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HACCPの義務化に違反した場合の罰則は?分かりやすく対策についても解説

更新日 : 2023/10/04
HACCPの義務化に違反した場合の罰則は?分かりやすく対策についても解説

2020年に原則としてすべての食品関連事業者に対して、HACCPに沿った衛生管理手法を取り入れ、実施することが義務化されました。では、もし義務化された衛生管理手法を導入せず、制度に違反した場合には、どういった罰則が適用されるのでしょうか。そこで本記事ではHACCPの義務化に違反した場合の罰則や、違反しないための対策などをご紹介します。

すべての食品等事業者に義務化されたHACCP

HACCP導入が制度として義務化されたことにより、基本的には違反した事業者は罰則の適用対象となったと言えます。ではHACCPがどのような経緯で義務化されたのかというところから見ていきましょう。

HACCPの導入とその背景

食品の安全を守るため、食品関連事業では衛生管理の徹底が不可欠です。HACCPは、こういった食品に関する衛生管理の手法として導入することが定められました。

具体的には、工程の細分化によるリスク管理、危害要因が発見された場合の対処法の明確化などによって各工程の衛生管理を行う手順を定めたものです。

HACCPに基づいた衛生管理を行うことは、食品衛生法の改正によって義務化されています。

過去に食品衛生法の改正が行われた2003年以降、食を取り巻く環境は大きく変化してきました。食品の世界的な流通量も増え、管理においてもグローバルスタンダードが求められるようになっています。

こうした流れを受け、2003年の改正から15年が経過した2018年に食品衛生法の大改正が行われ、衛生管理手法としてHACCPの導入が制度化されています。

HACCPの詳しい内容や導入効果などについては「HACCP(ハサップ)とは-義務化された新しい衛生管理手法の意味と導入手順を解説」で解説しておりますのでご覧ください。

HACCPの制度化から完全義務化まで 

HACCPの制度化と義務化は、段階的に進められてきました。

2018年6月に食品衛生法改正案が可決され、HACCPの制度化が決定。2020年6月からはHACCPに基づいた衛生管理が義務化され、1年間が猶予期間として設定されました。

猶予期間が終了した2021年6月からは、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに基づいた衛生管理を導入・運用することが義務付けられています。

このように段階的な義務化が進められ、2021年6月を過ぎた現在では、法的な義務として、すべての食品等事業者がHACCPを導入しているはずであると考えることができます。

HACCPに違反した場合の罰則

では、HACCPを導入していない場合、罰則はあるのでしょうか。罰則に関しての要点は次のとおりです。

すぐに罰則が適用されるわけではない

HACCPに基づいた衛生管理を実施していない場合、すぐに罰則が適用され罰金や懲役が科されるというイメージを持たれている方もいるかも知れません。

しかし実際には、HACCPに基づいた衛生管理が実施されていないと判断されても、段階的な措置が取られるため、すぐに罰則が適用されることはありません。

では、段階的な措置とはどのようなものか、どういった場合に罰則適用に至るのか、さらに詳しい内容を見ていきましょう。

食品衛生法の罰則

HACCPに関して、「違反していると罰則が与えられる」という情報の根拠は、食品衛生法の罰則規定にあると思われます。

食品衛生法には次のように罰則が定められています。

“第十一章 罰則

第八十一条 次の各号のいずれかに該当する者はこれを三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

一 第六条(第六十八条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)、第十条第一項又は第十二条(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

二 第七条第一項から第三項までの規定による禁止に違反した者

三 第五十九条第一項(第六十八条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による厚生労働大臣若しくは都道府県知事(第七十六条の規定により読み替えられる場合は、市長又は区長。以下この号において同じ。)の命令若しくは第五十九条第二項(第六十八条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による内閣総理大臣若しくは都道府県知事の命令に従わない営業者(第六十八条第三項に規定する食品を供与する者を含む。)又は第六十条(第六十八条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して営業を行つた者”

出典:食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)令和四年法律第六十八号による改正|e-GOV法令検索

これに続き、第八十九条まで罰則についての記載がありますが、最初に挙げられているのが上記の第八十一条にある「三年以下の懲役又はは三百万円以下の罰金」というものです。

第八十一条の一から三までは「命令に従わない営業者または規定による処分に違反して営業を行った者」が罰則の対象になると記載されています。この「命令に従わない営業者」や「規定による処分に違反して営業を行った者」に該当するのはどのような場合でしょうか。

次に、厚生労働省が公表している食品衛生法およびHACCPに関する資料を見ていきましょう。

HACCP違反時には指導から

厚生労働省が公表した「食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料」ではHACCP制度化における基準や対象が解説されています。

