工場
工場建物の寿命とは?寿命を延ばす方法と減価償却・耐用年数について解説
更新日 : 2024/02/06工場建物の寿命は適切な修繕・管理によって、ある程度まで伸ばすことが可能です。しかし、寿命はいつかは訪れます。
そこで本記事では、法的・経済的・物理的な工場建物の寿命(耐用年数)をご紹介したうえで、寿命を延ばすポイントをお伝えします。適切な管理は減価償却期間中に破損してしまうリスクも低減することが可能です。また、寿命の訪れまたは減価償却期間が過ぎた工場の活用方法についても解説します。担当者の方はぜひ参考にしてください。
Contents
工場建物の寿命(耐用年数)・減価償却期間とは?
工場建物の寿命は、耐用年数を基準に考えます。耐用年数とは、減価償却資産(固定資産)を使用できる期間です。
耐用年数は減価償却を行う際の基準となります。耐用年数の決め方は、以下の通りです。
・法的耐用年数
・経済的耐用年数
・物理的耐用年数
メンテナンス・修繕を行う場合には、三つの耐用年数のどれかを基準にするのが一般的です。
次の項目からは、三つの耐用年数についてご紹介します。
なお、耐用年数の詳細については、「倉庫の耐用年数を知り、メンテナンスや修繕を適切に実践するポイントを解説」をご覧ください。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、法律で定められている耐用年数です。国税庁が定めた減価償却資産の耐用年数を指します。
法定耐用年数で重視するのは、建物の素材です。工場の建物であれば、木造は15年、れんが造り・石造り・ブロック造りは34年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造は38年と定められています。
経済的耐用年数
経済的耐用年数は、工場建物のケースだと明確な数字はありません。なぜなら、メンテナンス・修繕を伴うコストが改築費用を上回るまでの年数と考えられているためです。工場は運用で利益が生じるため、メンテナンスや修繕コストのバランスで、ケースごとに耐用年数が異なります。
物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、建物の物理的な状況に限定した耐用年数です。基本的には法定耐用年数や経済的耐用年数よりも長めに設定されていますが、立地や自然災害によって物理的な状況は異なります。そのため、具体的な年数については、建物の寿命に詳しい建築士に確認しましょう。
工場建物の寿命を延ばすポイント
工場の寿命を延ばすには、適切なメンテナンスと修繕の実施が必要です。ここでは、工場を外壁・内装・構造・設備に分けてポイントを解説します。
外装修繕のポイント
外装修繕は、主に外壁と屋根の修繕に分けられます。屋根の場合は雨漏りが最大の問題となるため、防水処理やヒビ割れの修繕が基本です。
外壁を修繕する際には、初期の段階であれば、ヒビ割れやコーキングの修繕で対応できます。ただし、ヒビ割れがひどくなってくる、コーキングにも割れが生じてくるといった状態になれば、再塗装が必要です。
塗装のタイミングは、塗装剤によっても異なります。塗装剤ごとの持続期間の目安は以下の通りです。
・アクリル塗料:4~5年
・ウレタン塗料:7~8年
・シリコン塗料:10年程度
・フッ素塗料:15年程度
※ただし、工場の立地によって目安は異なります。定期的なメンテナンスを忘れないようにしましょう。
外壁塗装について詳しくは「倉庫塗装の重要性と塗装にかかる費用目安を解説」をご覧ください。
内装修繕のポイント
内装については、主に内装の汚れ、建具の傷、床の割れやヒビなどの修繕が中心となります。特に床の割れやヒビは、ひどくなると作業中につまずいてケガをするリスクが高まります。また、床面に粉塵の舞い上がりを防ぐ防塵塗装をしている場合は、塗装の効果が薄れてきてしまうため、しっかりと修繕しておきましょう。
そのほか、一般的な工場には頻繁に人の出入りがあるため、内装材の汚れや傷みが進みます。劣化状況のチェックを怠らないよう注意が必要です。
構造修繕のポイント
