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食品工場のカビ対策とは?カビの発生原因を知って対策しよう
更新日 : 2024/08/21食品工場は最終的に消費者の口に入る製品を製造するため、製造環境を適正に保つことは極めて重要です。食品工場の中で断固として発生を防ぐべき事案の一つが、カビの発生。カビは食品工場にとって時に企業の存続が危ぶまれるような事態を引き起こすのです。
本記事では、食品工場のカビ対策について、カビの発生要因を複数解説した上で、具体的な対策や導入手順について解説します。
カビ対策に課題を抱える食品工場のご担当者様はぜひご一読ください。
食品工場にカビが発生する原因
食品工場でのカビの発生は、製品の品質低下、廃棄率の増加、さらには健康リスクの増大を引き起こす可能性があります。カビの成長を防ぐためには、その原因を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
まずは主要な発生原因とその防止策について解説します。
湿気
カビの成長には湿度が大きく影響します。特に、相対湿度が70%以上の環境はカビの成長を促進してしまいます。
工場内の湿度管理は、空調設備の最適化、排水系統の整備、湿度を吸収する材料の使用などにより行うことが可能です。定期的な湿度測定と環境調整が重要と言えるでしょう。
温度
カビは特定の温度範囲で活発に成長します。具体的には多くのカビは20〜30℃の温度で最もよく成長するため、工場内の温度管理が必要です。
冷却設備の効果的な使用や夏期の温度上昇に対する対策が求められます。
栄養源の存在
カビは糖や脂質、タンパク質といった栄養源を必要とします。そのため、食品工場などでは食品残渣が工場内に残ることが、カビの栄養源となり得ます。
生産ラインの徹底的な清掃と食品材料の適切な保管がカビの繁殖を防ぐポイントです。
清掃・衛生管理の不備
清掃や衛生管理が不十分であると、カビの繁殖の原因となります。特に、機械の隙間や見えにくい場所での清掃漏れが問題になることがあります。
定期的な深部清掃と清掃プロセスの見直しが必要です。
梱包の問題
不適切な梱包材料や方法は、製品が湿気や他の汚染源と接触する原因となります。密封性の高い梱包材の選定や、梱包プロセスの厳格な管理が重要です。
交差汚染
生産ライン上での異なる原料や製品間での交差汚染も、カビの発生源となりえます。原料の取り扱いと流通ルートの明確化、設備間の適切な隔離が求められます。
食品工場において発生するカビが及ぼす悪影響
食品工場におけるカビの発生は、単に不快なものではなく、製品品質、安全性、企業の評価にまで広範な影響を及ぼします。カビの発生が及ぼす具体的な悪影響について詳しく見ていきましょう。
製品廃棄リスク
カビが発生した製品は、消費者の健康を害する可能性があるため、市場に出すことができません。少しでもカビが発生してしまった場合、同時期に同設備で作られた大量の製品を廃棄せざるをえないリスクがあります。製品の廃棄は直接的な損失であり、生産コストの無駄につながります。
安全性のリスク
カビはアレルギー反応や食中毒の原因となることがあります。特にアスペルギルスやペニシリウムなど、毒素を産生するカビは、消費者の健康に重大なリスクを与えることがあります。健康被害は訴訟リスクや膨大な損害賠償リスクを抱えかねない事態であり、確実に防ぐべき問題です。
企業の信頼喪失
カビによる製品の汚染が公になれば、消費者の信頼を大きく損なうことになります。一度失われた信頼を取り戻すのは非常に困難であり、長期的に企業のブランド価値に悪影響を及ぼすことがあります。
従業員の健康への影響
カビは従業員の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。例えば、呼吸器系の問題や皮膚炎を引き起こすことがあります。作業環境の悪化は従業員の生産性やモチベーションが低下することにも繋がります。健康問題が多発すると、工場の稼働そのものが難しくなる可能性もあるのです。
法令による罰則
食品安全規制に違反した場合、企業は罰金や営業停止などの法的制裁を受ける可能性があります。これにより、一時的または恒久的に事業が停止されることもあり、企業の存続自体が危ぶまれる事態にも発展しかねません。
食品工場で実践したいカビ対策