この中には、制度化に関しての留意事項として次のようにあります。

“罰則の適用については、これまでの制度から変更はありません。通常は、以下のような流れになります。

  • 衛生管理の実施状況に不備がある場合、まずは口頭や書面での改善指導が行われます。
  • 改善が図られない場合、営業の禁停止等の行政処分が下されることがあります。
  • 行政処分に従わず営業した場合には、懲役又は罰金に処される可能性があります。”

まずは改善指導があり、指導後も改善が見られず営業が続けられた場合には営業の停止や禁止といった行政処分が下され、さらに行政処分に従わずに営業をした場合にのみ、懲役や罰金などの罰則が適用される可能性があると説明されています。

このように、HACCPを基準とした衛生管理が行われていない場合には、まず指導から始まり段階的な措置を経て罰則の適用となります。

ただし、食品衛生法に関して都道府県ごとに条例によって規定を定めている場合があるため、不安な場合には各都道府県の保健所に相談してみるといいでしょう。

HACCP実施の確認が行われるタイミング

HACCPの実施がなされているかを確認するタイミングは、営業許可の更新時、保健所による定期的な立入検査などの際とされています。

前出の「食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料」の留意事項に次のようにあります。

“衛生管理の実施状況については、これまでと同様に、営業許可の更新時や保健所による定期的な立入等の機会に、食品衛生監視員が確認を行います。新しい制度ですので、当面の間は、導入の支援・助言が中心となります。分からない点は食品衛生監視員に相談しながら進めてください。”

HACCPは営業者が率先して実施する衛生管理の手法であり、食の安全を守るために必要な取り組みです。検査や罰則の有り無しにかかわらず、積極的に導入・実施していかなければなりません。

HACCPの第三者認証取得は任意

同じく「食品衛生法等の一部を改正する法律の政省令等に関する資料」の留意事項には、次のようなことも記載されています。

“第三者認証の取得は義務ではありません。”

第三者認証とは、HACCPの導入・実施が適切に行われているかを、第三者機関の審査によって認証する仕組みです。

上記に記載されているとおり取得は任意ですが、取得することで信用度の向上や従業員の意識向上が期待できます。

HACCPの認証について、詳しくは「HACCP認証の取得に必要な準備とは?認証のメリットや注意点など」をご覧ください。

罰則適用だけでなく社会的な責任と信用が大切

もしHACCPを実施していないことで罰則が適用されたとしたら、罰則よりもさらに大きな損失があると考えるべきでしょう。

指導や行政処分に従わずに実際に罰則が適用される段階までいってしまえば、食品関連企業としての社会的な信用の損失は大きなものとなると考えられます。また、消費者や取引先からの信用も著しく低下することが予想できます。

罰則があるかどうか以前に、食品に関わる企業が担う社会的責任として、適切な衛生管理を行っていく必要があります。

HACCP義務化に違反しないための対策

HACCPを基準とした衛生管理の実施が義務化された今、違反した場合は指導や行政処分を受けることとなり、そこで改善されなければさらに罰則適用となります。

このような違反をしないように、事業者には次のような項目の実施が推奨されています。

衛生管理計画の作成

事業者は、従来から行っている一般衛生管理と、HACCPに基づいた衛生管理の基準に沿って、衛生管理計画を作成します。

この衛生管理計画については、厚労省のサイトに「業態ごとにまとめられたHACCP導入の手引書」が準備されており、それぞれの手引きの中で例を交えて解説されています。

衛生管理計画は作成して終わりではありません。従業員に内容の周知徹底を図ることが重要です。

手順書の作成

清掃や洗浄、消毒、食品の取扱いなどについて、具体的な方法を定めた手順書を作成します。手順書の内容に沿って従業員への周知を行い、必要に応じていつでも手順書を閲覧できるようにします。

記録と保存

衛生管理がどのように行われているのかについて記録し、記録を保存します。

検証と見直し

衛生管理計画や作成した手順書の効果について、定期的に検証します。工程変更があった場合には、これまでの衛生管理計画や手順書との整合性がとれているか確認します。

検証の結果、修正すべき点があれば内容を見直します。

HACCP実施に適した環境の構築が重要

HACCPの導入と実施は義務化され、違反している場合には指導が行われます。指導に従わない場合や改善が見られない場合には、行政処分や罰則の適用の可能性もあります。

HACCPの導入に関しては、衛生管理の手法というソフトに関してのものであり、施設や設備などハードに関しての変更を強制するものではないとされています。しかし、HACCPに基づいた衛生管理を確実に実施していくためには、工場を新規に建築する場合に気をつけておいた方がいいポイントがあります。また、既存の工場においても、改築や設備の変更によって衛生管理の質を高めることが可能です。

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※本記事はHACCPの罰則規定についてなんら保証するものではありません。本記事の内容により発生した損害などの責任は一切負いかねます。

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