 〇 | 〇 |
工業地域 | 〇 | 〇 | |
工業専用地域 | 〇 | 〇 |
倉庫は大きく「自家用倉庫」と「営業倉庫」の2種類に分類されます。
- 自家用倉庫:自己利用目的(営利・非営利問わず)で使用する倉庫
- 営業倉庫:倉庫の貸出を事業として営むための倉庫
倉庫の用途がいずれかによって建築できる地域が異なるため、それぞれの注意点を解説します。
自家用倉庫
自家用倉庫が建築できるのは下記の10個。用途地域による制限を受けずに建築できるのは、うち7つです。
- 第二種中高層住居専用地域(2階以下かつ1,500㎡以下に限る)
- 第一種住居地域(3,000㎡以下に限る)
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近接商業地域
- 田園住居地域(農産物や農業の生産資材の貯蔵目的の自家用倉庫に限る)
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
自家用倉庫は住居系地域の中では比較的多くの制約があります。用途地域による制限がないのは、第二種住居地域と準住居地域のみです。
ただし、第二種中高層住居専用地域および第一種住居地域では、階数や面積の制限を受けるものの建築することはできます。
また、田園住居地域では農産物や農業の生産資材の貯蔵目的であれば倉庫の建築が可能です。
商業系地域と工業系地域では用途地域の制限なく倉庫を建築することができます。
営業用倉庫
営業倉庫は以下の6つの用途地域で建築できます。
- 準住居地域
- 近接商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
営業用倉庫は住居系地域においては制限が強く、準住居地域にのみ建築が可能です。一方で、商業系地域、工業系地域においては用途地域による制限はありません。
営業用倉庫は自家用倉庫と比較し一つの倉庫設備の利用者が多いことが想定されます。そのため、設備が大きくなりがちで人の出入りも多くなりがちです。近隣の住環境に影響を与える可能性が相対的に高いため、住居系の地域での建築は自家用倉庫と比較し、強く制限されています。
建ぺい率・容積率による建築面積の制限にも注意
用途地域により建築の可否(一部は面積や階数の制限)が分かれますが、建築できる地域であれば建物を無制限に建築できるわけではありません。
地域により定められた、建ぺい率・容積率の制限の中で建築が可能です。
- 建ぺい率:敷地面積に対する建築面積の割合のこと
- 容積率:敷地面積に対する延べ床面積(全てのフロアの面積の総和)の割合のこと
建ぺい率は建物自体の面積で計算
建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合のこと。階数によらず、地面に面している1階の面積で計算します。
例えば、100㎡の土地に1フロア60㎡、2階建ての建物を建築する場合、建ぺい率は以下です。
- 建ぺい率=60/100=60%
容積率は建物の床面積の合計で計算
容積率は敷地面積に対する各フロアの面積の総和(述べ床面積)の割合のことです。
上記と同様「100㎡の土地に1フロア60㎡、2階建ての建物を建築する場合」で容積率は以下のように計算します。
- 容積率=(60+60)/100=120%
防災備蓄倉庫への容積率の制限緩和
避難用品、非常食等、有事の備えのための物品を保管する倉庫を「防災備蓄倉庫」と呼びます。建築する倉庫の用途が防災備蓄倉庫の場合、延べ床面積の総和から1/50を除外することが可能です。
そのため、容積率の制限について一部緩和を受けた状態での建築ができます。
建築制限・内装制限は防災の観点で重要
倉庫の建築において防災の観点から重要な建築制限・内装制限についても解説します。基準を満たしていないと建築許可が出ないだけでなく、倉庫の安全性の観点からも重要です。
耐火要求の構造制限
建物の用途により、一定以上の大きさの建築物は耐火構造で建築する必要があります。
倉庫の場合の構造制限は以下の通りです。
- 床面積が1,500㎡以上:準耐火建築物
- 3階以上の階が200㎡以上:耐火建築物
防火区画の設置
防火区画とは、火災の際に火が燃え広がらないように建物を一定の面積ごとに区切る区画のこと。建築基準法に定められた面積ごとに防火扉や防火シャッターで区切りを行います。
区画の面積はスプリンクラーの有無により異なります。
非常用の進入口の設置基準
3階以上のフロア数がある倉庫の場合、避難や救助活動・消火活動の観点から屋外から進入できる開口部を外壁面に設置する必要があります。
原則はバルコニー付きの進入口の設置が求められていますが、既定の寸法を超える窓で代替することが可能です。また、非常用エレベーターがある場合は進入口の設置そのものが不要とされています。
内装制限
内装制限は火災の被害を拡大しないように定められた内装の制限のこと。燃えることで変形し、避難の妨げになる素材や有害物質が出る素材の使用を制限しています。
1.2m以上の高さの壁と天井がある場合で、壁や天井の仕上げに「不燃材料」もしくは「準不燃材料」を使用する必要があります。ただし、スプリンクラーや排煙設備など、一定の設備を備えている場合は制限の対象外です。
倉庫の建築制限でよくある質問
危険物倉庫はどの用途地域に建てられますか?
危険物倉庫が建てられるのは「工業地域」と「工業専用地域」です。危険物の分量が非常に少ない場合は「準工業地域」に建てることも可能です。
危険物倉庫の建築制限にはどのようなものがありますか?
危険物倉庫の規模については、軒高6m未満の平屋で、床面積が1,000平方m以下であることが定められています。
詳しくは「危険物倉庫とは―3つの基準と建築の注意点を解説」の記事もご参考ください。
まとめ
倉庫の建築にあたって重要な制限の一つである用途地域について解説しました。地域の利便性や景観を守るために定められた建築物の大きさや用途を制限する用途地域は倉庫の建築計画において重要です。また、建築する倉庫が自家用倉庫か営業用倉庫かによっても、受ける制約が異なる点にも留意が必要です。
本記事で紹介した用途地域や建ぺい率・容積率といったその他の建築制限にも留意しながら、倉庫建設の計画を立ててみてください。
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