コラム

column

工場

HACCP法制化に伴う工場建築基準は?7原則に沿って詳しく解説

更新日 : 2024/06/21
HACCP法制化に伴う工場建築基準は?7原則に沿って詳しく解説

改正食品衛生法によって、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに対応することが義務付けられました。HACCPに対応するためには、HACCP基準に沿った工場を建設することが重要です。

そこで本記事ではHACCPの7原則に沿った工場建築の基準を解説します。
HACCP対応の食品工場を建設するときの注意点についても解説しますので、食品工場の担当者様は参考になさってください。

HACCPとは

HACCPは、食品の製造・加工、調理、販売などについて、事業者がとるべき衛生管理の手法として制度化されたものです。

HACCPの制度化は、食品製造過程における衛生管理を徹底することで食の安全を維持することを目的としています。

HACCPの基本的な考え方や詳しい内容については、「HACCP(ハサップ)とは-義務化された新しい衛生管理手法の意味と導入手順を解説」をご覧ください。

HACCP義務化の概要

HACCPとはどういったものなのか、その概要から見ていきましょう。

HACCPが必要になった理由

食品流通の発達や食品に対する安全意識の変化から、食に対する考え方も変わってきました。これと同時に、食中毒事故や食品への異物混入、食品による健康被害など、食の安全を脅かす事柄が以前にも増して問題視される社会になってきています。

そうした社会の変化に対し、食品の製造加工現場における衛生管理手法から基準を見直すことが求められるようになりました。

このような背景から食品衛生法が改正され、新たな衛生管理手法として盛り込まれたのが、すでにグローバルスタンダードとして導入が進んでいるHACCPです。

改正食品衛生法では、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに基づいた衛生管理を行うこととされています。

また、より高いレベルでのHACCPを実施している企業に対しての認証制度も注目されるようになってきました。

HACCP認証については、「HACCP認証の取得に必要な準備とは_認証のメリットや注意点など」をご覧ください。

HACCP義務化はいつから?対象者についても解説

すべての工場事業者を対象に、原則令和2020年6月1日からHACCPによる衛生管理の義務化が開始されています。
施行から1年間は猶予期間が設けられていますが、2021年6月からHACCP導入・運用が完全義務化となりました。

HACCP法制化に伴う工場建築基準は?7原則に沿って解説

1993年にFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)により、HACCP導入のガイドライン(7原則12手順)が示されました。HACCPに対応した工場建設を行う際には、まずこのガイドラインの内容を把握することが大切です。

12手順のうち手順1~5では次のような行動を定めています。

  • 手順1:HACCPチームの編成
  • 手順2:製品説明書の作成
  • 手順3:意図する用途及び対象となる消費者の確認
  • 手順4:製造工程一覧図の作成
  • 手順5:製造工程一覧図の現場確認

これらの手順は、あとに続く7原則を実施するための準備として設定されています。このあとに実施する手順6~12が、HACCP導入における7つの原則です。

  • 手順6(原則1):危害要因分析の実施(ハザード)
  • 手順7(原則2):重要管理点(CCP:Critical Control Point)の決定
  • 手順8(原則3):管理基準(CL:Critical limit)の設定
  • 手順9(原則4):モニタリング方法の設定
  • 手順10(原則5):改善措置の設定
  • 手順11(原則6):検証方法の設定
  • 手順12(原則7):記録と保存方法の設定

これからの食品製造現場は、この7原則に沿っていることが求められます。そのため、食品製造を行う工場を新たに建設する場合には、7原則を意識した設計・施工を行う必要性が高いと言えます。

HACCPに基づいた衛生管理を実施するのに適した工場を建設する際には、どのような点がポイントになるのでしょうか。7原則から考えてみましょう。

原則1:危害要因分析の実施(ハザード)

原則1は、製造工程に潜む危害要因を列挙する手順です。

ここで想定される危害要因とは、工場の周辺環境で考えると、害虫・害獣の発生、塵埃や煙の発生、汚水や異臭などが含まれます。

工場内で危害要因となるものを考えると、有害な微生物や硬質異物の混入などが挙げられます。こういった危害要因をあらかじめ限りなく排除しておくためには、工場の立地と内部の動線設計が重要となります。

危害要因が発生しにくい周辺環境と、内部への侵入を防止する動線の設計を考えることで、より高いレベルでのHACCP実施が可能になります。

製造工程で重要となる工場の建設については「工場建設の流れと重要ポイントとは? 関連する法律や補助金について解説」をご覧ください。

原則2:重要管理点(CCP:Critical Control Point)の決定

原則2では、危害要因を除去するための重要な工程を重要管理点として定めます。

加熱殺菌や冷却などの熱加工工程、劣化を防ぐ処理の工程、金属探知によって異物混入を防ぐ工程などが該当します。

これらの重要管理点には、比較的サイズの大きな設備や多大な電力を要する設備が用いられることも少なくありません。工場の設計時点から入念な設備設置のシミュレーションをしておくことが重要です。

工場の生産性を高めながら効率的な管理をするためのレイアウトに関しては、「工場の生産性を高めるレイアウトの種類とは?4つのレイアウトのポイントを解説」をご覧ください。

