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医薬品工場建設における計画の流れを解説

更新日 : 2023/12/26
医薬品工場建設における計画の流れを解説

工場の建設はどの企業においても大きなプロジェクトです。中でも医薬品工場の場合、危険物を扱うことや、生産ラインの停止が人命に直接影響することからも綿密な計画の策定が求められます。

本記事では医薬品工場の建設における契約の流れについて、6つのステップに分け、それぞれの重要性や各プロセスの重要ポイントや注意点にも言及します。

医薬品工場の建設をこれから検討されている方や、具体的な計画の策定にあたって課題を抱えている方はぜひご一読ください。

ステップ1:事業計画を立てる

まず重要なのは事業計画の立案です。一般に工場を建てる際に何の事業計画もなくプロジェクトが進むことはありません。

しかし、事業計画の構想が不十分であると、実際に稼働後に生産能力が不足していたり、物流の面で課題を抱えることになったりと、いった結果に陥る可能性があります。大きな投資である工場の建設のリターンを最大化するためにも、事業構想の要件定義が重要です。

  • どのような商品を生産するのか
  • どの程度の生産能力を有するのか
  • どのような立地に建設するのか

上記のような要件を、自社の中長期的な経営計画ともすり合わせながら明確にしていきます。多額のリソースを要する工場設立の計画は具体的かつ綿密な事業計画を立てることが望ましいでしょう。

ステップ2:コンセプトを策定する

立案した事業計画を元に、工場のコンセプトの策定を行います。コンセプトは事業計画を実際に建設する工場の細部にまで落とし込む上で非常に重要です。

コンセプトの中でも特に重要なポイントについて解説を加えます。

医薬品工場に求められるGMP規定

GMP(Good Manufacturing Practice)規定とは、厚生労働省が定める医薬品製造のための要件をまとめた既定のことを指します。GMPは国内のみならず、国際的に用いられる世界標準の考え方です。

人々の健康や時には人命にも直結する医薬品の製造においては、非常に高い水準での業務管理が求められます。その実現のため、各種の標準手順書の作成、設備の点検・清掃の実施、製造管理・品質管理といった項目において規定が細かく定められています。

GMP規定は詳細に定められていますが、「三原則」としては以下の原理原則に基づいて制定されています。

  1. 人為的な誤りを最小限にすること
  2. 汚染及び品質低下を防止すること
  3. 高い品質を保証するシステムを設計すること

GMPの三原則や詳しい情報は「GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説」もご参考ください。

医薬品工場のBCP対策は特に重要

医薬品工場の建設においてはBCP対策に関するコンセプトの策定も非常に重要です。BCP対策とは、地震などの大規模災害時において被害を最小限に抑え、事業を継続させるための対策のことを指します。

医薬品工場は被災時、原材料となる薬品や化学物質の飛散が時に大きな被害をもたらしかねません。また、製造ラインがストップし医薬品が供給できないことは、広く人々の健康・人命に影響する恐れもあります。

以下のような考え方の元に、有事の際の対策を考えることが重要です。

  1. 事業の中で自社の収益だけでなく社会的な視点からも重要な業務を策定する
  2. 災害時のリスクを洗い出す
  3. 有事の際にも重要な業務だけでも速やかに再開できるよう具体的な対策を講じる

工場のBCP対策については「工場・製造業でのBCP対策の進め方と押さえておきたいポイント」もご参考ください。

ステップ3:法規制を確認する

医薬品工場の設立には様々な法規制が絡んできます。医薬品関連についての法規制だけでなく、工場という施設そのものも様々な法規制を受けるためです。重要なポイントを見ていきましょう。

医薬品医療機器等法(薬機法)

医薬品工場の設立において最も重要な法規制の一つが医薬品医療機器等法(以下薬機法)です。

薬機法は以下の目的の元に制定されています。

「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医療品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ること」

引用:薬機法第1条|医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

医薬品工場においては以下の章に記載された文章が特に重要です。

  • 第四章  第四章 医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売業及び製造業
  • 第五章 医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業及び製造業等
  • 第六章 再生医療等製品の製造販売業及び製造業

周辺の関連法規制

工場は建物として建築基準法による建築の制約を受けます。具体的にどの程度の制約を受けるかは立地によっても異なるため、建設予定地の条件を確認することをおすすめします。

また、建物は防災の観点から消防法により建物の構造や防火施設などの規制も受けます。その際、可燃性の物質や危険物などを扱う工場の場合は通常の工場と比較して強い規制を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

ステップ4:プロセスフローを作成する

工場のコンセプトや法規制について確認した後、生産品目・生産量・物流計画といった具体的な生産のプロセスフローを作成します。プロセスフローの考え方は原薬工場と製剤工場では異なる考え方を用いることをおすすめするため、それぞれ見ていきましょう。

原薬工場のプロセスフロー

原薬工場においてはプロセスフローダイアグラム(以下PFD)を用いたプロセスフローの作成が合理的です。

PFDとはプロセスや成果物、フローをシンプルな図で表記することで全体のフローを図解する方法。直感的に理解しやすいだけでなく、課題点の抽出にも活用できます。

PFDは製造業に限らず広くプロセス改善に用いられる考え方です。原料から製品まで化学的な変化を記載するといった応用により、医薬品工場、特に原薬工場におけるプロセスフローの作成と親和性が高い方法と言えるでしょう。

製剤工場のプロセスフロー

製剤工場ではマテリアルフローダイアグラム(以下MFD)でのプロセスフローの作成がおすすめです。

MFDとは製品の生産における各プロセスにおけるマテリアルおよびエネルギーの流れを図で示す手法。各工程に必要なエネルギーや排出される廃棄物などを把握しやすいため、医薬品業界において完成品を作成する製剤工場でのプロセスフロー作成と親和性が高いです。

ステップ5:工場のレイアウトを作成する

プロセスフローに沿って工場のレイアウトを設計します。特に重要なのは動線の考慮とエリアの分割です。

人員や物流の動線の考慮

動線の確保にあたっては従業員の作業の効率や、物資の搬入・搬出を含めた物流の効率を配慮して設計することが重要です。更衣室や休憩室・食堂といった生産に付随する作業員のためのスペースや機械室・事務室といった生産と離れた工場の運営のための機能を全体の効率を考慮しながら設計を行います。

清浄度区分によるエリアの分割

医薬品工場においては極めて厳格な管理を要する製品を製造するため、清浄度によるエリアの分割も重要です。製造や梱包の現場においてはビニールカーテン等を用い、特に高いレベルの清浄度を常に保ち続ける必要があります。スペースの区切りや入退室の制限といった形で厳密に管理できる設計を行いましょう。

ステップ6:コスト・スケジュールを検討する

計画を具体的なレイアウト図にまで落とし込めたら、改めて建設のコストやスケジュールについて検討します。

洗浄度区分のレベルが高いエリアについては通常のエリアよりもコストが高額になりがちです。類似の事例も参考にしながら、適切なコストでの予算取りを行うことが重要です。

建設のスケジュールについても自社の事業全体を考慮しながら各プロセスを細かい区分で策定するのが望ましいと言えるでしょう、

まとめ

医薬品工場の設計・建設の流れやプロセスごとの重要なポイントについて解説しました。医薬品工場は以下の観点から、通常の工場と比較してもより慎重な設計、計画が求められます。

  • 製造ラインがストップすることの社会的なリスクの高さ
  • 災害時の被害拡大の可能性
  • 原材料及び製品の厳格な管理の必要性

自社の収益性の観点からも綿密な事業計画の元に建設を計画することが非常に重要です。本記事で解説した内容も参考にしながら、計画の策定を実施してみてください。

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