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【施設別の水害対策】浸水を防ぐ方法と改修のポイント

更新日 : 2024/12/09
【施設別の水害対策】浸水を防ぐ方法と改修のポイント

「災害大国」と呼ばれる日本の中でも、大雨や台風に伴う水害は特に気を付けなければならない災害の一つです。水害は河川の近くや海抜が低い土地のみならず、様々な形で発生し、リスクとなりえます。

本記事では水害について、生じるリスクや対策の基本戦略、施設ごとに注意すべきポイントなど建物・施設の水害対策について解説します。

所有、管理する建物の水害対策に課題をお持ちのご担当者様はぜひご一読ください。

工場・倉庫の水害対策については「工場・倉庫の水害対策で実施すべき7つの項目!浸水被害を防ぐ方法」で詳しくご紹介しています。

水害により生じるリスク

水害が建物そのものや、利用者、従業員等に様々な形でリスクを及ぼします。どのような形でどのような部分にリスクが生じるのか、具体的に見ていきましょう。

内装、外装への損傷

水害により建物の内装や外装に深刻な損傷が生じることがあります。特に床や壁の浸水による腐食、カビの発生、塗装の剥がれといった問題は、長期的な建物の耐久性を低下させ、修繕コストの増加を引き起こします。外壁の損傷も、雨水の侵入を助長し、さらなる劣化を招く可能性があるため、特に注意が必要です。

設備の故障

重要な設備が水害で故障するリスクも高く、特に電気設備や機械装置が影響を受けると、業務運営に深刻な支障をきたします。浸水により設備がショートしたり、操作盤や制御装置に不具合が生じたりするのがよくあるケースです。こういった事態により稼働停止や修理費用の発生といった損失に直結します。

資産価値の低下

建物や設備が水害により損傷を受けると、その資産価値が大きく低下するリスクがあります。水害履歴のある施設は、再販価値や賃貸市場での評価が低くなる傾向にあるため、長期的な経済的損失も考慮しなければなりません。また、資産価値の低下は保険料の上昇や保険対象からの除外にも影響を及ぼす可能性があります。

業務中断

水害が発生すると、浸水や設備の故障、建物の損傷などの影響で業務が中断されるリスクがあります。水害からの復旧には多くの時間と費用がかかり、再稼働が遅れたり、顧客・取引先にも影響が及ぶ可能性があります。

従業員・利用者の安全リスク

水害時には従業員や利用者の安全も脅かされるリスクが生じます。浸水により足場が滑りやすくなったり、電気系統に水が入り感電のリスクが高まることがあります。緊急避難が必要な状況においても、浸水が妨げとなる場合があるため、従業員・利用者の安全確保と避難経路の確保が重要です。

安全リスクを最小限に抑えるためにも、事前の防災対策も有効と言えるでしょう。

水害対策の基本戦略

水害を防ぐ、もしくは起きてしまった際に被害を最小限に食い止めるためには様々な考え方があります。実際に考慮すべきポイントについて、具体的に解説します。

建物の設計段階での考慮

水害対策を考える上で、まず重要なのは建物の設計段階での計画です。耐水性を高めるために、構造材や壁材に耐水性の高い材料を採用したり、出入口を浸水の影響を受けにくい場所に配置したりすることが効果的といえます。

また、建物の基礎を高く設計することで浸水のリスクを軽減できます。さらに、水害が発生しやすい地域では、地下設備や配電盤をできるだけ上階に配置するなど、万が一の浸水にも備える設計が必要です。

防水設備と排水システムの整備

防水設備や排水システムの整備も水害対策には欠かせません。建物周辺には排水溝を設置し、雨水が建物周囲にたまらないようにすることが重要です。

また、排水ポンプの設置や定期的な点検も行い、排水機能が十分に発揮できる状態を維持しましょう。さらに、外壁や屋根に防水処理を施し、建物内への水の侵入を防ぐことで被害の拡大を防止します。こういった対策により設備や内装が浸水被害を受けるリスクを最小限に抑えることが可能です。

適切な立地選定と土地利用

建物を建設する際には、適切な立地選定が水害対策の基本となります。過去の水害履歴や洪水予測マップを参考に、浸水リスクの低い場所を選定することが重要です。

また、周辺に排水施設や堤防などが整備されているかどうかも確認し、災害時の影響を考慮した立地を検討します。さらに、土地利用においても建物周囲に水を逃がす空間を設けることや、浸水しやすい低地部分には設備を設置しないなど、建物全体の配置計画も考慮することが大切です。

