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危険物倉庫で静電気対策が必要な理由と対策方法

更新日 : 2024/01/23
危険物倉庫で静電気対策が必要な理由と対策方法

静電気は冬場には特に日常生活の中でもしばしば発生する現象ですが、時には火災の原因にもなりえます。危険物倉庫においては静電気の発生が時に甚大な被害を巻き起こすこともあるため、静電気への対策は危険物倉庫の運用において極めて重要と言えます。

本記事では危険物倉庫で静電気対策について、静電気が危険である理由や静電気が発生するメカニズムや発生しやすい環境、静電気の種類などにも触れながら解説していきます。

危険物倉庫での静電気対策に課題を感じている方、危険物倉庫における静電気の危険性について改めて確認されたい方はぜひご一読ください。

なぜ危険物倉庫に静電気は危険なのか?

静電気は時に一般家庭においても火災の原因となることがあります。危険物倉庫においては事故発生の可能性が高く、さらにその被害も拡大しやすい傾向があるため、より慎重に静電気を警戒しなければなりません。

危険物倉庫にとって静電気が危険である理由を解説します。

火災の原因となりやすい

静電気は発生時に時に火花を伴います。発生する火花自体は小さなものであっても、危険物に引火してしまった際には、一気に燃え広がり、火災が発生してしまう可能性があるのです。

特に、第一石油類・第二石油類といった危険物は引火点が低いため、特に注意しなければなりません。

爆発などの大きな事故につながることがある

危険物工場では、静電気を起因とした火災が比較的発生しやすいだけでなく、火災が発生してしまった場合にその被害が拡大しやすい点も注意が必要です。

可燃性のガス・液体・粉体を扱う場合、火災時に爆発が起きるリスクが高まるため特に深い注意が求められます。

中でも粉体は発火しやすい上に、除電が難しいため特に慎重な取り扱いが求められます。

静電気による爆発・火災の事例

少し古いデータですが、消防庁の火災統計によると静電気を要因とする工場・事業場での火災の発生は1987年~2007年の20年間を通して年間100件程度と無視できない頻度で発生していることがわかります。

重要な事例として下記のようなケースが挙げられます。

  • ポリエチレン製携行缶の発火事故:携行缶の中のガソリンに静電気からの引火により発火
  • 残油処理時における油送管の爆発事故:可燃性混合気に処理工程で発生した摩擦による静電気が引火し爆発
  • LPGタンク車の火災事故:LPGガス移充填用のゴムホースの老朽化によりガス漏れが発生し、そこに静電気が引火し火災発生
  • アルミ粉回収用バグフィルタの爆発事故:アルミ粉回収用バグフィルタの稼働中、本来禁止されているブロワを稼働させていたことによりアルミ粉が空気中に舞い、静電気に引火し、粉塵爆発

参考:静電気による爆発とその防止対策|J-Stage

参考:静電気による災害事例 | J-Stage

静電気の種類

静電気は発生の原因により大きく4種類に分類されます。それぞれの発生のメカニズムについて順番に見ていきましょう。

接触帯電

接触帯電とは、2つの物質が接触する際に電子の移動が起こることにより発生する静電気のことを指します。

物質のうちどちらが電子を放出し、どちらが受け取るかは物質の帯電しやすさを並べた「帯電列」の順序に基づきます。

例えば人の毛や毛皮、ガラスなどは+に帯電しやすく、ポリエチレンや塩化ビニール、テフロンはマイナスに帯電しやすいです。紙、ゴム、アルミニウムなどはいずれにも帯電しにくい物質です。

剥離帯電

剥離帯電は、接触している物質同士を剥がす際に発生する静電気です。例えば、フィルムやテープをはがした際などに発生します。原理としては接触帯電と同様です。物質間の電子の移動に伴い、静電気が発生します。

剥離帯電により発生する静電気の大きさは、貼りついていた物質同士の密着度や密着強度、剥がす際の速度により影響を受けます。

摩擦帯電

摩擦帯電は物質同士の接着面の摩擦によって発生する静電気です。摩擦とは、いわば上述の接触と剥離を高速で繰り返している現象。接触帯電・剥離帯電と比較しても強い静電気が発生しやすいため、特に注意が必要です。

