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医薬品におけるバリデーションとは?定義や必要とされる理由を解説
更新日 : 2024/01/23医薬品は種類によっては人々の健康や時には人命にすら関わりかねないものです。そのため、医薬品工場における製造工程の管理、製品の品質の保証は他の工場の製品と比べても一層重要と言えます。
医薬品業界における製造工程の正しさを検証する方法として用いられているのが「バリデーション」です。本記事では医薬品におけるバリデーションについて、定義や必要とされる理由、手法やバリデーションの進め方について解説します。
医薬品業界での業務プロセスについて理解を深めたい方、バリデーションについて改めて確認されたい方はぜひご一読ください。
医薬品製造におけるバリデーションの意味
医薬品製造におけるバリデーションとは、製造した医薬品の品質を確実に保証すること。
医薬品は使用者の健康や命にすら関わりかねないものであるため、製造の工程から手順まで厳格に管理することが求められます。恒常的に、同じ品質の医薬品を製造し続けるため、全ての製造工程を設備・機器単位で管理し、文書化することが求められるのです。
医薬品製造におけるバリデーションは「GMP(Good Manufacturing Practice)規定」に基づいて定めることが求められます。GMPは以下の三原則に基づいて規定されます。
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
GMPについては「GMPとは?―GMPの意味やGMP省令の改正点などについても解説」の記事もご参考ください。
バリデーションの定義
バリデーション(validation)の元々の意味は「確認」や「検証」。動詞の「validate」は「確認する」のほか「有効にする」といった意味を持ち、未確認のものを有効化し、正当性を検証するような意味合いを持ちます。
バリデーションは広くビジネスシーンにおいて、決められた工程の有効性や正当性を検証し、確認する意味で使用されるのです。
例えば、IT業界においては成果物が定めた要件に即しているか、基準に適合しているかの検証や確認を意味します。介護業界におけるバリデーションは認知症患者とコミュニケーションをとり、患者の感情や想いを引き出すことを指します。
このように「バリデーション」は業界によって異なった意味を持ちますが、医薬品業界においては製品の品質を完全に保証するための製造段階からのプロセスの確認、検証を意味するのです。
バリデーションの手法
バリデーションの手法は複数あり、用いられる方法や適切なシーンが異なります。各工程において最適なバリデーションを実施することで、製品の品質の確実な安全性を保証できるのです。代表的な手法や用いられるシーンについて解説します。
同時的バリデーション
同時的バリデーションとは、ある工程を実施するのと同時に、その工程の中で得られたデータを検証・確認する手法のこと。その場で検証を実施することで、直ちに不備・不具合を発見することができます。
検証に即効性があり、正確なデータが得られることが同時的バリデーションのメリットです。一方で、各工程において実施し、総合的に評価する必要があることから時間やコストがかかる点がデメリットとして挙げられます。
予測的バリデーション
予測的バリデーションとは、製品を製造する前に予定する製品に対して行うバリデーションのこと。実際の製造工程の中で問題が発生することを事前に抑えられ、医薬品製造の現場で多く用いられています。
ただし、テスト環境と本番環境が異なると結果に差異が出るリスクがあることがデメリットです。そのため、先述の同時的バリデーションと併用することが奨励されます。
回顧的バリデーション(再バリデーション)
回顧的バリデーション(再バリデーション)とは、過去の記録を用いて実施するバリデーションのこと。主には製品の仕様や製造工程に変更があった際や、不具合があった場合、もしくは製品の安全性を確認することを目的として実施されます。
IQOQPQについても確認
IQOQPQとは、医薬品の品質を確認する工程の一つです。
IQ:設備・装置が正しく設置されていること
OQ:設備・装置が正常に動作していること
PQ:システムの機能性の確認
バリデーションの一部であるIQOQにPQを加えた「IQOQPQ」も医薬品製造の品質保証プロセスとして重要であるため、ぜひ抑えておいてください。
バリデーションの進め方
医薬品業界において具体的にバリデーションを進める手順について解説します。これらのプロセスを順守してバリデーションを実施することにより、長期的に高い品質での医薬品製造が実現するため、ぜひご確認ください。
1.バリデーションマスタープラン(VMP)を策定
最初に必要となるのがバリデーションマスタープラン(VMP)です。VMPとは、大規模なプロジェクト全体におけるバリデーションの方針をまとめたもの。
組織体制や、各プロセスのバリデーションの対象範囲等を明確にします。
2.適格性評価
適格性評価とは、生産体制の設計を開始する前に、各バリデーションのプロセスが明確になっているかを確認するプロセスです。プロジェクトの着手前の評価として重要な立ち位置にあると言えます。
3.設計段階の各仕様についてGMP規定の適合性をチェック(Design Qualification(DQ))
DQ(Design Qualification)とは、設備・装置が目的とする用途に適切に設計されているかの適合性をチェックするプロセスです。要件に適合する仕様を設備や装置が満たしているか確認し、文書化します。
4.機器据付、工事完成検査時においてGMP規定の適合性をチェック(Installation Qualification(IQ)
IQ(Installation Qualification)は設備や装置が仕様通りに正しく設置されているかの適合性をチェックするプロセスです。設備や装置が書面の上では仕様を満たしていたとしても、適切に設置されていなければ計画している品質保証は実施できません。そのため、設置における適合性の確認も求められるのです。
6.試運転時の評価(Operating Qualification(OQ))
OQ(Operational Qualification)は設備や装置が意図したように正常に作動するかを確認するプロセスです。仕様書通りに動作し、期待した能力を発揮するかを確認し、文書化します。
7.実運転段階の評価(Performance Qualification(PQ))
PQ(Performance Qualification)は設備や装置が実運転の中でも正常に作動し続けているかを確認するプロセスです。OQの段階で実施した適合性を運用開始後も満たしているかを確認することで、高い安全性を維持し続けることができます。
医薬品工場の建設については「医薬品工場建設における計画の流れを解説」もご参考ください。
まとめ
医薬品の製造におけるバリデーションについて解説しました。
製品の品質を保証しなければならないのは製造業では共通ではありますが、時に人命に直接関わる医薬品においてはより高い水準が求められます。
そのため、最終的な品質を保証するため、製造プロセスから高いレベルでの管理が求められるため、各プロセスにおいてバリデーションが必要なのです。
今回解説した内容も参考に、自社の製造工程プロセスにおけるバリデーションの方針を策定し、実施してみてください。
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