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クリーンルームの必要性とは?クリーンルームが必要な業種とその理由、設置時のポイントなど

更新日 : 2023/10/04
クリーンルームの必要性とは?クリーンルームが必要な業種とその理由、設置時のポイントなど

クリーンルームは半導体や精密機器の工場、医薬品工場や医療の現場で利用されていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。では、なぜそういった場所にクリーンルームが必要なのでしょうか。ここでは、クリーンルームの役割や必要性、設置から維持管理までの重要ポイントなどを紹介します。

クリーンルームとは

そもそもクリーンルームとはどのように定義されるものなのでしょうか。その意味と目的、分類などを見ていきましょう。

クリーンルームの定義

クリーンルームとは、空気中に浮遊する微小粒子や微生物などの汚染物質の量が、限定された清浄度レベル以下に管理された空間のことをいいます。

さらに、その空間に入る材料や薬品、水などあらゆるものの清浄度が保たれている必要があります。

クリーンルームには、その用途や求められる清浄度レベル、除去対象となる物質に応じた管理が求められます。例えば、温度、湿度、気圧、ガス成分、静電気、電磁波などの環境条件について、それぞれに対応した管理が必要です。

目的と清浄度レベルによるクリーンルームの分類

クリーンルームは大きく分けて次の2つに分類されます。

  • インダストリアルクリーンルーム(ICR)
  • バイオロジカルクリーンルーム(BCR)

ICRはインダストリアル(工業的な)という言葉からもわかるように、工業に関わるクリーンルームを指し、空気中の浮遊微小粒子を管理しています。半導体や精密機械などの製造で利用されています。

もう一方のBCRは、バイオロジカル(生物学的な)という言葉のとおり、空気中の微生物の管理を主な目的としています。病院の手術室や医薬品・食品の製造などで利用されます。

また、クリーンルームはISOに規格化され、清浄度レベルが等級分けされています。

ISOでは、クリーンルームの空気中に含まれる粒子の大きさと濃度を基準として等級を1~9の9段階(クラス1~9)に分けています。

かつては米国連邦規格によるFederal Standard209(FED-STD-209)が、クリーンルームの規格としては最も有名で、日本でも単位を換算しJISに取り入れていました。このとき、FED-STD-209では6段階、JISでは8段階の等級分けがされていました。

しかし、ISO14644でクリーンルームについての規格が規定され、2001年11月にFED-STD-209は廃止となりました。また、JISも2002年に改定され、ISOとの整合が図られています。FED-STD-209は長く使われていた規格であるため、ISOでの規定後も慣例的に併記されていることがあります。

また、医薬品の製造に関してWHOが定めたGMP(Good Manufacturing Practice)規格においても、製造環境の粒子数や微生物数に関しての基準があります。こちらもISOとの整合が図られ、GMPで規定したグレードA~Dを、ISOのクラス5~8にそれぞれ相当するように整理されています。ただし、GMPの規格は医薬品の製造に限定した規格であり、クリーンルーム全体を規定したものではないため注意が必要です。

GMPについては「GMPとは?GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説」で詳しく紹介しておりますのでご覧ください。

クリーンルームと陰圧室の違い

クリーンルームと性質の似ている空間として、伝染病の治療や放射性物質を扱うときに利用される陰圧室が挙げられます。

どちらもフィルタを通して、清浄度を保った空気を室内に循環させるという点は共通していますが、陰圧室は気圧を低くして室内にあるものを室外に出さないことを目的としています。一方、クリーンルームは陽圧室であり、室外のものが室内に入らないようにしています。

クリーンルームに求められる役割と必要性

クリーンルームは、利用する業種やそこで扱う製品の種類ごとに仕様目的が異なります。

なぜクリーンルームが必要なのか、どのような目的で使用されているのか、代表的な業種を例に解説します。

半導体製造におけるクリーンルーム

半導体の製造工程では、300を超える工数によって作られるLSI(大規模集積回路)のような製品もあります。その中には、超微細加工技術によって1マイクロミリメートルよりさらに小さな寸法でできた回路パターンを作る工程も存在します。

こういった半導体製造工程では、製造作業中に製品に付着する微粒子が不良発生に深く関わり、不良発生原因の大半を占めるとされます。不良率を下げるためには、よりクリーンな環境が必要ともいえます。