誘導帯電

誘導体電とは、物質が導体(電気を通しやすい物質)の場合に発生する可能性のある静電気です。導体に帯電した別の物質が近づくと、導体の一方の極が物質に引き寄せられます。この際、導体が接地していると、もう一方の極が中性になるために電子を放出もしくは供給します。この接地を外し、物質とも離すと導体には物質とは逆の極が帯電された状態となります。

静電気が発生しやすい条件

静電気は同じ状況下であっても、条件が異なると発生しやすさが変化します。日常生活においても、夏と冬では静電気の発生率が異なるのも、条件の違いによるものです。具体的な基準や理由とともに解説します。

湿度が低いこと

湿度が低いと静電気の発生率が高まります。具体的には、20度を切ると発生率が高まる水準というのが広く知られている認識です。

湿度が高い状態とは、空気中に水分が多く含まれる状態を指します。この時、空気中の水分を通して静電気が自然と放電されていくため静電気が発生しにくいのです。一方、冬場は静電気が放電されにくくなるため、物体同士に静電気が溜まった状態となり、静電気による放電が起きやすい環境と言えます。

気温が低いこと

静電気の発生しやすさに影響を与える大きな要素は湿度ですが、気温も一つの要素と言えます。一般に25~20度よりも低いと、静電気の発生率が高まるとされています。

空気は温度が下がると、空気中に含むことができる水蒸気量も下がっていきます。そのため、気温が低い状況下においては気温が高い場合と比較し、仮に同じ湿度であったとしても含んでいる水分量は異なるのです。

気温が低い場合、湿度自体は低くないように思えても、実際に空気中に含まれる水分量は相対的に少ないため注意が必要といえます。

危険物倉庫の静電気対策

危険物倉庫内で静電気の発生を防ぐ方法は複数考えられます。静電気の発生が大きな事故に繋がりかねないことを考えると、可能な限り複数の方法で対策することが望ましいと言えるでしょう。

代表的な静電気対策について、3つ解説します。

アース(接地)

アースとは、導体と地面を線で繋ぐことにより、導体に溜まっている静電気を地面に逃がす形の静電気対策です。

比較的容易に取り付けが可能で、導体を要因とする静電気の発生を抑止する効果が期待できます。

一方で、ガラスやゴムなど電気を通さない物体に対しては効果がありません。

除電

除電とは、専用の除電装置(イオナイザ)を使って物質の静電気を除去する方法です。高電圧を用いて空気を電離することにより、イオンをつくりだし、帯電物に接触させることで電気を中性にすることで静電気の発生を抑えます。プラスイオン、マイナスイオン、双方を作り出せるので、あらゆる物質の静電気を除去することが可能です。

加湿

湿度を高めることによって、空気中の水分量を上げ、静電気を発生しにくくすることができます。万全な対策ではありませんが、空調の調節など比較的簡易に実践できる上、場内全体での静電気の発生率を下げることが可能です。

参考:危険物の取り扱いについての安全作業(特に静電気対策)|危険物保管技術協会

参考:10.1 静電気対策の5つの原則|厚生労働科学研究成果データベース

静電気対策のよくある質問

静電気を簡単に除去する方法はありますか?

金属以外のアスファルト、木、石、紙など、電気が緩やかに通るものに手のひら全体で触ると、身体に溜まっている電気を逃がすことができます。

静電気が発生するおそれのある設備とはどのような設備ですか?

導電率が10-8S/m(ジーメンス/メートル)以下の危険物を取り扱う設備のことです。

特殊引火物、第1石油類又は第2石油類等を取り扱う設備が対象になります。

まとめ

危険物倉庫における静電気の危険性や対策方法について解説しました。日常の中でもしばしば発生する静電気ですが、危険物倉庫においては時に重大な事故の発生原因となりえます。

静電気がどのような状況で発生するか、どのような環境下において発生しやすいかについて今一度ご認識の上、自社の倉庫内で静電気を起因とする事故の発生リスクについて洗い出し、対策を実施してみてください。

三陽建設は、倉庫の建築に関して豊富な施工実績があります。高品質な技術とこれまでに蓄積した経験で、危険物倉庫に関しても確実な施工が可能です。危険物の静電気や火災対策を実施した倉庫の建設をご提案しますので、ぜひ三陽建設にご相談ください。
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