工場
【工場の火災対策】被害を最小限に抑えるためのポイント
更新日 : 2023/12/26工場での火災は危険物への引火などに伴い、大規模な延焼や爆発など、時に周辺にも甚大な被害を及ぼします。そのため、工場における火災対策は事業計画の中でも非常に重要と言えるでしょう。
工場の火災対策には、そもそも火災を発生させないための対策、発生した火災を広げない対策、そして事故が起きてしまった後の保証や事業継続計画の対策が挙げられます。
本記事では火災対策として重要なポイントについて、主な出火原因やその対策を含めて網羅的に解説します。工場の防災計画に課題をお持ちの方、現在の火災対策が十分であるか確認したい方はぜひご一読ください。
Contents
工場における火災の出火原因
工場での火災には家屋やオフィスなどと比較し様々な要因が考えられます。具体的にどのようなシーンでの出火が想定されるのか、代表的な例を見ていきましょう。
工具や溶接からの出火
熱や火花が出る工具の使用や溶接の際に発生する火花が周辺に引火すると重大な火災に繋がりかねません。熱や火花の発生を伴う製造過程がある場合、周辺への引火には細心の注意を払う必要があります。
電気機器からの出火
電気機器の故障・不具合が出火の要因となるケースも珍しくありません。工場では生産ラインをはじめ様々な電気機器が使用されます。一つの機器の不具合が他の機器に影響し、重大な被害に繋がるようなリスクもあるため、慎重な管理を求められます。
静電気
発生した静電気による引火は時に重大な火災被害を引き起こします。静電気による火災は日常の中でも気を付ける必要がありますが、周辺に危険物がある可能性の高い工場においては特に重大な自己に繋がりかねません。
また、静電気は火災の要因になるだけでなく、設備の不具合・故障に繋がったり、製品の品質低下に繋がったりします。
漏電
漏電も火災につながる要因の一つです。原因の多くは電気系統のコードの劣化や損傷および設備や機器の水濡れなどに起因します。漏電による電線の発熱や火花の発生は工場においては重大事故の引き金となりかねません。
漏電は火災だけでなく、停電による生産ラインの停止や従業員の感電などの自己に繋がるケースもあります。火災対策のみならず、複数の観点から事前に対策すべきリスクと言えるでしょう。
暖房機器等の使用
工場特有の出火リスクもある一方で、食堂や休憩室、事務所の暖房器具やガスコンロなど、一般的な火災の要因にも注意が必要です。特に、工場の場合は一度出火し、火が燃え広がると危険物に引火するなど被害が急拡大するリスクもあります。
暖房機器や火器の使用において注意を払うことは当然ではありますが、工場においてはより慎重な意識が求められるでしょう。
工場において実施すべき火災対策
工場での火災は大規模になりやすく、近隣の施設にも多大な損害を及ぼす可能性があります。ここでは、火災を起こさないために、工場が実施すべき対策についてご紹介していきます。
消防設備の設置
工場は消防法により「消防設備」の設置が義務付けられています。消防設備は以下の3種類です。
- 警報設備:火災を探知し、音声の警報を行う設備、自動で通報する設備
- 消火設備:消火器や消火栓、スプリンクラーなどの消火に用いる設備
- 避難設備:誘導標識や避難ばしご、救助袋などの設備
義務として求められる基準は工場の規模や内容(危険物倉庫の場合、より厳格な基準が敷かれます)により異なります。
必要に応じて危険度の高い箇所においては消防法で定められている基準以上の設備を設置しましょう。
防火設備の設置
発生した火災の延焼を防ぎ、被害を拡大させないために防火設備の設置も重要です。防火扉や防火シャッターなどが該当します。また、比較的低コストで設置できる設備としては防火カーテンが挙げられます。
建築基準法により、用途地域によっては防火設備の設置は必須ですが、必要に応じて基準以上の対策の実施も検討した方がよいでしょう。
危険物の整理整頓
引火や延焼の要因となる危険物は整理整頓することでリスクを低減することができます。原材料や完成品、備品などの中で危険な要因となりうるものを洗い出し、安全に保管・使用できる環境を整えることが重要です。
物品の整理整頓は火災対策だけでなく、作業効率の向上や地震の際のリスク低減にも繋がります。
コンセント等の清掃、漏電対策
