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工場建設の流れと重要ポイントとは? 関連する法律や補助金について解説
更新日 : 2023/10/04工場を建設するとき、どのような流れで進めていくのでしょうか。また、施工中はどのような点を確認して進めていくべきなのでしょうか。今回は、工場建設の流れや注意点、施工中の重要ポイント、 工場建設に関係する法律や補助金などをご紹介します。
Contents
工場建設の流れと各段階での注意点
工場を建設するとき、一般的には次のような流れで進みます。
社内での企画検討
新しい工場の建設では、その工場の目的と必要性について検討し、企画するところから始まります。その工場で何をどのように生産するのか、現在の工場では対応できないのか、新工場によってどれくらいの増収が見込めるのか、などをそれぞれ明確にします。また、社内においてどういったポジションにある工場とするのか、どのようなコンセプトの工場にするのかというイメージもまとめます。
設計業者・施工業者の選定
工場の企画がまとまれば、設計会社の選定を行います。続いて、施工業者の選定に進みます。業者は価格だけで選ぶのではなく、今後数十年と長い期間において工場のメンテナンスを任せられる業者を選びましょう。また、工場の建設に豊富な実績を持つ業者であれば、安心して建設を任せられるでしょう。
施工業者の選び方について詳細は、「施工会社とは?施工と設計の違い、施工会社を選ぶポイントを解説」をご覧ください。
基本計画の立案
実際に工場を建設するうえでの、具体的な計画を立てます。計画したコンセプトをどのように形にしていくのか、各種の法令に適合しているか、予資金の準備をどのように進めるかなどについても決めます。
基本設計と見積もり
基本計画によって必要な条件が揃えば、工場の基本設計に移ります。導入する機械や設備、それらの設置に必要なスペースや工程上の関連、原材料や製品の動線、保管スペースに必要な面積など、細かい部分についても決めていきます。また、必要に応じて換気装置や照明、温度管理などについても基準を定めます。それらを仕様書や概要図としてまとめます。
詳細設計と部材選定
基本設計から、より詳細な設計を起こしていきます。建物の建築設計だけでなく、機械や設備の配置、配管や配線などについても詳細設計図を作成します。これらの詳細設計図に沿って必要な部材の選定と協力企業への依頼を行います。
部材の調達と納入計画
部材を手配し、どのタイミングでどこにどれくらい納入するのかといった計画を具体的に進めます。納入計画は工事進捗に深く関わる重要なものです。綿密な納入指示だけでなく、チェックできる体制についても定めておく必要があります。
建設開始
以上の計画や設計ができれば、建設開始となります。ただし、ここがゴールではありません。これまで何もなかった場所や別の用途に使われていた場所に、新たに大きな建造物を造るため、計画外のことも起こり得るでしょう。工事の途中で生じた計画との差異を軌道修正できるよう、工程管理の仕組みを整えておくことが重要です。
工場建設の施工から操業開始までに押さえるべきポイント
次に、工場建設の施工中から操業開始までにおいて押さえておくべきポイントを見てみましょう。工場建設が開始した後、安全に計画通りの施工を進めるためには次のようなことが必要になります。
施工中の定例会議
施工中に、施工会社の現場代理人や設計士、各種の協力業者、工場内で使用する機械や設備の納入業者なども含め、定例会議が開かれるのが一般的です。この会議でスケジュールの進捗報告や修正、進捗状況に合わせた詳細な部分の打ち合わせなどを行います。打ち合わせで意思疎通のズレがないか、要件の伝達はうまくいっているかを定期的に確認し、情報共有します。
官庁検査・立会検査
施工中は官庁によるさまざまな部分の検査が行われるほか、機器や設備の納入時にも立会検査が行われることがあります。疑問が生じたら、できるだけ早く納得できるよう専門家に確認しましょう。
引き渡し前の試運転
引き渡しの前に、設備や機械の試運転を行います。問題が発生した箇所、不安が残る場所などは解消するまで調整が必要です。ここで注意するのは、引き渡しが行われるまで建物の所有権は施工会社にあるということです。建物の引き渡しが行われると、建設が完了し納得して費用を支払ったことになるため注意しましょう。契約と相違がないか、不具合の可能性がある部分はないかを確認し、納得した状態で引き渡しが行われるようにしましょう。
完成後に稼働してからがスタート
工事が完了し引き渡しが済み、工場の稼働がスタートすると関係者は一安心することでしょう。しかし、工場は建設して終了ではなく、建設完了後に稼働開始してからがスタートです。その後も施工会社とは建物のメンテナンスや改修・補修で長く付き合っていくことになります。いつでも相談できるように、良好な関係を維持していきましょう。
工場建設で重要なポイントとは
これまで紹介した工場の建設に関する流れのなかで、特に重要と言えるポイントを三つお伝えします。
基本計画を明確に
工場の建設計画の中で、基本計画が最も重要です。施工中の現場確認や定例会議で疑問点が生じた際にも、基本計画が明確であれば本来の重要な目的に立ち返って修正できます。
見積もりも基本計画をもとに