食品工場でのカビ対策は、上記のリスクを回避し、製品の品質保持と安全性の確保に不可欠です。効果的なカビ対策のための具体的な実践方法を紹介します。
温度・湿度の管理
カビの成長には特定の温度と湿度が必要です。そのため、適切な温度・湿度を保つことでカビの発生を抑えられます。具体的には、工場内の温度を20℃以下、湿度を50%未満に保つことが推奨されます。この水準を常に保つためには、高精度の温湿度計を設置し、定期的に監視することが重要です。
換気
良好な換気システムは、湿度のコントロールと空気中のカビ胞子の減少に役立ちます。工場内に新鮮な空気を取り入れ、湿気がこもらないようにするために、適切な換気扇の使用と定期的なメンテナンスが必要です。
清掃・消毒
定期的な清掃と消毒は、カビの発生源を取り除く最も効果的な方法の一つです。特に、機械の隙間や難しい箇所の清掃に注意を払い、消毒剤を使用してカビの繁殖を防ぎます。
食品工場の清掃については「食品工場の清掃を安全かつ効率的に実施するポイント」もご参考ください。
水漏れ・結露の防止
水漏れや結露はカビの主要な原因の一つです。配管系統の定期的な点検を行い、水漏れが発見された場合は迅速に対応します。また、結露を防ぐための断熱材の利用も有効です。
食品工場の結露対策については「工場・倉庫の冷凍冷蔵庫の結露対策方法を解説」もご参考ください。
原材料の適切な管理
原材料を適切に管理することで、カビの発生を抑えることができます。原材料は乾燥した清潔な環境で保管し、使用する前に検査を行うことが重要です。
空調・排水のシステム最適化
空調と排水システムの最適化は、工場内の環境を制御する上で重要です。空調は湿度と温度の調整に役立ち、排水システムは余分な水分を効率的に排出することでカビの成長を防ぎます。
設備の設計・改修
設備の設計や改修を通じて、清掃を容易にしたり、カビが繁殖しにくい環境を作ったりできます。例えば、滑らかな表面の材料を使用したり、水が溜まりやすい部分を排除する設計を心がけることが効果的です。
カビ対策の導入手順
食品工場でカビ対策を効果的に導入するための手順は、計画的かつ段階的に実施することが重要です。具体的な手順例を説明します。
①現状の課題抽出
最初のステップは、工場内のカビ発生の現状と課題を正確に把握することです。カビが発生しやすい場所、条件、その原因を特定します。環境監視データの収集や現場従業員からのフィードバックを活用しましょう。
②具体的な解決策の検討
課題が明確になったら、それに対応する具体的な解決策を検討します。温度・湿度管理、換気の改善、清掃・消毒プロトコルの強化など、状況に応じた対策を計画します。また、技術的な解決策だけでなく、従業員のトレーニングや教育も含めることが重要です。
③法令への適合の確認
導入するカビ対策が国や地域の食品安全法規や労働安全規定に適合しているかを確認します。法令遵守は、違法な問題を避けるだけでなく、製品の安全性を保証するためにも必要です。
④試験的導入
全面的に導入する前に、選択した対策を部分的または小規模な環境で試験的に導入します。この段階で、導入した対策の効果や運用上の問題点を詳細に観察し、必要に応じて調整を行います。
⑤効果検証
試験的導入後、定量的および定性的なデータを用いて効果を検証します。カビの発生頻度の変化、従業員からのフィードバック、環境条件の改善状況などを評価します。成功が確認できた場合、対策を工場全体に展開します。
食品工場のカビ対策でよくある質問
食品工場で多く見られるカビの種類は何ですか?
食品工場で多く見られるカビの種類は、アオカビ(ペニシリウム属)、クロカビ(クラドスポリウム属)、コウジカビ(アスペルギルス属)などです。これらのカビは原材料や製品に容易に生息し、製造環境で成長することがあります。
まとめ
食品工場におけるカビの発生原因および対策方法について解説しました。食品工場では様々な要因でカビが発生し、適切な対策を講じないことは時に企業にとって回復不能な重大な損失をもたらします。
今回解説した内容も参考に、工場において現在カビが発生しているポイント、カビが発生しかねないポイントを抽出し、適切な対策を講じてみてください。
三陽建設では、食品工場でカビの発生リスクを下げるための改修工事を実施しています。
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