構造修繕とは、柱、床、梁(はり)、基礎、階段などの修繕を行うものです。柱や床に割れやヒビがないか、床や基礎に歪みはないか、梁がたわんでいないか、鉄骨部分にサビが付着していないかなどを定期的にチェックします。劣化が進んでいれば、速やかに修繕することで、耐震性や耐久性を高めることが可能です。
ただし、構造部分の劣化は外見だけではわからない場合もあります。気になる場合には「専門家に点検」を依頼しましょう。
設備修繕のポイント
設備修繕においては、製品を製造する機器以外の電気系統や水道、給排水設備の劣化がないかどうかをチェックします。特に食品関係の工場の場合は、水のにごりや水はけなどは重点的なチェックが必須です。
また、冷凍食品を加工する工場であれば、冷凍庫の外壁に割れやヒビがないかのチェックも忘れてはなりません。割れやヒビが大きくなれば冷気がもれてしまい、冷凍食品が解けて腐ってしまうリスクもあります。
工場建物の寿命の見極め
メンテナンスや修繕を繰り返し、工場の延命を図ったとしても、いずれ寿命が訪れるのは避けられません。寿命が来てしまった場合には、具体的に二つのパターンが考えられます。
減価償却が終了した時点
減価償却期間が終了してしまうと、減価償却を活用した節税ができなくなるため寿命と考えてもよいでしょう。ただし、老朽化した設備の復旧を行った場合や20万円以内の修繕費などは損金算入が認められ節税につながります。そのため、多少の修繕でその後も活用できるのであれば、継続して利用するのも一つの方法です。
物理的耐用年数を超えてしまった時点
老朽化が進みすぎてしまうと、建て直しもしくは多額のコストがかかる大規模修繕を行わなくてはなりません。その段階で利益とコストのバランスを考え、建て直しや大規模修繕が難しいのであれば、寿命と考えざるをえないでしょう。
寿命が訪れまたは減価償却期間が過ぎた工場の活用方法
残念ながら工場が寿命を迎えてしまった場合でも、引き続き工場が必要であれば、同じ場所もしくは別の場所に新たに建て直さなければなりません。では、寿命を迎えた工場はどうすればよいのでしょうか。
・売却
・貸出
・別の目的での再利用
工場としての建築基準は満たしていなくても、別形態での利用であれば修繕によって使える可能性もあります。例えば、次のような活用方法が考えられるでしょう。
売却
売却の方法は、「工場自体を売却する」もしくは「工場は解体して土地として売却する」の二つです。工場自体を売却するほうが解体費用はかからず、維持管理にかかるコストもなくなるというメリットがあります。ただし、基本的に老朽化した工場の売却は難しく、売れない場合はコストをかけてでも解体し、土地として売却する方法を選択せざるをえないでしょう。
貸出
工場を売却、解体せずに貸出をする方法もあります。ただし、貸出をした後の基本的な修繕は貸主の負担です。また、電気水道などのライフライン管理も必要となる場合があるため、賃貸料によっては利益がほとんど出ない場合もあります。
別目的での再利用
他者に売却、貸出をするのではなく、自分たちで工場以外の使用目的を持って利用する方法です。自社製品を販売するショップにする、製品の展示場にするなどのほか、カフェやスポーツ施設、娯楽施設などまったく異なる業態での利用も考えられます。
工場建物の寿命調査は専門性の高い業者への依頼がおすすめ
製造業を営む企業にとって、工場は利益を生み出す重要な拠点となるものです。だからこそ定期的な確認や修繕を行い、寿命を延ばしつつ生産性を高めていくことが欠かせません。
しかし、工場の劣化状況はヒビや割れ、ゆがみなど目で見てわかるものばかりではありません。通常では見えない箇所で劣化が始まっているかもしれません。そこで重要となるのが、工場の寿命調査です。
三陽建設では、豊富な経験や実績を基に「点検パック」という無料点検を実施しています。点検パックで普段目につかない場所も点検をおこない、自社の工場の寿命を調査してみましょう。工場の寿命が気になる方はぜひ、お気軽にご相談ください。
※エリアや状況によっては対応できない場合があります。
工場の改修・リニューアルをご検討の方は「三陽建設のリニューアル・リノベーション」をご覧ください。