工場建設の予算は基本計画によって決まり、建設費の見積もりを決める根拠となるのも基本計画です。納入する機械の種類や大きさ、機械や工場内で使用される水量、その水量に応じた受水槽や浄化槽で見積もりが大きく変わることもあります。基本計画に沿って納入機械リストも明確にし、施工会社に渡すことで見積もりも具体化できます。
将来性と現実生産能力のバランスが大切
工場建設の計画を立てるとき、「将来的にはライン拡張したい」といった展望のために面積や設備能力を大きくしがちです。こういった将来展望には、注意が必要です。将来を見据えた計画も大切ですが、未確定な将来への投資を今の建設費用に盛り込むことは、リスクを含んだ投資となります。実現の見通しがある明確な事業計画と、いつかはこうしたいという希望は分けて考えるべきです。
このようなバランスを適切なものにするためにも、工場会社や工場設計の専門家に実際の稼働状況を見てもらうことをおすすめします。生産時の人や物の動線、増加の可能性があるラインの現状などを確認してもらうことで拡張性と上記のバランスに関する提案をもらうこともできます。
工場建設で注意しておきたいポイント
上記では工場建設の流れで特に重要と言えるポイントをご紹介いたしました。ここからは、工場建設をする上で覚えておきたい注意点をご紹介いたします。
近隣住民への影響を考慮する
工場建設は地域社会に多大な影響を与える可能性があります。騒音、振動、排気ガス、交通量の増加などが近隣住民に与える影響に注意する必要があります。適切な環境アセスメントや環境影響評価を行い、影響を最小限に抑えるための対策を取ることが大切です。また、住民とのコミュニケーションを大切にし、意見交換や協力を行うことで、信頼関係を築くことが重要です。
メンテナンスやランニングコストを考慮する
工場の建設後も重要な点は、メンテナンスやランニングコストです。適切なメンテナンスを行わないと、機械や設備の故障や効率の低下が起こる可能性があります。長期的な運営計画を立て、予算内での適切なメンテナンスを行うことで、工場の持続可能な運営が実現します。
専門知識のある設計会社を選ぶ
工場建設は複雑なプロジェクトであり、安全性や効率性を確保するためには専門知識を持った設計会社の選定が重要です。経験豊富な設計会社は、適切な設計や適材適所な機器の選定、規制遵守などを行い、工場の成功に向けたサポートを提供してくれます。
工場の建設に関連する法律をチェック
また工場建設に関係する主な法令として、次の三つがあります。この三つの法令は特に重要で、計画と整合性があるか十分にチェックしましょう。
都市計画法
工場は、街づくりの計画に沿った場所でなければ建てることができません。この街づくりの計画について定めているのが都市計画法です。都市計画法の中では、大規模な工場を建設できる場所についても定められています。市街化区域の中で建設可能な地域は工業地域、準工業地域、工業専用地域です。
建築基準法
建築物の敷地や構造、設備、用途などについて定めた法律です。工場の建設時には、建築基準法に従って審査や検査を受ける必要があります。建築基準法に抵触しないかどうか計画の段階で、専門家に相談しましょう。
工場立地法
工場の建設場所に関して、周辺の環境を保全できる適正な立地となっているかを判断するための基準や調査方法のルールを定めている法律です。
敷地面積や建築面積が一定以上の大規模な工場は、工場立地法の適用を受け敷地内に一定面積以上の緑地を設けなければなりません。
工場建設に際して受けられる補助金
工場建設に対して受けられる補助金も確認しておきましょう。利用できれば、費用削減にもつながります。
ものづくり補助金
中小企業庁がすすめる、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的として整備された補助金です。革新的なサービスや生産プロセス、試作品の開発などに対して支援が受けられます。
HACCP補助金
HACCPは食品製造についての衛生管理基準を定めたものです。このHACCPに沿った管理を行うために、施設や倉庫を建設する際に受けられる補助金がHACCP補助金です。
HACCPについては、「HACCP(ハサップ)とは-義務化された新しい衛生管理手法の意味と導入手順を解説」で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
企業立地助成制度
企業立地助成制度は地域ごとに合った経済機構を構築する目的で、企業立地に関して設けられました。各都道府県が主体となり、用地の取得や造成工事、工場の建設、機械や設備の購入などについて、要件を満たすと補助金を受けることができます。
工場建設時には信頼して任せられる施工会社の選定を
工場は建設してから何十年と稼働し、生産能力を維持しなければならないため、建物や設備の安全性が重要です。また、将来的に生産能力の拡張性をどれほど持たせるか、それに対してどれくらいの投資を行うかといったバランスも見極めて建設の計画を立てなければなりません。そういった相談ができるよう、工場建設に関して信頼して任せられる業者を選ぶことが重要です。
三陽建設は工場建設において豊富な実績を持ち、これまでのノウハウから確実な施工と必要に応じた的確なご提案が可能です。三陽建設による施工についてご興味ありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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