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HACCPに基づいた食品の温度管理の方法とその重要ポイントとは

更新日 : 2023/10/04
HACCPに基づいた食品の温度管理の方法とその重要ポイントとは

食品の衛生管理において、温度管理は欠かすことのできない重要な管理項目です。従来から温度管理は重要なものとされていましたが、新たな衛生管理手法HACCPが義務化されたことで、温度管理の方法や手順はどのように変化するのでしょうか。そこで本記事では、HACCPに沿った温度管理の重要性や、温度管理基準を決めるうえで重要なポイントなどについて紹介します。

食品の安全には温度管理が重要

食品は人の健康を維持するために必要なものですが、状態によっては人の健康を脅かすこともあります。

こうした食品による健康被害で多いのが、食中毒です。
食べた食品が原因となって食中毒を引き起こし、体調を崩してしまうケースは年間700~1,400件報告されています。食中毒の発生原因のなかで、36%の割合を締めているのが細菌です。

細菌による食中毒を防ぐためには、以下の「食品衛生の3原則」が重要とされています。

  •  細菌を食べ物に「付けない」
  •  食べ物に付着した細菌を「増やさない」
  •  食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」

この「食品衛生の3原則」を順守するうえで重要となるのが、温度管理です。

「細菌を増やさない」ための有効な手段として、冷蔵や冷凍など低温での管理が欠かせません。

また、加熱は食品の調理において食品をおいしく料理するというだけでなく、加熱殺菌で食の安全性を高めるという意味もあります。

このように、低温保存や加熱といった温度管理を行うことが、食品衛生においては重要です。

HACCP導入で温度管理の方法が変わる?

HACCPは食品の衛生管理を考えるうえで切り離せないものです。

HACCPは、食品衛生管理の国際基準として国内にも導入され、原則として義務化されています。食品の製造や加工、流通までを通して、すべてのプロセスにおける危害要因を取り除くことによって、衛生管理をシステム化するための管理手法です。

HACCPを導入することで、食品の衛生管理はどのように変化するのでしょうか。重要なポイントをまとめます。

温度管理の内容は変わらず行う

まず、注意しておきたいのは、HACCPを導入しても、温度管理についての実施内容は変わらないということです。

HACCPは、温度管理についての温度や時間について具体的な基準を定めたものではありません。温度管理を含めた衛生管理を確実に行うための体制や、実際にルールを整える手法をまとめたものです。

しかし、HACCPが温度管理の基準について一切関係ないわけではありません。HACCPには、温度管理の方法や回数などについての決定や見直しの作業も含まれています。

HACCPの手順に基づく温度管理方法の決定

HACCPでは、温度管理を含めた衛生管理をどのように実施していくか決定する手順についても定めています。

この手順はHACCPの7原則12手順として構成されています。

HACCPの7原則12手順について、詳しくは「HACCP(ハサップ)とは-義務化された新しい衛生管理手法の意味と導入手順を解説」をご覧ください。

この7原則12手順のうち、どのように温度管理を行うかの決定に関しては以下の部分が該当します。

  • 手順6(原則1):危害要因分析の実施(ハザード)
  • 手順7(原則2):重要管理点(CCP:Critical Control Point)の決定
  • 手順8(原則3):管理基準(CL:Critical limit)の設定

手順6では、食品衛生に危害を及ぼすことが考えられる危害要因をピックアップします。温度管理に関して言えば、細菌やウイルスの付着や増殖が危害要因となります。

手順7は、冷却や加熱殺菌といった、危害要因を除去するための重要管理点を指定する手順です。

手順8では、冷却や加熱といった重要管理点について具体的な時間や温度などを決めていきます。

なお、このあとに続く手順9から12までは、管理基準が守られているかを確認する方法や、守られていない場合の措置について定める手順となっています。また、全体のプラン検証、記録と保存方法などについても決められています。

このように、HACCPに沿って温度管理の基準や確認方法を定めていくことで、確実な衛生管理が実施できる体制を整えていくことが可能です。

HACCPに沿った温度管理基準を決めるためのポイント

では、具体的な温度管理の基準を決めるためにはどのような方法があるでしょうか。

管理を行ううえで適切な温度は食品ごとに異なり、それぞれに適した管理基準を定めなければなりません。

HACCPに沿って温度管理基準を決めていく際に重要となるポイントをご紹介します。

4つの工程に分けて考える

まずは、食品の温度管理が必要となる工程を次の4つに分けて考えていくと、分かりやすくなります。

  • 搬入・保管
  • 調理
  • 一時保管
  • 出荷・配送

これらの4工程において、それぞれの温度管理基準を定めていきます。

例えば、豚肉を使う料理であれば、豚肉を搬入・保管するときに温度チェックをすることを定め、その際の温度基準は何℃か、といったように細分化して決めていきます。

メニューを3つの分類で考える

また、食品を調理する際の温度帯に注目して、メニューを3つのグループに分類して考えます。

  • 第1グループ:冷たいまま提供するメニュー
  • 第2グループ:加熱して温かいまま提供するメニュー
  • 第3グループ:加熱後に冷却し冷たいまま、または再加熱して提供するメニュー

この3分類についてそれぞれのチェック方法を決めます。

例えば、第1グループでは加熱工程がないため、細菌を「付けない」「増やさない」ことが重要です。そのため、低温で保管する必要があります。また、第2グループは加熱工程があるため細菌を「やっつける」ことができますが、十分な加熱が必要です。

このように、グループごとに分けて考えることで、それぞれの工程における管理基準を決めやすくなります。

10~60℃は危険温度帯

食品ごとに適切な保管温度は異なりますが、共通して言えるのは10~60℃の環境に長時間置かないことが重要という点です。

食中毒菌の発育至適温度帯は約20~50℃とされ、食品の管理に関して10~60℃は細菌の増殖しやすい危険温度帯とされています。

具体的な保存温度の目安は「大量調理施設衛生管理マニュアル」に示されているので参考にできます。

また、厚生労働省の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」は、業種ごとに用意されているHACCP導入の手引書です。こちらにも、それぞれの業種に合わせた温度管理基準の例が載っている場合がありますので、確認するとよいでしょう。

HACCP導入により温度管理の方法・手順を明確にできる

食品の衛生管理において、温度管理は非常に重要な項目です。温度管理を怠ってしまうと、食品の健康被害リスクが高まってしまいます。そのため、適切な温度管理を確実に行っていくことは、食の安全に欠かすことができません。HACCPに沿って温度管理の方法を決めていくことで、温度管理の方法を明確にすることができ、定型化された手順に沿って適切な管理を行うことができます。

また、食品の衛生管理において、温度管理も非常に大切ですがそれに適した施設も必要です。

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