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FSSC22000とは?HACCPとISOとの違いと導入メリット
更新日 : 2024/01/23食品は人体に直接入るため、食品工場をはじめとする食品の生産、流通に関わる全ての業種において、その安全管理は極めて重要です。
食の安全に関する基準として国際的な共通規格として定められているのがFSSC22000です。認証を取得することにより、対外的な信頼性が大きく向上するとともに社内のプロセスの可視化やコンプライアンスの強化にも繋がります。
この記事ではFSSC22000について、概要やHACCPとISOとの違いにも触れながら解説し、導入メリットや導入のプロセスについても解説します。
自社でFSSC22000の取得を検討されている方やFSSC22000について基礎知識を得たい方はぜひご一読ください。
Contents
FSSC22000とは?
FSSC22000(Food Safety System Certification22000)とは国際食品安全イニシアチブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)が認証する、食品の安全にかかわる世界共通の規格です。
安全な食品を消費者に提供することを目的とし、あらゆる方向から要求される高い水準を満たしていることの証として認証されます。
FSSC22000を成立させる3つの構成
FSSC22000は3つの構成から成り立っています。
- ISO22000
- 前提条件プログラム
- 追加要求事項
ISO22000については後述しますが、食品の安全に関する世界規格でありFSSC22000の前身のような位置づけです。
ISO22000をベースにしながら、ハザード管理を機能させるための前提ルールを定めた「前提条件プログラム」と様々な視点からの安全に関わる項目を要求する「追加要求事項」を加えることでFSSC22000が構成されています。
FSSC22000の対象組織
FSSC22000の対象となるのは以下の業種にあたる組織・企業です。いずれかの業種に当てはまる場合は認証の申請が可能です。
- 食品製造
- ケータリング
- 食品包装および包装材の製造
- 流通
- 輸送及び保管サービスの提供
- 生化学製品の製造
- 畜産・水産
- 動物の飼料製造
食品の製造だけでなく、原材料の製造から、食品製造後の包装、流通、保管と食の全ての工程に関わる組織・企業が申請対象です。
参考:FSSC 22000(食品安全)|一般社団法人日本品質保証機構
HACCPやISO22000との違い
食品の安全管理に関する国際的な規格としてHACCPやISO22000が挙げられます。これらの規格とFSSC22000との共通点、相違点について解説します。
まず、HACCPは食品を消費者に安全に届けるための国際的な衛生管理方法ではありますが、認証や申請を必ず求められるものではありません。また、世界共通のガイドラインではありながらも、基準は国や認証団体によって異なります。考え方としては重要ですが、対外的な品質の保証となりうるような規格ではないのです。
HACCPに対応した工場建設については「HACCPに対応した工場建設のポイントとは?7原則と3つの視点から解説」もご参考ください。
ISO22000は同様の目的を実現するため、世界的に共通した基準を定める規格として誕生しています。FSSC22000は、ISO22000の既定の中では対応できていなかった意図しない異物混入や第三者による食品事故、さらには企業全体での食品偽装などの事態にも対応した、より高い安全性を持つ規格として誕生しています。
参考:ISO 22000(食品安全)|一般社団法人日本品質保証機構
FSSC22000の認証に必要なこと
FSSC22000認証の取得および更新について、簡単に解説します。
ステップ0.プレギャップ診断
認証取得の準備として、認証範囲である現場の安全に関する取り組みのレベル確認を行います。
ステップ1.基本構想の立案
基本構想の立案においては、導入計画の策定や食品安全チームの編成に加え、マネジメント層にFSSC22000認証の意義を理解してもらうことも重要です。
ステップ2.現状の分析と準備
ステップ2では実際のシステムを構築するにあたってのハザード分析や前提条件プログラム構築の準備が求められます。
