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医薬品のGDP(適正流通)ガイドラインと温度管理の注意点

更新日 : 2024/04/16
医薬品のGDP(適正流通)ガイドラインと温度管理の注意点

医薬品の品質と安全性を保証するためには、生産から患者に届けられるまでの全過程において、適切な取り扱いが求められます。製造工程で細心の注意を要するのは当然のこととして、保管・輸送などの流通過程においても周辺環境の変化が品質に影響を及ぼさないよう、高い水準での管理が要求されるのです。

この記事では、医薬品の流通に関して、求められる国際的基準であるGDP(Good Distribution Practice:適正流通基準)ガイドラインの概要を解説した上で温度管理の重要性や具体的な対策手法や注意すべき点についても紹介します。

医薬品工場での品質管理に非常に重要な内容なので、ぜひご一読ください。

医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインとは?

GDPガイドラインは、医薬品が品質を維持した状態で流通することを確保するための国際的な基準です。このガイドラインには、受領、保管、輸送、配送を含む一連の流通過程での品質管理体系の要件が要求されています。医薬品工場においては、GDPガイドラインを遵守することが法規制の遵守はもちろん、製品の品質と患者の安全を守る上で不可欠です。

GDPとGMPの違いは?

GDPと混合されがちな概念としてGMP(Good Manufacturing Practice:適正製造基準)が挙げられます。それぞれの違いと、双方の役割について解説します。

GMPは医薬品の製造過程における品質管理・品質保証に関する基準です。製品の一貫性と品質の確保、製造過程における汚染の防止、製品の誤用を防ぐことを主な目的とし、原材料の選定から最終製品の検査、ラベリング、包装に至るまでのプロセスにおける管理体制に厳格な基準を設けることで、製品の質を保証します。

つまり、GMPで製造過程における品質の保証を行い、GDPで保管・流通過程における品質の保証を行うことで、最終的に患者に使用される段階に至るまでの品質が保証されるのです。

GMPとGDP、どちらを欠いても最終的な品質を保証することはできません。両者がそろってはじめて、患者に安全で有効な医薬品が提供されることを確実にするのです。

医薬品の温度管理

ここからは、医薬品の温度管理に関する基本的な情報についてご紹介します。

医薬品における温度管理の必要性

医薬品の品質を保持し、患者の安全を確保するためには、適切な温度管理が不可欠です。温度は、医薬品の化学的安定性に影響を与えることがあるため、製造から保管、輸送されて消費者に届くまでの全過程で厳密に管理する必要があります。

温度が指定された範囲を超えると、医薬品は劣化したり、有効成分が変質する恐れがあります。最悪の場合、患者に有害な影響を及ぼしかねません。そのため、医薬品の流通過程において、GDP(適正流通)ガイドラインに従い、温度管理を徹底することが求められます。

医薬品の保管に関する温度の基準

医薬品の保管において遵守すべき温度の基準は、製品によって異なりますが、一般的には以下のようなカテゴリーに分けられます:

  • 室温保管:通常、15°Cから25°Cの範囲で保管される医薬品です。多くの医薬品の保管に適しているとされている温度範囲です。
  • 冷蔵保管:2°Cから8°Cの範囲で保管する必要がある医薬品です。ワクチンや一部の生物製剤など、温度に敏感な製品がこのカテゴリーに含まれます。
  • 冷凍保管:-15°C以下で保管される医薬品です。長期保存を必要とする製品や特定の生物製剤がこの条件下で保管されます。

温度管理のための実践的な手法

これらの基準を守るためには、適切な設備やシステムの導入に加え、温度が基準を逸脱した場合の迅速な対応が求められます。

GDPを満たす高い水準で温度管理を実践するための具体的な手法について解説します。

  • 適切な保管設備の確保: 医薬品によって要求される保管条件が異なるため、それぞれの条件を満たすための設備が必要です。保管庫内の温度を一定に保ち、かつ庫内の温度差が出ないことも求められます。
  • 温度モニタリングシステムの導入:万が一の温度変動があった場合に迅速に対応できるよう、 温度をリアルタイムで監視し記録することも重要です。
  • 輸送中の温度管理: 輸送プロセスも温度管理の重要な部分です。適切な包装材料の選定や、温度制御が可能な輸送手段の利用が求められます。
  • 従業員の教育: 従業員がGDPガイドラインと温度管理の重要性を理解し、適切な手順を実行できるよう、教育・研修することも重要です。

医薬品の保管・温度管理における注意点

医薬品の保管から輸送までの温度管理は、品質保持と効果の維持に直結する重要なプロセスです。GDPガイドラインを遵守するための流通過程での注意点について解説します。

保管庫内の温度ムラに注意する

医薬品を保管する際、保管庫内の一定の温度を保持することが求められますが、保管庫内に温度ムラが発生しやすいことには特に注意が必要です。

保管庫にはドア付近や冷却装置の近くなど、温度が不均一になりやすい場所が存在します。温度ムラを防ぐためには、定期的に温度を測定し、保管庫内の温度分布を把握することが重要です。また、保管庫の配置を適切に調整し、冷気が循環しやすい環境を作ることが求められます。

輸送時の対応に細心の注意を払う

医薬品の輸送時には、温度管理が非常に重要です。輸送時は保管時と比較して一定の条件を保ち続けることが難しくなります。特に、長距離や異なる気候区間を移動する場合、外部の温度変化に対して医薬品を保護するための対策が必要です。具体的には断熱材料を使用したパッケージングや、温度を一定に保つための冷却パックの利用などが挙げられます。

また、GPSや温度センサーを使用して、リアルタイムで温度を監視し、問題が発生した際に迅速に対応できる体制を整えることが望まれます。

必要に応じた輸送のテストを行う

特定の医薬品の輸送プロセスを計画する際には、事前に輸送のテストを行うことが推奨されます。テストを実施することにより実際の輸送条件下で医薬品がどのような影響を受けるかを評価し、必要な保護措置を講じやすくなるためです。テストでは、温度変化のみならず、振動や衝撃が医薬品に与える影響も測定するとより効果的といえるでしょう。

湿度管理・光線管理にも気を配る

温度管理と同様に、湿度管理と光線管理も医薬品の品質保持には不可欠です。高い湿度は医薬品の化学的安定性を損なう可能性があり、直接日光や強い光線は特定の薬剤に対して有害な影響を及ぼすことがあります。

医薬品の温度管理に関するよくある質問

GDPとGMPの違いは何ですか?

GDPは、医薬品の輸送・保管における適正流通基準のことです。 GMPは医薬品や医薬部外品の製造管理、品質管理の基準に関する省令です。

GMPについては「GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説」でご紹介しています。

まとめ

医薬品の流通過程における品質管理、GDPの概要および具体的な手法、注意点について解説しました。

極めて高い品質の安定性を求められる医薬品においては製造だけでなく流通過程でも細心の注意のもとに品質管理が必要です。適切な設備で保管し、その状態は常時監視。輸送時においては温度変化だけでなくその他の環境の変化も起こりやすいため、特に注意が必要です。これらのプロセスの管理を適正に実行するため、従業員への教育も欠かせないものとなるでしょう。

本記事で解説した内容を参考に、具体的な対策を講じてみてください。

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