コンセントや電気系統など、静電気や漏電による火災のリスクは定期的な点検・清掃により低減することができます。
コンセントの汚れは静電気発生の要因であるため、こまめに清掃を行うようにしましょう。漏電対策として重要なのは定期的なコードの点検です。劣化や損傷を発見したら速やかに交換できるよう、適宜状況を確認することで重大事故を防ぐことができます。
安全教育・避難訓練の実施
従業員への安全教育・避難訓練の実施も非常に重要な火災対策です。普段から防災に対する意識を高めることは火災の発生率低下に直結します。具体的なリスクを洗い出し、安全教育をはかりましょう。
火災が発生した際の消火や避難に関して行動のガイドラインを定めることも重要です。いざという時に速やかに動けるよう、定期的に避難訓練を実施することも求められます。
工場での火災に備えた広義の対策
火災を起こさないよう、起きても被害を抑えるよう対策することが最優先ですが、火災被害が起きてしまった際のリスク分散も重要です。
広義の火災対策として、火災が起きてしまった際に備えておきたい対策について解説します。
火災保険の加入
有事の際の自社設備への被害を補填する手段として火災保険に加入することが挙げられます。建物や設備に対して保険をかけておくことで、火災による損害に対して保険料が支払われ、被害の負担を軽減できるのです。また、火災の規模によっては従業員に対する補償や、周辺に及ぼした被害に対する保証も必要になります。
火災の被害は時に膨大となるため、火災による物的損害に加えて、賠償によって事業そのものが立ち行かなくなることも。火災が起きてしまった際の備えとして保険も非常に重要な手段なのです。
火災保険の中には火災だけでなく台風や大雨などの自然災害による被害を保証するものもあります。必要に応じてリスクが高い災害については保険に加入することをおすすめします。
BCP対策
BCP(Business Continuity Plan)とは、災害時に迅速に復旧し、事業継続を目的として実施する対策のことです。広義には火災が起きない対策、被害を抑える対策を含みます。加えて、火災により工場が被害を受けた際、速やかに復旧や事業の継続について計画を策定することも重要なBCP対策です。
事業の継続においては、一つの工場が被災した際に重要な生産活動だけでも継続できるよう、拠点を分散させるといった対策が挙げられます。自社で拠点を複数持つことが難しい場合、同業他社と有事の際の相互サポートの協定などが代替策として有効です。
工場のBCP対策に関する詳しい内容は下記の記事にまとめていますので、併せてご参照ください。
工場のBCP対策については「工場・製造業でのBCP対策の進め方と押さえておきたいポイント」もご覧ください。
工場の火災対策でよくある質問
工場での火災を防ぐにはどうしたらいいですか?
火災の3要素である「酸素、可燃物、熱源」を念頭に置いて、可燃物と熱源の接触を防止するようにしましょう。
工場での避難訓練や消火訓練は義務ですか?
はい、義務になります。「消防法第36条(防災管理定期点検報告)」に基づいて、大規模建築物などに関しては防災管理業務の実施が義務付けられています。年一回以上の防災訓練(避難訓練)を実施する必要があります。
参考:自衛消防訓練を実施しましょう! (消防用設備の取扱説明書もあります。)|京都市消防局
まとめ
工場での火災対策について解説しました。工場は一般の家庭やオフィスと比較しても火災が拡大しやすいため、被害が甚大になる可能性があります。事前の対策、延焼を食い止める対策、事故が起きてしまった際の対策を講じることは極めて重要と言えるでしょう。
従業員の人命を守るためにも、継続的に事業を実施するためにも本記事の内容も参考に、防災計画を策定し、対策を実施してみてください。
三陽建設では工場の施工や改修実績が多数あります。工場建築の際に、必要な消防設備の設置や避難経路の確保など法令を遵守した工場の設計を行っています。
また、火災対策のための工場のリノベーションを稼働を止めずに実施する「居ながら改修」で実施することも可能です。
工場の火災対策の見直し、古い設備の改修をお考えの際にはお気軽にご相談ください。
工場の改修・リニューアルをご検討の方は「三陽建設のリニューアル・リノベーション」をご覧ください。