医薬品製造におけるクリーンルーム

人の健康回復や治療に欠かせない医薬品の製造工場では、空気中に微生物が限りなく存在しない状態が求められます。

国際標準および国内の省令では、医薬品製造に関する厳格な規定を定め、医薬品の安全維持に努めています。近年、省令改正によりさらに細やかな規定も追加されました。

そこで定められた規定に対応するため、医薬品製造に関する品質管理体制の再構築や改善が必要な場合もあります。その場合、新たな基準に適合するクリーンルーム設置が必要となります。

フィルム製造におけるクリーンルーム

フィルムの製造現場では、製造工程で異物が混入することで製品の品質が低下します。

品質低下を招く異物としては、スリットかす(フィルム切断時に生じる切粉)や油圧機器からのオイル噴霧、微小粒子の静電気付着などがあります。

これらを防ぐため、静電気を防止する除電装置を備えたクリーンルームが用いられます。

食品製造におけるクリーンルーム

人の口に入る食品の製造では、食の安全を維持するため異物混入は絶対に防がなければなりません。

金属片やガラス片、毛髪類や虫の混入を確実に防ぐ環境を構築する必要があります。

広い消費者層が利用し、誰にとっても安全なものであり必要のある食品だからこそ、一度の異物混入で信頼を大きく損なうことも考えられます。顧客ロイヤルティを維持するためにもクリーンルームが必要な分野だといえます。

化粧品製造におけるクリーンルーム

化粧品の製造工場も、クリーンルームが必要とされる分野です。化粧品は肌に直接つけるものであり、清潔で安全であることが求められ、化粧品についても製造に関する規定が定められています。

実際に、厳しい基準の検査を合格した原材料のみを使用し、高等級のクリーンルームで製造した化粧品が、販売と同時に受け入れられ人気となった事例もあります。それほど、化粧品の安全性は消費者にも重視されているということを示しています。

物流におけるクリーンルーム

近年、クリーンルームを設置した物流センターも増えています。

物流センターは荷主の商品を保管し、場合によっては流通加工も行ってから包装の役割まで担うこともあります。その際、クリーンルームを設置していることで化粧品や食品、マスクのような衛生用品の取り扱いも可能になります。

近年は物流センターに流通加工や包装まで含めた物流の機能を集中させることが主流となっており、クリーンルームを備えた物流センターも増えていくことが予想されます。

クリーンルーム管理のポイント

クリーンルームを適切に管理し、清浄度レベルを維持していくためにはどのようなことがポイントとなるのでしょうか。

クリーンルームの4原則

クリーンルームの清浄度を維持するうえで一般的に知られる4原則があります。

  • 持ち込まない(ゴミやその発生源となるものをクリーンルームに持ち込まない)
  • 発生させない(クリーンルーム内でゴミを発生させる行為をしない)
  • 堆積させない(ゴミが堆積しないような工夫をする)
  • 排除する(ゴミとその発生源はクリーンルームから排除する)

例えば、「持ち込まない」については、防塵衣に着替えてからエアシャワーを浴びて入室することでゴミの持ち込みを防ぐことができます。機械や材料は清掃してから搬入することも重要です。

「堆積させない」に関しては、クリーンルーム内の壁や床を平滑にし、ゴミの付着しにくい気流を考えた換気循環を実現させることが重要な対策となります。

クリーンルームの清浄度維持には適切な設計が重要

クリーンルームの清浄度を維持するためには、クリーンルームとそこへ通じる通路や更衣室などの配置、換気設計、クリーンルーム内の設計を適切に行うことが重要です。専門性のある業者であれば、そういった細かい設計であっても、対応できるでしょう。

そのためクリーンルームの建設・設置は、専門性がありノウハウを持つ業者へ設計・施工を依頼することがおすすめです。

クリーンルームの必要性を理解して設置・管理・維持の計画を

クリーンルームはさまざまな分野において安全性や品質の向上に関わり、現代の産業や医療分野に欠かせない存在となっています。企業としての信用度と顧客ロイヤルティを維持し、取引先へのアピールをするうえでも重要です。クリーンルームはなぜ必要なのか、また、自社にとってどのレベルのクリーンルームが適切なのか、それらを理解して設置や管理、維持の計画を立てましょう。

三陽建設は豊富な施工実績を持ち、クリーンルームの建設も数多く手掛けてきました。これまで蓄えてきたクリーンルームに関するノウハウを活かし、安全性の高いクリーンルームを備えた工場建設が可能です。三陽建設による施工について、ご相談がある方はお気軽にお問い合わせください。

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