原則3:管理基準(CL:Critical limit)の設定

重要管理点での管理基準を具体的に決定します。加熱殺菌を行う時間、金属探知機通過時の温度や水分量などを具体的な数値として定めます。

室温の管理も重要なため、空調や排気の設計がポイントとなります。厳格な温度管理が必要な場合は、熱流体解析による空調設計も必要です。

HACCP対応の工場建設を考えるということは、この基準を達成するための設計・施工を行うということでもあります。

原則4:モニタリング方法の設定

原則3での管理基準を確実に達成されているかを確認するため、モニタリング方法を定めるのが原則4での手順です。

IoTを活用した集中管理が可能な部分と、実際の作業場所で確認しなければならない部分とがあります。こういった環境を整えるためには、集中管理のための部屋と、そこまでのネットワーク構築が必要です。

実際の作業場所での確認では、作業場所を巡回するための動線において異物や害虫、汚染物質などの侵入がないようルートを決定しなければなりません。

巡回のための動線においても、工場建設時から効率的・効果的な造りになっているとHACCP順守が徹底されやすい環境を構築できます。

原則5:改善措置の設定

原則5では、管理基準を逸脱した部分に対する改善措置を決定します。これには、工場の建物や設備に関しての改修も含まれます。

確実に外界から危害要因となる異物や害虫、汚染物質などの侵入がない構造を実現するためには、工場の建物に対し改修を加えることも選択肢に入ります。

このとき、すでに稼働している工場では改修工事によってこれまでの衛生管理を徹底できなくなり、新たな危害要因を生むリスクもあります。

工場建設時には、あとあと改修を行うことも考え、信頼できる業者を選ぶことが重要です。生産品や生産工程に理解があり、生産状況も考慮した改修工事の施工方法を相談できるような業者だと、安心して任せられるでしょう。

原則6:検証方法の設定

これまでの原則実施手順が正常に機能し、HACCPに基づいた衛生管理が有効に実施されているかを検証する方法を決めるのが原則6の手順です。

どのような検証方法が最適で、今後も継続的にHACCPを順守できるのかを考えます。

原則7:記録と保存方法の設定

実施している衛生管理や変化点に関して、管理状況を記録・保存する方法を決定します。

保存した記録はHACCPを実施している証明となるだけでなく、問題発生時の原因追求を可能にします。すなわちトレーサビリティの確保につながるのです。衛生管理に影響を及ぼす可能性のある変化点としては、工場の建物や設備に関する改修や加工の記録も含まれます。

工場の建設、または改修を依頼する段階において、HACCPに関しての知識があり、施工内容に関して確実な記録を提出してくれる業者を選定することが重要です。

HACCP対応の食品工場を建設するときの注意点

HACCPに対応した工場建築の基準の注意点を解説します。
環境・間取り設計・設備の3つの視点から考えると、把握が比較的容易です。
次の項目からは、HACCPに対応した工場建築の基準の注意点を具体的に解説します。

工場の環境

  • 周辺に塵埃や煙の発生がある環境ではないか
  • 害虫・害獣の発生が多い環境ではないか
  • 虫の発生しやすい植物が繁茂する環境ではないか
  • 水がたまりやすい立地・排水の問題がある環境ではないか

工場の間取り設計

  • 外部からの危害要因侵入を遮断するためのゾーニングができる間取り設計か
  • 安全で効率的な、作業者の動線を考えた間取り設計か
  • 作業場から直接トイレに出入りできないようになっているか
  • 将来的なレイアウト変更にも対応できる間取り設計か

工場の設備

  • 清掃しやすい床や天井、壁の素材が用いられているか
  • 制御盤や配電盤などの設備はほこりのたまりにくい構造になっているか
  • 空調設計が悪く、風によってほこりが巻き上げられたり、温度管理が困難になっていたりしないか
  • スムーズな排水が可能になっているか
  • 手で触れなくても開閉できる自動ドアが使われているか
  • 手洗い設備は手で触れない自動水栓や足踏み式になっているか

こういったポイントに注意して工場の建物や設備の設計と施工を行うことで、HACCPの高い基準を満たした工場を建設することが可能になります。

HACCP対応の工場建設においては危害要因の排除が重要

HACCPに対応した工場の実現には、HACCPの7原則にのっとり、あらかじめ考えられる危害要因を限りなく排除する仕組みを整えておくことが重要です。そのためには、工場の環境と間取り設計、設備の3つの視点から考えてみると分かりやすいでしょう。

また、HACCPへの対応を確実に行うには、HACCPについての知識と理解があり、信頼できる業者に工場の建設を依頼するのがおすすめです。

三陽建設はHACCPに対応した衛生管理施設やクリーンルーム、工場の施工実績が豊富で、高い品質や技術力を提供しています。HACCPへの取り組みをより強化したいとお考えの際には、ぜひ三陽建設にご相談ください。

工場の新規建設をご検討の方は「三陽建設の新規建築」をご覧ください。

創業100年を越える実績と信頼

高度な技術と幅広い対応力で様々なご要望にお応えします。

三陽建設の強みはこちら