建物や施設の特性ごとの補強ポイント

水害対策において重視すべき重要なポイントとして、建物がどのように使われているか、どのような利用者がいるかも挙げられます。建物・施設の特性ごとに注意すべき補強ポイントについて解説します。

保育園・学校

保育園や学校では、幼児や生徒の安全確保が最優先となるため、浸水を防ぐ工夫が求められます。施設の周囲に排水溝や排水ポンプを設置し、敷地内に雨水がたまらないようにすることが重要です。

また、出入口付近には止水板を設置し、水の侵入を防ぎます。施設内部の電源設備は高い位置に設置し、浸水時に漏電リスクを避ける工夫を施します。避難経路の確保や、子どもたちを迅速に安全な場所へ誘導できるようなマニュアル整備も欠かせません。

高齢者施設

高齢者施設では、利用者の移動に時間がかかるため、浸水リスクを考慮した対策が必要です。敷地内の地盤を高くすることで、浸水リスクを低減し、施設内に水が入り込まないように設計することが効果的です。

また、車椅子利用者が多い施設では、避難経路に水が入り込まないよう、浸水対策を徹底することが重要です。非常用の排水システムや貯水タンクを備え、断水時でも生活用水が確保できる体制を整えましょう。

医療機関

医療機関では、生命維持に必要な設備を守るため、水害対策が特に重要です。地下設備に浸水対策を施し、ポンプや発電機などの主要機器は高層階に設置することで浸水による故障リスクを回避します。

また、建物外周には防水壁や排水設備を整備し、施設への水の侵入を防ぎます。浸水時に備え、酸素供給装置や重要な医療機器の移動計画も立てておくことで、医療サービスの継続が可能な体制を構築します。

ビル

オフィスビルでは、地下や低層階に設備を配置しているケースが多く、これらの防水対策が必要です。地下には排水ポンプを設置し、建物の周囲に止水板や防水壁を取り付け、浸水のリスクを軽減します。

また、電気設備や制御盤を高層階に移動することで、漏電や機器故障を防ぐ対策が効果的です。さらに、ビジネスの継続性を確保するため、洪水などの緊急時対応マニュアルを整備し、従業員向けに防災訓練を実施することで、安全で迅速な対応が可能となります。

長期的な水害対策のポイント

水害対策は建物を所有、維持し続ける限り欠かせないため、長期的な目線も重要です。長期にわたった水害対策を実施するために重要な視点について見ていきましょう。

定期的なメンテナンス

長期的な水害対策には、定期的なメンテナンスが不可欠です。施設の排水システムや防水設備は、時間とともに劣化してしまうため、定期的な点検と整備を行うことで、機能を維持しする必要があります。

排水溝の清掃やポンプの動作確認を定期的に行い、必要に応じて部品交換や修繕を実施しましょう。また、建物の外壁や基礎部分のひび割れなど、浸水の原因となる損傷も早期発見と修繕を行うことが、施設の耐水性を維持するために重要です。

新技術や資材の導入

水害対策は技術の進化により日々進歩しており、新しい資材やシステムの導入は長期的な対策の強化につながります。たとえば、浸水時に自動で膨らみ水の侵入を防ぐ「止水バリア」や、吸水性が高く水害時に床や壁の水浸しを防ぐ特殊な防水材など、新素材の導入を検討するのも効果的です。

また、IoTを活用した水位センサーや遠隔監視システムを設置することで、雨量や水位をリアルタイムで監視し、異常時には迅速に対応できる体制を整えることが可能です。新技術や資材の積極的な活用は、長期的な水害対策をより強化するための有力な方法です。

まとめ

ビルや施設の水害対策について解説しました。国内では、特に近年の予想不能な気象のもとでは建物の立地を問わず水害対策から目をそむけることはできないでしょう。水害対策を怠った際、もしくは適切に実施できなかった際の経済的損失は計り知れません。

ぜひ、今回の記事を参考に、自社の所有・管理する設備の水害リスクについて洗い出しを行うとともに、施設の特性にもあわせた適切な対策を実施してみてください。

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