関連規制法の確認や過去に発生した問題の調査、文書作成の取り決め等の準備もこの段階で実施すべき事項です。
ステップ3.システム構築と確立
ステップ2で実施したハザード分析などをもとに、前提条件プログラムを構築します。先述のHACCPへの理解もこの段階で必要です。
システムの運用に必要な手順書やマニュアルの作成もこの段階で実施します。
ステップ4.システム運用と検証
実際のシステムを構築し、運用しながら問題がないか検証していきます。外部審査機関からの受審対応にも備え、内部監査を実施することが求められます。
ステップ5.受審対応
審査機関により二段階での審査が行われます。第一段階では主にシステム面、第二段階では運用面の審査が実施。不適合であった場合は是正処置を行う必要があります。
その後、判定委員会で上申を経て認証が完了します。
更新
認証の有効期間は3年で、3年ごとに更新の審査が必要です。また、更新審査のほか、適宜システムの有効性を確認するサーベイラス審査も毎年行われます。審査のうちいずれかは抜き打ちで行われる「非通知審査」です。
FSSC22000認証のメリット
FSSC22000の認証を得ることは、対外的にも社内的にも様々なメリットがあります。代表的なメリットについて見ていきましょう。
1.自社の業務における食品関連のリスクの軽減
FSSC22000の認証を取得できた場合、その業務体制を遵守することで非常に高い水準での品質管理が成立しています。認証された業務品質を維持し続けている限り、食品関連のトラブルが発生する確率は低いと言えるでしょう。
時には健康や人命に直結する食品に関するトラブルは、膨大なリスクを伴います。認証を受けることにより、リスクの発生率が低いことが証明されることは大きなメリットと言えます。
2.自社の業務工程の可視化・効率化
FSSC22000の認証を受けるにあたっては、必ず自社の全ての業務工程を洗い出す必要があります。
業務工程の可視化の中で、無駄な業務工程、非効率な業務工程の洗い出しも同時にできるため、業務効率化にも大きな影響が与えられます。
3.コンプライアンスの強化
FSSC22000の認証を取得するには安全性だけでなく、コンプライアンス面の遵守も当然に要求されます。認証を受けることにより、コンプライアンス基準の高さも証明することができるのです。
業務にあたる従業員にとっても、認証の取得がコンプライアンス遵守の意識に繋がることが期待できます。
4.企業の信頼・価値の向上
FSSC22000の認証を取得することにより、企業の対外的な信頼性は大きく向上します。高い基準をクリアし、安全な食品の提供に寄与していることは企業の価値の高さに直結するのです。
食品の安全への意識が高い消費者から見ても、認証を取得している企業の商品であれば安全性が高いと感じてもらえる可能性が高いと言えるでしょう。
5.国内外への販路開拓への機会
FSSC22000は国際的な規格です。そのため、取得した認証は海外を含めた販路拡大にも直接的に活用することができます。
企業によっては取引要件に含まれている場合もあるため、海外企業や国内でも大手企業、コンプライアンス意識の高い企業との取引を目指す場合は取得しておきたい認証といえるでしょう。
FSSC22000のよくあるご質問
取得した認証に期限はありますか?
認証の有効期間は3年です。 初年度には登録審査、2年目と3年目に維持審査を受け、4年目には更新審査を受ける必要があります。
審査基準が変わった場合、取得済みの認証はどうなりますか?
維持審査や更新審査の際に、移行審査を受けることで認証を継続することができます。
参考:FSSC22000についてのよくあるご質問|一般社団法人日本能率協会審査登録センター
まとめ
FSSC22000の概要や導入メリット、導入手順について解説しました。FSSC22000は世界的に認められた食の安全に関する規格であり、認証を取得することで自社の業務プロセスにおける安全性を確認・証明できます。
認証の取得には一定のハードルを要しますが、社内的にも対外的にも、取得するメリットは大きいと言えるでしょう。
ぜひ、自社にとって中長期的に必要である場合、今回の記事の内容も参考にFSSC22000の取得を目指してみてください。
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